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2024/04/24 古代の大型投石機。ギリシアでは片腕を意味するモナンコン、ローマではオナゲルと呼ばれていたそうでございます。ローマでの呼称は投げるという日本語とは特に関係なくて、野生のロバという意味だとか。ロバがひづめで背後に石を蹴り飛ばしたという寓話に基づくそうでございます。アラビアではそれがマンガニク。古代アラビアの人たちはマンモーを狩っていたのでございましょう。
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クトゥルフ神話ブックゲーム2018/11/09『ブラマタリの供物』
『ブラマタリの供物』
著・イラスト:フーゴ・ハル
(新紀元社Role&Roll Books/2018/11)

(1回目は(2018/11/06 (Tue)) 
(2回目は
2018/11/07 (Wed)) 
 

 
 最後までプレイしてから感想を書こうとしたのだけれど、
リプレイ風になってきたなー。
 
 といわけで、呪術師をガイドに(27)。
 
 呪術師は的確に進んでいく。
 ここは、素直にしたがったほうがいいだろう。
 
 が……。
 
 目的地に着き、銃を使わなければならない場面に出くわす。
 愛用の銃の名前は覚えていた。
 
 だが、
 その前に、狂気を増やすような行為をしてしまったため、
 銃のことに心がおよばない。
 
 結局……。
 
 まだらの仮面?
 そんなもの出てきたっけ?
 思い浮かばない……。
 
 
    ☆    ☆    ☆
 
 
 自分の絶叫に目を覚ます。
 身を起こすとベッドだった。
 ヴィクトリア湖のほとりのホテルの客室だ。
 
 今までのは、やけに現実的な悪夢だった……らしい。
 
 ふたたび島へ向かう。
 
    ☆    ☆    ☆
 
 というわけで、リセット。
 左ソデは、71ページ。狂気点3からのスタートだ。
 
 狂気点3以上なので、恐怖と警戒が衝動となって、
 呪術師を選ぶことを阻む。
 
もう呪術師は選べない。
  
 となると、元船乗りだが、
 悪夢の中で経験してきたことで不安になる。
 あそこまで行くのには、呪術師でなければ不可能ではないだろうか?
 だが、呪術師は選べない。
 
 仕方がないので、元船乗りをガイドに島へ向かう。
 というわけで、次回(23)からスタート。
 
     ☆    ☆    ☆
 
 
『クトゥルフ神話』なので、
狂気のために選択できずに進んでしまうところがもどかしくも面白い。
 
 これもあらかじめ、主人公の精神が恢復しきっていない、という設定があればこそだ。
 
 基本的に、プレイヤーが選択できるのは、行動であり、意思である。
 
 衝動や欲望、あるいは過去の記憶などは、
主人公が自由に引き出すことはできない。
 できるのは、それを引き出そうとしたり、押しとどめようと努力することだけだ。
 
「狂気点」は、恐怖や衝動を理性によって制御できるか否かを示す数値
だといっていいだろう。
 
 
 
☆ 余談だが、ちなみに……。
  
 このような主人公の行動を制限する精神的な数値としては、
ホビージャパンのゲームブック『機動戦士Ζガンダム』 
(拓唯著/昭和60年12月)の「偏向度」がある。
 
 主人公カミーユが、どれほど連邦や旧体制に反感を抱いているかを示す数値だ。
 これは、TRPG『逆襲のシャア』で使われていた汎用RPGシステム
「WARPS」の「決断力」「抑制力」が元になっているという。

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2018/11/07『ブラマタリの供物』
クトゥルフ神話ブックゲーム
『ブラマタリの供物』
著・イラスト:フーゴ・ハル
(新紀元社Role&Roll Books/2018/11)

(1回目は(2018/11/06 (Tue)) 
 
 本当は、全部終えてから感想を書くつもりだったが、
取りあえず書いておきたいことがあったので感想2回目。

 その部分はネタバレになるので、いやな人はこの記事読まないように
 
 なお、本文ではセクションという言葉を使っているが、
ここでは、引用以外はパラグラフという言葉を使っていくつもりなのでご了承を。
 
 というわけで、また1からのスタートだ。
 
 まずは新しくブックカバーを作る。
 
 破ったあとの大きめのカレンダーの紙を用意し、
それを半分に切り、いつもより大きめの――横幅が広めカバーを作る。
 できる限りソデを大きくするためだ。
 
 本の厚みもあるため、ふつうの幅のソデだと、
何かの拍子にはずれてしまうことがある。
左ソデは親指を添えてやると読みやすいだろう、
と書かれているのはそのためではないか思うが、
新しくカバーを作ってやるのなら、広くした方が安全だ。
  
 オビは、カバーに挟み込んで、左ソデの本来の折れ目のところでたたんでおく。
そうすれば、左ソデをページに挟み込んでも影響は出ない。
 
 元のカバーは、本にそのままつけておいてもいいが、
ヒントを参照にしそうなら、
わかりやすい場所に置いておけばいいだろう。
右ソデに描かれた三角形も気になるところだし――。
  
 さて、45ページにカバー左ソデを挟み込み、改めてスタート
 
 最初のほうは、背景説明なので、
注釈の指つき矢印のほかは分岐が発生しないほぼ一本道だ。
 
 
 
「きみ」はトマス・F・マウロ。

 レッドフックでの事件で、心を病み、療養中の刑事だ。
ようやく恢復しつつあり、完全な狂気を21/21とすると、現在は2/21ぐらい。

 8月(季節は何か関わってくるのだろうか)、依頼を受ける。
 依頼主はロックフェラー。知らぬものはいないアメリカの大富豪だ。

 そのⅠ世のほうは黒い木彫りの人形を手にしている。
 わざわざ指さし印をつけて書かれているこの不気味な彫像は、
重要な意味があるのだろうか――?
 
 指さし印の先に書かれた注釈を読んでみる。
 パラグラフ末の文には「手当たり次第に興味を寄せるべきではない」と書かれている。
もしかすると、この警告のための指さし印だったのだろうか……?
 
 ともあれ、
 ロックフェラー氏の依頼は、
息子ネルソンが行方不明になったので救出して欲しいというものだった。

 しかし、その場所というのが、アフリカ奥地の湖近辺だ。
 何を唐突な――。

 ここで、先ほどの黒い彫像が意味を持ってくる。
 それは、ネルソンが20の誕生日の時にもらったプレゼントに紛れ込んでいたものだ。
 
 中には、1枚の羊皮紙が入っていた。
そこには、D・リヴィングストンの署名入りで、
「アフリカの黒い泉を進呈しよう」と書かれていた。
 
 このD・リヴィングストンが高名な探検家のことならば、
半世紀も前に死んだ人物だ。
史実でもそうだが、これはなにを意味するか……。
 
 羊皮紙に書かれていたということも気になる。
 確かに耐久性はあるが、わざわざそれを使った理由は? 
 魔法的な意味合いがあるのだろうか?
 
 黒い人形のほうは、アスファルトを塗られていて、
それが油田の存在を後押しする証拠ということらしい。
 
 いずれにせよ、これらは「きみ」に渡されるわけではないので、
今後影響がおよぶというものではないだろう。
 
 となるとやはり、「手当たり次第興味を寄せるべきではない
という言葉が重要で、それはプレイヤーに向けられたヒントのような気がする。
 
 とにかく、この彫像と羊皮紙をきっかけに
ネルソンを隊長とする探検隊はアフリカ奥地の湖へとむかったのだが、
そこで襲撃を受けたと2日前に連絡が入ったのだという。
 
 逃げ戻ったのは3人。ネルソンは異形の者に連れ去られたという。
彼は、出発前、あの黒い彫像に呼ばれていると言っていたというが……。
 
 常識的に考えて、ネルソンが生きている可能性は低いし、
ましてや一介の刑事がどうできるものとも思えない。
 
 だが、相手はロックフェラーだ。
 いやも応もない。
 
 
 というわけでアフリカへ。
 まぁ、各種予防接種は射ったことにしよう。
 でないと神話的怪物のまえに、病気でたどり着けなくなっちゃう。
 
 パイロットは、あのリンドバーグだ。
 
 さて、

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2018/11/06『ブラマタリの供物』
クトゥルフ神話ブックゲーム
『ブラマタリの供物』
著・イラスト:フーゴ・ハル
(新紀元社Role&Roll Books/2018/11)



裏表紙に
 
「資料を参照にしながら
  手記を読み進めていくかのような」
 
と書かれているので、
 
捜査ファイルミステリーのような
(二見書房から出版されたものでいえば
 『シャーロックホームズ10の怪事件』のシリーズ、
 今入手できるものから言えば、SCRAPの作品が近い)、
 
断片的に提示された新聞や地図、日記などから、
事件の真相を読み解いていくような作品かと思ったが、全然違った
 
 
「アフリカ大陸は、額に角を生やしたドクロの横顔だ」
とパラグラフ1の冒頭にあり、表紙もそうした絵なので、
アフリカ全土を地図に書かれたパラグラフナンバーを元に
飛び回る話かとも予想していたのだが、そういうものでもない
 
 形式的には、以前先生が「R・P・G」(国際通信社)で連載していた
「注釈エッセイ HUGO HALLの虚しい口」を踏襲、
もしくは発展させたような形だ。
 
 文章中、カッコに突き当たったら、そこに示された数字に跳ぶ。
 カッコが2つ以上ならどちらかを選択、
 数字の上に「指さし印」があれば、そのパラグラフを読んだのち、
 その場所に戻ってくる。
 
 数字を読み飛ばさないように注意が必要……かと思ったが、
選択は文章末にあることが多いので、心配するまでのことはないようだ。
(このあたり、次回作があったら、進化していきそうな気がする)

  
 捜査ファイルミステリっぽくやるのなら、
本文の枠をノートのような感じにし、該当の単語に傍線を引いて、
その上に付箋のようにとび先のパラグラフと、
場合によったらメモを書いておけば、
雰囲気も出るし、わかりやすいと思ったのだが……。
 
「~虚しい口」では、
特にゴールのないエッセイだということを表現するために、
終わりは特にもうけられておらず、延々ループする構造だったが、
この作品は物語なので、さすがにそれはないようだ。
 
 この形式から『428』のようなザッピング構造も期待したが、それもなさそうだ。
 形式こそ変わっているものの、今のところふつうのゲームブックに思える
 
 主人公は、トーマス・R・マロウン。
 怪事件に遭遇し、心を病んで休職中の刑事だ。
 
 ネットで調べると、この怪事件は、
創元推理文庫のラブクラフト全集で言うと5巻に収録されている
「レッド・フックの恐怖」という作品で描かれているらしい。
 
 うーん。
 まだ2巻の途中なんだよな、読んでるの。
 まぁ、読んでおく必要はないだろう。
 
 1920年代のアフリカというと……ターザンとかだろうか? 
 ミシェル・レリスの『幻のアフリカ』(平凡社ライブラリー705)は1930年代。
 ネタで買ったけど、
あれだけ分厚い本(機会があれば手にとってみてください)、読んでない……。
 
 さて、ざっと読んでみる。
 カバーを使って、プレイヤーにそれほど負担をかけないようにしているものの、
内容はそうでもない。
 
 メモは取ったほうがいいようだ。
 
 カバー裏はあからさまなヒントだが、
カバー表には、特にヒントとなるようなものは発見できなかった……。

 
 で、
 しばらく読み進めていくうちに、ルールについてカン違いしているのに気がついた。
 
「左ソデを外さないと読めないセクションに読み進んだら、
 そのセクションの終わりのページに左ソデを挟み直す、 忘れるな」
 
 これを、左ソデを外さないと読めないセクションに読み進んだら、
右ソデを挟み込んで読み進む、だとばっかり思い込んでいた――。
 
 だから、そういう状況になっても、狂気はちっとも進行しない――。
 
「まぁ、このあたりは狂気点減らないよね。
 後半になったら、ゴソッと減るんだろうなぁ」
など、思っていたんだけど――。
 
 この本のカバーを使わず、別のカバーを使っていたのが悪かった。
「迷宮キングダムブックゲーム」の時は、
たしかそんな機能持たせていなかったと思ったので、
同じように考えていたら進化していたのか……。

 要するに、本を読み進めるにつれて、次第に狂気に陥っていく感じを、
ページを挟み込むという操作によって体感させるということか……。
 
 なるほど――。
 
  
 はっ!!
 
 ゲームブッククイズ(104)で紹介した
PG14パラグラフ フォーティーン』も、
もしかしたらこんなことを考えて、ああいう設定にしたのだろうか……。
 
 違うだろうなぁ……。

(1回目というよりも0回目、なのかも。
 ここから少し間が空く予定)

 

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フェアリーテイルゲームブック2018/11/03フェアリーテイルゲームブック 
『夢幻島の怪物』
藤浪智之・著 真島ヒロ・原作・イラスト
(講談社KCDXラノベ/2018/10)

  (1回目は2018/10/28 (Sun) )
 
(2回目は2018/10/29 (Mon)
 (3回目は2018/10/30 (Tue)
 (4回目は2018/11/01 (Thu)
 (5回目は2018/11/03 (Sat))


  ゲームをクリアしたら、猛者ならもう一度プレイしてみよう。

 それほどでもないゲームブックファンは、行かなかったページをチェックしてみるといい。

 全体を楽しむのも、ゲームブックの醍醐味だ。
 (などと書きつつ、まだやってないなぁ……。女湯とか……)
 
 けれど、それはあとの話だった。
 ジュビアさんが主人公のミニクエストがまだ残っている。
 
 
    ☆   ☆    ☆
 
 
  別の仕事の都合で、ハマナス島の探索には同行できなかったジュビアさん。
「ううっ、ジュビアもグレイさまと一緒にお仕事したかったです……(……)」
 だか、その仕事は意外と早く片付いてしまった。

 ハマナス島へ行ける!

14「死んでいたジュビアが、ここで生き返った気分です!」
 
 ただ、表立ってでしゃばれば、グレイさまに嫌われるかも……。
 
 というわけで、ジュビアとその仲間は、
こっそりハマナス島に向かうことにしたのだった、

 
 というわけで、パラグラフ23から探索開始。
 選択肢は、
 
 「霧が出ている夜を探る」
 「島を探索して回る」
 「温泉に行く」
 
 の3つ。
 
 昼間上陸したとして、順当に考えれば、
 島の探索からだろう。
 他の2つはあとのほうが自然だ。
 そのように考えて、探索開始。
 
 その後の選択も常識的なところを選んでいったら、
案外あっさりと正解にたどり着いてしまった。
 
 なるほど……。

 本編でグレイの部屋をクリアしたとき、
 記号は「」ひとつしか入らなかったが、
 じつは隠された記号として「」もあの時入っていたんだ……。
 
 というわけで他の選択肢も読んでみる。
 バッドエンドはそれぞれの選択肢に1つずつ。
 どれもいきなりで、ひどいけど楽しかったりするものだった。
 
 

 ☆     ☆     ☆
 
 

 さて、
 ゲームブックを書く人がここでかんがえるのは、
主人公はきみか」という問題だと思う。
 
 本編では、「主人公はきみ」だったが、
ここでは「ジュビア」というキャラクターを演じることになる。
 
 このような場合、
プレイヤーのキャラクターの性格わかりやすく単純で、
その目的ゲーム自体の目的とぶれていない方が好ましい
 
 このミニゲームブックでも、
ジュビアの性格はグレイさま一筋で単純。
目的も彼をお助けすると言うことでぶれていない。

 この基本さえ抑えておけば
あとはプレイヤーの考えで行動できるので、
そんなに窮屈に感じることはない。

 くわえてこの基本に沿っていれば、多少暴走をしたところで
まぁ、この性格だからと納得、もしくはあきらめてくれるだろう。
 
 ゲームブックにおいて、「主人公はきみか」が問題になるのは、
「きみ」が勝手に行動してまう場合だ。

 例えば、
 
 いったん家に帰る。
 このまま後をつける。
 
 というような選択肢があって、

 「家に帰る」を選んだ場合、

 「いや、そんなことはしていられない。後をつけよう」

 などと続いたら、プレイヤーの意思はどこにあるのだ、ということになってしまう。

 だが、たとえばジュビアの場合なら、

「家に帰る」→
「と思いましたけど、やっぱりグレイさまのことが心配です~。
  このまま後をつけることにします~」とやっても、
「まぁ、そういう性格だから仕方が無いな」で許してもらえるのではないだろうか。
 
 というか、
 
「家に帰ることも考えましたけど、やっぱり無理。グレイさま~!」
 と、選択肢をなくしてしまっても、誰も文句は言わないだろう。
 
 たとえれば、わかりやすい性格がひとつの主人公は、
トロッコアドベンチャーみたいなものだ。
 
 行動を性格で規定できるので、選択肢を省略することができる。
 加えて、性格がはっきりしているので、書いている側もその行動を考えやすい

 主人公が無色透明だと、平凡な選択や行動しか思い浮かばないことがままあるが、
性格がはっきりしていれば、こいつならこういう行動をしそうだと想像できる。
 
 性格がはっきりしていれば、
こんなことやりそうだよね、と無色透明な主人公では書けないことも書ける場合がある。
 
 大事なのは、最初に示した性格が、作品中でぶれたりしないこと

 それさえできていれば、無色透明でない主人公でも問題はないと思う。
 
 
 

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フェアリーテイルゲームブック2018/11/03フェアリーテイルゲームブック 
『夢幻島の怪物』

藤浪智之・著 真島ヒロ・原作・イラスト
(講談社KCDXラノベ/2018/10)


 (1回目は2018/10/28 (Sun) )
(2回目は2018/10/29 (Mon)
(3回目は2018/10/30 (Tue)
(4回目は2018/11/01 (Thu)
 
 

☆ 注意、というか警告です。
 
 

 最後まで書いたら、

ものすごーくネタバレになってしまいました~。

 
 

 ここまでだってネタバレなんですけれど、いや、もう、それ以上に。

 ですから、ネタバレ嫌いという方や、まだプレイしていないという方は、
読むのやめておいてください。

 そんなわけで、レビューは、

「プレイしていない人は読んじゃダメー!」
 
からのスタート。



 ご了承くださいませ。
 
 だってぇ、最後まで書かないと、ホントのレビューにならないんだモン。

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フェアリーテイルゲームブック2018/11/01フェアリーテイルゲームブック 
『夢幻島の怪物』
藤浪智之・著 真島ヒロ・原作・イラスト
(講談社KCDXラノベ/2018/10)


 (1回目は2018/10/28 (Sun) )
(2回目は2018/10/29 (Mon)
(3回目は2018/10/30 (Tue)



直接には新章はパラグラフ224からの展開になる。
 通路には5つの扉が並び、中をうかがい知ることはできない。
「きみ」の「予兆」の能力を除いては――。
「予兆」により、それぞれの扉には文字が浮かび上がる。
 
「願望」

「不安」
「誘惑」
「憎しみ」
「夢」
 
 さらに、そこに入っていった仲間たちの姿もイラストで表現される。

 扉の先には、イラストに描かれた仲間がいる。
 そして(ここでは分からないものの)、「きみ」が入る部屋が1つ……。
 
 ここからは現実ではない世界となる。
 それぞれの部屋は、それぞれの心象が支配していて、
それを解決しなければ、脱出することはできないのだ。
 
 原作を読んでいない自分が言うのもおかしいが、
ここからはそれを知っていた方が有利だろう。

 記録紙に書いた「好きな人」や「好きなもの」が使われるのもここ。
 書いていない場合も、直前に注意をうながす記述があるので、
まだ書いていなくても心配はない。
 
 部屋をまわる順番は、どれを優先しても問題はない。
が、一番力が入っているのは「夢の迷宮」なので、
それを最後、クライマックスに持っていった方がいいだろう。
 
 夢や幻想の世界だから、失敗してもやり直しがきくし、
ループのような現実には時間的に不自然な動きも問題はない
 が、だからこそ、
そういったループややり直しがこの遺跡の中では多くなっている
 
(そういえば、
 地上でも、バッドエンド、夢だと思うのなら20の島マップへ、
という部分があったが、それもこの島が「夢幻島」であるためだろうか……)
 
きみ」だけが入る部屋は、記録紙に書いた「好きな人」が登場する……
のだが、想像できるとおり、ちゃんと対応するのは一緒に行動している人間5人
 まぁ、それは仕方がないだろう。
 
 が、作品に登場しているヒビキさんとか、
ミルさんなんかを書いた人はいるんじゃないだろうか。

 特に後者は、特になんと思っていなくても、
何かゲーム上有利になるのではないかという思惑で――。
 だが、そんなゲーム頭には、当然対応していない。

 考えてみれば、それも当然だ。

 なにしろ、この部屋で起こることというのは、自分の心の中にあること
 いくら好きでも、その人の心の中は、ここでは描かれることはないのだ。
 
 これはもちろん、名前が書かれた他の登場人物も同様。
「きみ」の妄想が形になって現れているだけだ。
 そのことは、プレイした方ならおわかりだろう。
 
 この「きみ」の部屋は、
もっとボリュームが欲しいと思った人も多いのではないだろうか?
 ただ、ちょっとでも選択肢を増やせば、
かなりのパラグラフを費やさなければならなくなるところでもある。
 こういう自由度の高い部分はやはり、TRPGのほうが強い部分だと思う。
 ただ、このあたりを一対一でやると、
語るに落ちるか、気恥ずかしい……を通り越して、気色悪いものになりそうだが……。
(「きみ」の妄想だからねぇ)
 
 さて、そのようにして、何度かループすることはあるかもしれないが、
ここまでは比較的簡単に進行することができると思う。

 そこで、満を持して「夢の迷宮」へ。

 この部屋には、ナツとルーシーが倒れている。
 ナツはうれしそう。ルーシーは苦しそう。
 予想できるとおり、ナツのほうはまったく問題ない。
 選択肢も何もなく、一本道で解決する……というか、
そもそも問題などない……のだが、そのかわり目覚めることもない。
 
 対照的にルーシーのほうはかなり複雑。
 ここでは、天狼島での事件を中心に、
ルーシーの過去とあり得たかも知れないその後が描かれる。
選択肢は重く、その結果は苦い。そして正解に到る道は狭い。
 
 言うまでもなく、この、あったかもしれない世界を描くことが、
作者が「夢幻島」を題材にした理由だろう。
 特に時間。夢の世界でしか元に戻すことのできない、
流れてしまった歳月を描きたかったかのように思う。
 
 後悔や悲しみを乗り越えることで、彼女は目を覚ます。
 そして、ナツも…………、目を覚ました。
 
 こうして全員がそろい、新たな道が開ける。
「きみ」たちは遺跡の奥へ――。

(あと少しだけど、時間切れ。
 確認で時間がかかってしまった――。
 ぶらまたりを買いに行っていたせいもある
  ……いや、そっちのほうが大きいのだけれど)

  
 


☆ それにしても、283で175へ行く人っているんだろうか?
 いるとすればとってもぼんやりさんだ。
 ここでは新しく加わる記号はないのだから……。
 
☆ 204で訊かれる名前は、原作でも登場するが、作中でも登場する。
  これは、この作品でその名に出会っ(たことを覚え)ていなくても、
  原作で知っていればいいということなのだろうか……? 
  たぶん、いいんだろうな。
  原作を知っていた方がより理解できるエピソードなのだから。
 

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フェアリーテイルゲームブック2018/10/30フェアリーテイルゲームブック
『夢幻島の怪物』
藤浪智之・著 真島ヒロ・原作・イラスト
(講談社KCDXラノベ/2018/10)


 (1回目は2018/10/28 (Sun) )
(2回目は2018/10/29 (Mon)


夢で印象的に登場したし、重要な役割をにないそうなので、
彼女(ミル)が出ずっぱりで主人公たちについてくるとか、
行く先々で出会うとかするかと思ったが、そんなこともないようだ。

 島長も、そう。
行く先々で観光案内してくれたり、余計なお世話をしてくれたりはしない。

 怪物も、あたりをうろつき回っていたり、
その爪痕を各地で残しているかと思ったけれど、それもないようだ。
 
「きみ」が、純粋に島をめぐって
そこにいる人の話を聞いたり、何かを見つけたり、
謎を解いたりすることで、物語は進行していく。

 5つのうちの残り3つの「△」を見つけ、
空・地・海の3つの「かけら」を手に入れるのが基本的な流れだ。

 謎は、易しめではないだろうか。

 ヒビキさんに出会っていれば、彼の魔法「古文書」により、
巻末のヒントも見ることができるから、詰まることはないだろう。

 それにしても、この「古文書」という魔法、
「予兆」なんかよりもずっと使い勝手が良いんじゃないだろうか。
未来のことまで分かっている感じだし。

 ただし、限界はあるのかもしれない。
「遺跡」に関する直接のヒントは得られないからだ。
これは、遺跡が特別な場所だからなのだろうか……。
 
 さて、
 地図から行きたい場所を選び、書かれた数字のパラグラフに進むと、
そこで出会う人との会話が始まったりする。

 そのとき、会話の流れによっては情報を取り逃す危険があるので、注意が必要だ。
 例えば、パラグラフ44から始まるミルとの会話はこうなっている。

  
        44←━━━━━┓     (前にも書いたが、線が乱れるのが
  ┏━━━━━╋━━━━┓ ┃      気になる人は、コピペして
33怪物とは←→142巫女 152森のほこら    テキストファイルなどに移し、
  ┗━━━━━╋━━━━┛        MS系他のフォントで見れば
     108シュピーを見る        何とかなると思う)
        ↓



 たどっていくと分かると思うが、
44で最初に「森のほこら」の場所を聞かないと、
話がそっちに戻ってきてくれないのだ。

 まぁ、聞き逃しても、ふたたびマップから入って、あらためて聞けばいいので、
それほど被害はない。

 それに、ここ以外では気づかなかったので、
この場所だけのことかも知れないが、気にとめておいてもいいだろう。
(ちなみに「隠れた洞窟」の情報のほうは、このような分岐がないので問題はない)。
 
 島には温泉もある。
 温泉といえば、一日の疲れを癒やすために入るものだろう、
ということで、軽く島を一巡りしたあとで行くことにする。

 このゲームブック、もっとパラグラフに余裕があったら、
昼と夜の区別なんかがあったんじゃないだろうか?
 
 パラパラッとめくったとき、イラストが目に入ったから、
ここは「予兆」の魔法が働く場面なのだろうな、と予想はついた。
「きみ」が女性のほうが有利じゃないかなということも。
 といっても、女性じゃなければ依頼を達成できないようにはなっていないだろう。
 でなければ、最初にその旨が書かれるはずだ。
 
 とりあえず自分のPCは男なので男湯へ。
サブクエストを優先したことと、温泉は後回しにしたことが功を奏したようだ。
おそらく一番穏当な方法で、女湯へ行く。

「見ないように目をそらしながら」……。
景色がきれいだなぁ。岩肌が……。
とそこで思わぬものを発見する。
やはり、紳士的に行動してよかった――。

 のだが

 せっかくそうして戻ってきたのに、次のパラグラフ105の選択肢が、
 
 「のぞきに行きたい」
 「怪物が心配だ」
 の2択なのは、どういう訳だ!!
 
 もう女湯入ってきたというのに、また行かせるつもりか藤浪智之。

 しかもこの選択肢、より穏当と思われる、
「怪物が心配だ」のほうを選ぶと、分岐なく管理人さんにしかられる……。
「のぞきに行きたい」のほうは、自重できる選択があるのだが……。
 
 やはり、温泉回あるあるをやりたかったということなのか? 
それとも単にパラグラフミスなのか? 
 103→166なら、別になんの問題もないのだが……。
 
 とにかく、この島は危険だ。
 自分の思うこととは違うことを考えてしまうように仕向ける魔物が潜んでいるらしい。
 ……。
 もしかすると、それが「怪物」?
 
 そんなこんなで、2日間の探索は終了。
3つの△も見つけ、空・地・海の3つのかけらも手に入れた。
 この3つのかけらをしかるべき場所に収めれば終了。

 あとはエンディングかな? と思ったら全然違った

 閉ざされた門には、3つのくぼみがあり、そこに入手した3つのかけらを入れると、
 門全体が光りはじめる。
 
 そのまま、ばあぁ~と光に包まれて、すべてが解決する……。
 
 ということは、全然ない。
 長きにわたって閉ざされていた遺跡がひらかれたというだけだ。
 
 だが、遺跡の中では、これまでと違ったスタイルの冒険が「きみ」を待ち受ける。
 
 というわけで、新章突入
 
 この章をここでは、「夢魔狩人」編と名づけておく。
 

拍手[1回]

2018/10/29フェアリーテイルゲーブック フェアリーテイルゲームブック
『夢幻島の怪物』
藤浪智之・著 真島ヒロ・原作・イラスト
(講談社KCDXラノベ/2018/10)

(1回目は2018/10/28 (Sun)

そういうわけで、探索を開始……。

 とその前に、こっそりとパラグラフ14をチェック。

「死んでいたジュビアが、ここで生き返った気分です!」と書かれている。
主人公のことは書かれていない。
少なくとも今回は、14はデッドエンドの番号ではないようだ。
本家はともかくとして、毎度それではおもねりすぎに感じたりもするのだろう。

 次に、カバーやその裏、それをめくった表紙も見てみる。
 しかけやヒントはないらしい。

 あっても、ゲーム内でそれを見るように指示される可能性もあるので
フライングだが、ほら、4コママンガの単行本とかだと、
そのあたりにイースターエッグがあったりするから。

そういう場合、時に他のどこにも書いていなかったりすることは多いから。
取りあえずチェックしておいたのだ。

 そんなゲームの進行とは関係ないことをやってから、ゲームに戻る。

 形式は、いつもの藤浪智之先生の。
 マップを見て、そこに書かれた番号のパラグラフに移動するというものだ。
 
 さっきの女の子の言動が気になったので、まずはそこに向かうところだが……。
 
 実を言うと、これの前にすでに一度プレイしているのだ。
 忙しい合間をぬってのとぎれとぎれのプレイだったのにくわえ、
寝落ちとかしてしまったものだから、メモが不十分なところがあったりして……。
 ブログなんか書いているから悪い。

 形式がどこからでも始められるものなので、
そのあと続けることもできたのだが、
記事として出すのだったらそういう中途半端なのはやめた方がいいだろう。
ということで、あらためてやり直し。
 おそらく、島の3分の2ぐらいは回っていたと思うのだが。
 
 そんなわけで、順当に考えれば巫女の子のところに行くところだが、
ざっと回ってみて、サブクエストの依頼をまず受けてしまった方が効率的だな、
とインパクトのあるあの男性のところへ――。
 素材探しを引き受ける。

 で、少女のもとへ。
 少女の名はミルといい、
頭頂にブロッコリーのようなものを生やした奇妙な生き物、シュピーとともにいる。

『わくわく7』のような取り合わせだ。

 シュピーの名前の由来は作中ではその鳴き声だが、
ドイツ語でシュピーゲルは「鏡」なので、それが本当の語源かも知れない。
だとしたら「ミル」というのは……「見る」? 「ミラー」?。

 とりあえず、イラストにCDを使ってみる。
いろいろと角度を変えてみるが、よくわからない。
ここはやはり、言葉どおりのものでなければならないのか。
それとも、ここにはこれ以上の情報はないのか……。

 とにかく、彼女から話を聞く。
 島には「夢をかなえる魔法」があるのだが、
母親の前の代で、その伝承は途絶えてしまったのだそうだ。
遺跡の場所も伝わっていないらしい。
 
それらの情報がなければ困ったことになり、
それがすべて得られれば、今回の依頼は解決ということなのだろう。
 
 彼女の母は去年なくなり、父親もずっと前からいないそうだ。
 となると、もしかするとこの巫女の子は、
両親と再会することを心の奥に願い持っているのかも知れない。
 
――そういえば、「わくわく7」の麦さんも、
  両親との再会の願いをかなえてもらったんだっけ。
  もっとも、あっちはただの迷子だけど――
 
 まぁ、関係ない。
 
 行方不明はともかく、
死んだものを生き返らせるとなると、自然の摂理に反することになる。
それで問題が発生するというのは、お話しとして考えられるかも。

 ただし、少女の言葉を額面どおりに受ければの話だ。
 母親は死んだといってはいるが、
死亡の状況について具体的なことは語られていない。
もしかすると、死んだ姿は見ていないかも……。
となれば、死んだと伝えられた、あるいはそう思い込んでいるだけで、
じつは生きているという可能性だって、ないわけではないのだ。

 そうなれば、その話の方向での大団円という可能性もあるが。
 
 ここで、シュピーについて考えてみる。
 もしかすると、この変な生き物こそ、
両親の片方(あるいは両方???)ではないだろうか。
 何らかの出来事があって、このような生き物に姿を変えた、
あるいは変えられたのかもしれない。
「ずっと前から、この森の中で、誰かが見守ってくれてるって感じていたわ(……)」
という言葉を信じるのなら、それは彼女の父親だろう。
 ただ、シュピーが現れたのは、ごく最近のことだという。
 だとすれば、母親の「生まれ変わり」という可能性もある。

 いづれにせよそれは、憶測を重ねた仮説。
 そうではない可能性は高いのだ……。
 
 疑問を残しつつ、先へと進む。

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2018/10/28フェアリーテイルゲームブックフェアリーテイルゲームブック
『夢幻島の怪物』
藤浪智之・著 真島ヒロ・原作・イラスト
(講談社KCDXラノベ/2018/10)



魔道士ギルト「妖精の尻尾(フェアリーテイル)
の新入りとして
仲間とともに冒険するゲームブック。

 魔道士ギルドという言葉から分かるとおり、
メンバーは誰でも1つ魔法を持っている。

 「きみ」の魔法は「予兆(インディケーション)」だ。

 これは、見ているものから他人には見えない情報を「見る」ことができる能力。

 ゲーム的には主に、
イラストに文字や数字が隠されいて、それがパズルを解くヒントになっていたり、
状況を打開するパラグラフの数字になっていたりするというもの。

 ゲームブックではおなじみだが、
異世界の光景に現実の文字が出てくることに対する説明をつけたものだ。

 そこ、「お約束」でいいじゃない、とか言わない。

 なくても問題は無いとはいえ、こうした説明があることは楽しいし、
主人公の性格や物語とのかかわり方、物語の性格を示す一助にもなっているのだから。
 
 ここで、「記録紙」を見てみる。
好きなもの 嫌いなもの 好きな人
 それぞれを書かせる項目がある。

 こういうのはどうだろう?
 思い入れたっぷりにキャラクターを作って欲しいということなのだろうけれど、
逆に構えてしまう。
 こういう設定って、無駄になることが多いし、
使われたら使われたで、有利不利が出る場合がある。

 原作を知っていればいいのだが、
そうでないとかえってキャラクターを作りにくくなるということもある。
 とりあえず保留だ。何も書かない。
 
 というわけで、本文へ。
「フェアリーテイル」の面々が今回向かうのは、ハマナス島。
 輪郭がなんとなーくアフリカに似ている島だ。
 海岸には赤い花が咲きほこっているという。
 沖から見ると、海岸が燃えているように見える、とかなんとか言って、
変な人なら「火吹海岸」とか名づけるかも知れない。

 大きな都市ぐらいの小さな島。
 文明が届かず緑が島を占めている。
 塔のような山が中央にそびえていた。
 ドルアーガの塔に似てる?
 いや、似てないだろう。
 ドルアーガの塔・外伝ドルアガノンにはちょっと似てるかも知れないけれど。
 などと言っていると、ゲームブックファンみたいに思われてしまうではないか。
 
 迎えに来てくれたのは、島長ビゴットさんだ。
 島の近代化の遅れに忸怩(じくじ)たる思いでいるらしい。

 依頼の「夢をかなえる魔法」の調査確保と、古い遺跡の探索、怪物の排除……。

 その先に、島の観光資源の確保という思惑があるようだ。

 解決したら記念碑や銅像を建てさせてください、といっているのもそのためだろう。
 勇者まんじゅう(ケーキやパフェのある世界だ。翻訳したらまんじゅうになるお菓子があっても不思議はない)とかを売る気かも知れない(そのさい「フェアリーテイル」の名称は使わないかも。島をウリにしたいのであって、「フェアリーテイル」を宣伝したいのではないのだから)。

 現在、経済的に恵まれてはいなさそうなので、
依頼の報酬は、将来を見越して――、無理しているのかも知れない。2018/10/28フェアリーテイルゲームブック・ミル



 島長に会う前には、女の子から警告を受ける。

 よこしまな心で遺跡に近づいてはダメ、というもの。
 女の子は、「きみ」の予兆夢に現れた子だ。
 となると、重要な役割をになっているのだろう。

 現実ではいざ知らず、
物語ではこういう言葉は往々にして正しかったりするものだが……。









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西東社のゲームブックから2018/10/10『スターウォーズ・ゲーム』表紙
もうひとつ、
 
『スターウォーズ・ゲーム』
も紹介しておきましょう。

『スターウォーズ・ゲーム』
高槻逸雄著・ 岡崎忠彦画
(西東社
 シミュレーション・ブックス3
 /
1985/3)



スターウォーズ・ゲーム』というからには『宇宙大作戦ゲーム』と同じで、
SFファンタジーな冒険が繰り広げられると思うでしょ?
 それが全然違うのでございます。
 
 雰囲気SFシミュレーションゲーム
惑星に降りることはなく(宇宙ステーションには行く可能性がございますが)、
コースの選択宇宙での戦闘で、ストーリーが進行していきます。
 
 あなたは、タイタン号の艦長。
『2001年宇宙の旅』のディスカバリー号を思わせるデザインでございます。
 最新鋭ではなく、旧型艦というのが、リアルな味付けですな。

2018/10/10『スターウォーズ・ゲーム』タイタン号
 
 
 
 敵はカタツムリに似たスネイルと呼ばれる生物
カタツムリの殻にあたる部分をサイボーグ化して宇宙船にしたのだとか。
つまり、宇宙船に見えるけれど、機械化した生命体なのですな。
う~ん、SF
 
2018/10/10『スターウォーズ・ゲーム』スネイル  
 
 
 この敵に対して、戦っていくわけでございます。
 
 
 ルールは「ゲームの進め方」に――。
 
 数値データがあり、サイコロを1つないし2つ使うルールですな。
ルールに慣れるために、「訓練」も用意されております。
 
2018/10/10『スターウォーズ・ゲーム』ルール
 
 

 巻末には、装備カードサイコロ2つも――。
 
2018/10/10『スターウォーズ・ゲーム』記録紙とサイコロ
 
(↑本物は厚紙で、記録紙とサイコロは分かれています)
 
 うーん、本格的
 西東社のゲームでもこんなものがあったのか――。
 と、西東社のゲームブック見直してしまうでしょ?

 でも、それが間違い

 ここまで書いてあるのですから、
作者としては、そういうものをやりたかったのかも知れません。
 
 ただ、対象年齢を考えて、編集の方で待ったが出たとか、
そんなところかもしれませんな。
 
 数値は常に戦闘シーンのページ内で指示され、

サイコロを振るにしても、1~3が出たら○○へ、とか、
2つのサイコロの出目が11以上なら△△へ、
 
といった感じで、複雑な計算を必要とする場面はほぼございません
 
記録紙に書き込む箇所はあるものの、
プレイヤーの負担は最小限といってよろしいでしょう。

2018/10/10『スターウォーズ・ゲーム』戦闘  
 
 
 ゲーム終盤には、ブラックホールが登場します。
 

 そのためにワープに失敗したり、それを利用して敵をやっつけたり、

別世界の自分の宇宙船と出会ったり
 
 2018/10/10『スターウォーズ・ゲーム』異世界の宇宙船1
  
 

2018/10/10『スターウォーズ・ゲーム』異世界の宇宙船  


地球に戻ることができず、新天地で暮らす運命となったりと、
 
2018/10/10『スターウォーズ・ゲーム』新天地

フィクションとしてのブラックホールあるあるですな。

 
 敵軍との戦闘だけでは単調になるところを、
ブラックホールの存在がストーリーにアクセントを加えていると存じます。
 
 ただ逆に、
スネイル軍との戦闘に終始しなかったことに不満を持つ方もおられるのかな? 
まぁ、そういう人は、戦闘自体に不満を持ちそうではございますが。
 
 というわけで、西東社のゲームブックというと、
単に子供向けの単純なもので、どれをとっても同じだと
思う方もおられるかもしれませんが、
この前取り上げた『完全犯罪ゲーム』もあわせて考えてみれば分かるでしょう。
 

 逆にむしろ、
いろいろなタイプのゲームブックを提供しようとしていたわけでございます
(賞金30万円で作品を募集していたのも、その現れかもしれませんな)。
 
 ただ、子供に向けた単純な作品ばかりだったために、
そのあたりのことは評価されず、
どれをとっても同じ、と思われたのでございましょうが……。

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ついでですので、
西東社のゲームブックを
さらに紹介することにいたしましょう。ウォーゲーム

『ウォー・ゲーム』
柴田竜男作/切明畑光乗絵
(西東社シミュレーションブックス2/1985/7)。
 
(ただし、西東社の日付は
初版発行日が書かれていないので、
それがいつなのかは不明でございます。
前回のシリーズ6
「300X年スターウォーズゲーム」
の発行日が1985/3でございますし)

ウォー・ゲーム」といえば、89.6%ぐらいの方が、
シミュレーションウォーゲームを想像しますよね。

シミュレーションブックスの『ウォー・ゲーム』となればなおのこと。
配置を考えたり、サイコロを振って難しい計算をするのかな? 
タイトルからそうお考えになるのも、むべなるかなでございます。

 が、しかし。
 はずれ
 このゲームブックは、そういうものではまったくございません。

 ではどういう内容かと申しますと、これがまさにゲームブック
選択肢を選ぶアドベンチャーゲームの本でもなく、
パズルやクイズが中心となる本でもなく、
当て物的なゲームを楽しむ本なのでございます。
 その方法としては、いくつかの絵の中からひとつを選び、
ページを折ったりめくったりして、結果を見るという もの。

ウォーゲーム 折って結果を見る

 さらには、シフトカードというものを使うところもございます。
これは予備でございますが、

ウォー・ゲーム シフトカード

このような厚紙のカードが本の最後の方にあり、
切り取って使うようになっていたのでございますな。

 それをこのようなページに当てはめて、
その窓からのぞいている絵や記号の数によって成功・失敗を判定するのでございます。
ウォーゲーム シフトカード1



ウォーゲーム シフトカード2


ウォーゲームシフトカード3


 前回、『3000x年宇宙大作戦ゲーム』では、
「書き込んで結果を見るシーン」があり、
「これがのちに同社のゲームブックで、
 付属の穴の空いたカードを当てて判定するというスタイルに発展していく」

と書きましたが、それがこれでございます。

 西東社2作目のこの作品にして、
すでにシフトカードは使われていたのでございますな。

 いや、すみません。前回のこの記述は間違いでございました。

 ただまぁ、このカードが形を変えながらも
(サッカーのゲームでは、
 2つあるうちの1つのカードがサッカーボールの形だったり)、
使われたのは事実でございます。
 いづれにせよ、考えさせてはくれるものの、当て物の域を出ませんな。

 シミュレーションウォーゲームを期待して本作を買った人は、
この内容を見てガッカリしてしまうことでございましょう。
 
 

 最後になってしまいましたが、このゲームブックのストーリーなどについて。

 表紙を見れば分かるとおり、
このゲームブック『ウォー・ゲーム』と書かれた上に、
スーパーアクション・ゲーム」と書かれております。
『ウォー・ゲーム』という言葉よりも、
正しくジャンルを表しておりますな。
『ウォー・ゲーム』というタイトルにしても、
よく見てみると、「ウォー」の上に「戦争」のルビ? が――。
 
これはもしかすると、シミュレーションウォーゲームではなくて、
単に戦争を題材にしたゲームだよ、というしるしなのかも? 
 
まっ、言い訳ですな。

タイトルは、実はもうひとつございます。
X島上陸大作戦』。
「ゲームを始める前に」の部分に書いてございます。
おそらく本当のタイトルはこれなのでございましょう。
そのタイトルでは手に取ってくれないとの判断で、変えたのでございましょうな。

「設定について」を読みますと、
X島は架空の舞台ですが、その多くは、
 第二次大戦の日本軍のシンガポール攻略戦を参考にしています
だそうでございます。

 作者としては、
それこそ本格的なウォー・シミュレーションをやりたかったのかも知れません。
 
 作戦は
 
第1ターン「制海権を得る」
第2ターン「制空権を得る」
第3ターン「上陸支援攻撃」
第4ターン「掃海作業」
第5ターン「歩兵上陸」
第6ターン「戦車上陸」
第7ターン「地雷原突破」
第8ターン「進攻」
第9ターン「正面突破」
第10ターン「空挺支援」
第11ターン「司令部攻略」
 
となっていて、
各ターンの最後には、「得点集計」のコーナーがございます。
 
 そこで評価が
A~Cに決まったり、
作戦の続行が不可能になったり(ゲーム中に続行不可能になることもあります)、
次のターンの攻略が変わったりするわけでございますな。

 で、最後まで生き残れば、最終得点集計をして、
「将・佐・尉」のどのクラスになるかが判定されるというわけでございます。

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  というわけで、宇宙大作戦ゲーム表紙

2018/10/01 ゲームブッククイズ(118)
からの続き。

SFアドベンチャーゲーム
『300X年 宇宙大作戦ゲーム』
笠原英夫作 
(株)我社(わがしゃ=能美巧+はだみちとし)画
(西東社/1985/3)
 
のレビューにございます。
 
 
 1970年代の後半から80年代といえば、SFやアニメのブーム。
 
『スターウォーズ』『宇宙戦艦ヤマト』を皮切りに、
『スターログ』『宇宙船』といった内外のSF・トクサツ雑誌や
各種のアニメ雑誌が発刊され、
古今問わず、さまざまなSFやアニメが紹介されだわけでございますよ。
 
 そんな流れに乗ってゲームブックでも
SFジャンルの作品がいくつも発売されております。
 
 『スターウォーズ』に乗っかったというか、フォロワーと申しますか……。
そういった安易な作品がけっこうございますな。
 
 このゲームブックも、そうしたもののひとつ。

  表紙からしてエックスウィングですし、
タイトルはテレビシリーズ時の『スタートレック』の邦題ですからなぁ。
 
 狙っていることはあきらかでございます。
 
 とは申せ、ゲームブッククイズの時のキャラクター表からも想像できるように、
『スターウォーズ』だけではなく、
もっと広い、古いタイプのSF映画も含めたところから
ネタを持ってきた作品となっております。
 
 

 「主な登場メカニック」もご覧のとおり
 

宇宙大作戦ゲーム メカ

『スターウォーズ』以前のアニメに登場しそうな、

水生生物をモチーフにした宇宙船が多くを占めております。
(これがもう少しあと、
  1986年以降なら『ダライアス』ということも考えられるのですが)。
 
 パネルラインなどが入っているあたりは、当時的ではございますがーー。
 
 スティングレーなんかは、
未来少年コナン』の「ギガント」のイメージも入っている感じがいたしますな。
 
 スペース・モトクロスは、
スターウォーズ』のスピーダーバイクが元ネタでございましょうが、
宇宙空間で使用しております。
 
スペースモトクロス  

トゲつきの鉄槌で攻撃しているあたりは
『レンズマン』の宇宙オノからの引用でございましょうか。
 

 ちなみに、『機動戦士ガンダム』でザクを近接のメイン武器としているのも、
レンズマン』からでございましょうなぁ。
 
『ガンダム』が当たり前の世代だと気にならないかもしれませんが、
 宇宙で斧って、唐突な気がいたしますもの。
 

 で、そのライダーたちも、ヘルメットを取ればこんな人。

宇宙大作戦ゲーム スペースパイレーツ


マッドマックス』か『北斗の拳』でございますな。
 
確かに星形鉄槌には、このような人が似合いそうではございます。
 
 

 メカと言えば、こいつも。「宇宙大作戦ゲーム」ウーロン
ロボットウーロン
 警告を発したり、翻訳を手がけたりいたします。
 
 このようなパートナーロボットは、
いくつもの作品に登場いたしますが、

近いのは『宇宙戦艦ヤマト』のアナライザーとか
『宇宙からのメッセージ』ベバ2号、
あるいは『キャプテンウルトラ』のハック……。

いづれにせよ、
日本の作品に出てきそうなロボット
という感じがいたします。

  
 
 メカといえば、
バラン帝国では穿孔テープを使っているようでございます。
 

 宇宙大作戦ゲーム 穿孔テープ


いいですよねー、穿孔テープ。

むかしのアニメや特撮の科学者は、
みーんな、それもものすごい勢いで読めていたけれど、今の科学者は読めないのかなぁ。
 
  
 さて、前紹介が長くなり過ぎました。

 おはなしは、惑星ミューに存在するオリハルコンをめぐって展開されます。
 

 この物質、重力をコントロールする力を持ち、
平和利用すれば素晴らしいエネルギー源となる一方、
惑星を一瞬で消し去る反重力爆弾を作ることができるというもの。
 
銀河系外からの侵略者、バラン帝国は、これを狙っているのですな。
 
 そのもくろみを阻止するため、
結城亜乱は、スペースエンジェル号とともに、
銀河防衛軍の母艦ゴンドワナに乗り込んだ――
とまぁ、そんなわけでございます。
 
 流れといたしましては、

 (1) ゴンドワナ号に乗り込むまで
 
 (2) 宇宙船ゴンドワナにて
 
 (3) 宇宙海賊との戦い
 
 (4) 惑星ミューでの空中戦
 
 (5) 着陸
 
 (6) ミュー人との出会い
 
 (7) 決戦へ
 
 という感じですかね。
 
 
 とにかく、宇宙での戦闘あり、地上で冒険ありと、
SF映画に登場しそうなシチュエーションが、短い中にけっこう盛り込まれております
 
 沼の花がテレパシーで誘う場面は「ソラリス」を思わせますし、
 恐竜とか巨大サソリや(ハリーハウゼンですな)、半魚人も登場する。
 
この「天使の羽根」なんてぇのは、映画『フラッシュ・ゴードン』でございましょう。

宇宙大作戦ゲーム 天使の羽根
  
 そんな何でもありなSFファンタジーが、
このゲームブックの楽しいところでございます。
 
 選択は、主に2択。
 
宇宙大作戦ゲーム 選択肢
 

  こんな感じで、以前、ゲームブック書誌の「MSXマガジン」
の時に紹介した『惑星スパイ』……と申しますか、
バンタム社のコミック版ゲームブックを参考にしたのではないか
と思われるふしがございます。
 
 まったくのあてずっぽの場合もございますが、
このように、少し考える余地を与えてくれる選択があるのが
よろしゅうございますな。
何の条件もなく右か左かばかりを選んでいるようでは、
ゲームブックとしてはちっとも面白くございませんもの。
 
 場面によっては、このように書き込んで結果を見るシーンもございます。
 

宇宙大作戦ゲーム ビーム砲
 

遊びとしてのゲームブックの楽しさを出した部分でございます。

 これがのちに同社のゲームブックで、
付属の穴の空いたカードを当てて判定するという
スタイルに発展していくのでございますな。
(と思ったら、その方法はすでに『ウォーゲーム』で使われておりました。
 次回の当該記事をごらんください)
 
 ただですねぇ、
 このような選択の場合、間違った方を選べば即ゲームオーバー、
というところも多く、それが雑な造りと感じられる部分ではございますな。
 
 それとは逆に、
選択によってまったく異なる展開が用意されている箇所があるのは、いいところ。

 たとえば、エンジェル号が何者かに乗っ取られるパラグラフ57

 ここでスペースボートを出して追いかけると板東宙太との対決となりますし、
追わないで捕まえようとすると、乗っている人物は別人だったことになります。

 ネットでアドベンチャーゲームのレビューを読んでいると、
このように選択によって設定まで変わることをいやがる人もいるみたいですが、
わたくしはむしろ好みでございます。
 
 ラストも、パラグラフ130
敵軍団を迎え撃つか、ヒメとともに神殿に向かうかで、
(設定は変わるわけではございませんが)
エンドが大きく異なります。

 もちろん、上手くやりおおせたならば両方ともハッピーエンド
 マルチエンディングでございますな。
 
 

☆ 最後に、このゲームブックで突っ込みを入れたいシーン
それがこれ、パラグラフ132でございます。
 

板東宙太さん「美しい自己犠牲の最期」

 不要なキャラクターを退場させるための手段としてこんなテを使うのは、
一種の常套手段ではございますな。
 
 でも、これほどあからさまに
美しい自己犠牲の最期だった」なんて書かれているのって、久しぶりに見たよ!
 
 しかも、ひとつ前のパラグラフでは、
恐竜に捕まった姫と主人公を助けるために、恐竜にむかって石を投げているのですよ。
その投石に失敗しても、恐竜に踏まれてベチャッとなっちゃうし
(パラグラフ109。その場合、そのあと主人公たちも死んじゃうみたいですが……)。
 
 主人公のライバル的に登場したのに、不憫なことでございます。

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『完全犯罪ゲーム』 ゲームブック:完全犯罪ゲーム
桜井一 著 桑田次郎 画
(西東社 シミュレーション・ブックス4/1986/11)

           ページ数146



 作者は、ユーモラスな作風で知られるイラストレーターで、
バー酔虎伝』など、エッセイも書いている方でございます。
個人的にはハヤカワ文庫の『ドーヴァー警部』シリーズの
表紙などが印象に残っておりますな。



 イラストを桑田次郎先生に任せたのは、自らの作風では作品にあわないと考えた
――あるいは編集部がそう判断した――のでございましょうか?


 主人公は、莫大な借金をかかえた青年、風間五郎
彼が、金貸しの金田金太を、
すでに抵当に入っている自分の別荘で殺すところから物語は始まります。

 倒叙型ミステリーをゲームブックでやろうというわけでございますな。

 犯人はきみ

なので、殺害後の証拠の隠滅を図らなければなりません。
警察や目撃者に対する対応も大切。
探偵がやってきたら、その対処もしなければなりません。


完全犯罪ゲーム 陳田一珍助

(↑ 探偵・陳田一珍助さん)


 普通の――倒叙型でない――ミステリの場合ですと、
主人公は探偵や刑事であり、やることはたいてい決まっています。

それに、犯人の行動に対してそれを解き明かす側ですから、
選択は受身であることが多いですよねす。

それに対して、
本作品は自分が犯人であるため、より行動が要求される
つまり、ゲームブックと相性のいい形といってよろしいでしょう。

 作品としては、
『金田一少年の事件簿』や『名探偵コナン』を読んでいる世代には
厳しいなと思う部分も多くございます。
それ以前の作品ですから、そこは仕方の無いところですな。

ここで行っている『完全犯罪』は、
簡単な科学捜査にさえ耐えられないのではないでしょうか。


 ただ逆に、それが選択を面白くしている部分でもございます。

下手に推理小説的な知識があると、いろいろと勘ぐってしまって、
かえって間違った選択を選んでしまうことがあるのですな。

 この作品のポイントは実際には単純。
二点か三点のことに気を使えばいいのです。
ですが、それ以外を考えてしまうと、
結局間違った結果にたどり着いてしまうという……。


 いずれにせよ、結末はどれも後味のいいものではございません
何しろ犯罪者が主人公ですからな。

成功したとしても、自分の犯した罪にさいなまれることになりますし、
失敗したら失敗したで、
正義は勝利し、悪は敗北したのだ。喜ばしいことじゃないか
と皮肉っぽく結んでくれる。

完全犯罪ゲーム・エンド

(↑ エンドの例。142ページのほうはエンドの一歩手前ですが、このあと、
   病院行きの結末をむかえます)


完全犯罪ゲーム・エンド2

(↑ エンドの例その2。桑田次郎先生とは
   思えないコミカルな表情ですなぁ)



ただ、そういうコメントが書かれていてもそんなに不快ではないのは、
主人公に完全に感情移入することが、ないからなのかもしれません。

状況は緊迫し、選択肢も意味があるものでございますが、

語り口が突き放したものであるからでございましょうかねぇ。

主人公が殺人犯だからなのかもしれませんが……。

いずれにいたしましても、
推理ものというのは、ゲームブックに向いているようでいて、
実は難しいものでございます。
しかるべき場所にいなかったり、会話を間違えたりして、
情報を取り逃すと詰んでしまうなどございますからな。

パズルや迷路を推理の代替としたり、
当てずっぽうの選択肢や、選択なしで話が進んでいく
推理ものゲームブックもございますし。

犯人を演じる倒叙ものというスタイルを採用した本作は、
推理ものとして及第点を与えられるのではないでしょうか。




☆ 考えてみれば、泥棒が主人公のゲームブックには、
  シリーズになるほど人気のものもございますが、
  あれも言ってみれば
  「犯罪者が主人公のゲームブック」でございますな。





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ファミコン冒険ゲームブックシリーズ12

『ミシシッピー殺人事件/リバーボートの冒険』

樋口明雄/S・ハード(双葉文庫/昭和六二年五月)


ミシシッピー殺人事件/リバーボートの冒険


というわけで、「ゲームブック五段活用」の時に触れた
『ミシシッピー殺人事件/リバーボートの冒険』について、書いてみましょう!

 プレイした樋口明雄先生のゲームブックの中で個人的ベスト。
いや、そのくくりを無くしても上位に行くような名作と申してよろしいでしょう。

 のちに冒険小説をものにする作者が、
当時本当に書きたかったのはこういう作品ではないか、
とわたくし密かに思っております。


 同年十二月に上梓された『ヴァイケルの魔城』のあとがきには、

 今回、初めてのオリジナルゲームブックということで、
どういう話にしようかと考えました。
 まずは、子供を主人公にしたい。
 それも、大人に憧れながらも、子供であることを謳歌できるような年頃。
つまり十二、十三才の少年たち。彼らが相手にするのが同じ子供だとすれば、
ただの「わんぱく戦争」のお話になってしまう。
当然、彼らの敵にまわるのは、悪い大人たち。
――ただし、人間を出すよりは魔物を相手にしたほうが、より面白くなる。

 などと書かれておりますが、「魔物を相手にした」
『ヴァイケル~』や『ドラゴンクエストⅡ』(こちらも同年)などよりも、
それらが出てこないこの作品のほうが、より魅力的に感じるのでございます。

 それは、この物語の背景である西部劇やマーク・トウェインの世界を、
先生が本当に愛しているからでございましょうな。

 それらを単なる知識としてではなく、
自家薬籠中のものとしているからこそ、
その土壌を養分として、
少年たちを生き生きと描けているのだと思うのでございます。




 さて、物語は、
原作(アクティビィジョン版、というよりもファミコン版……かな?)の事件が
解決したところから始まります。

「デルタ・プリンセス」号がニューオリンズに入港し、
乗客たちが下船しているまさにそのとき!
 原作での犯人が何者かに射殺されてしまうのでございます。

 偶然居合わせた主人公二人、ジムとラリーは、
容疑者として警察に連れて行かれた知り合いの女性の濡れ衣を晴らすため、
犯人捜しに乗り出すのでございますが……。



 物語は二部に分かれ、
二人の主役がそれぞれの主人公を務めるという構成になっております。
  
 前半の主人公はジム。
 主に「犯人はどこから被害者を撃ったのか」を推理するのが目的となります。

 とは申せ、推理よりも行動が主体。
 それによって次第に事実が明らかになっていくのでございます。

 重要な手がかりや事実は、太字で書かれていて親切――
 と申しますよりも、むしろ必要なのでございましょう。

 原作を踏まえながら、さらなる大きな事件に発展していく話でございますから、
重要ポイントを押さえておかないと、話が分からなってしまうのでございます。

 で、そうした調査の過程で、
マーク・トゥエイン先生と知り合いになり、悪漢三人組から追いかけられ……。

 この「悪い奴から逃げ回りながら調査」という点が、
このゲームブック全体の面白さとなっております。

 特に、廃屋で殺し屋たちに追いかけられるシーンが前半の山場ですな。

 プロローグを読んでいれば、
ここでそのことが役に立ち、悪漢たちから逃げおおすことができる
という仕掛けがあるのでございます(それを経過しないルートもございますが)。

 けっこうおりますからなぁ。
プロローグとか読まないで、パラグラフ1からはじめちゃう人って。

 プロローグにヒントと言えば、
FF23アイフォーさんとかが有名でございますが、

それよりも提示の仕方がずっとスマートでございますな
(いや、この場合、あっちの方がアレなのでございますが……)。

 前半最後、パラグラフ298では、そこまでの調査を総合して、
弾丸が建物から飛んできたか、船から飛んできたかを
推理するシーンがございます。

ここで間違えると「UNHAPPY END」
成功すると次に続くわけでございます。


 どちらが正解かは申せませんが、
 ここで港湾事務所に駆け込むと、船はまさに出航しようというところ。

 ここまでに時間を費やしすぎておりますと
「デルタ・プリンセス」をお見送りしながら、
やはり「UNHAPPY END」と相成ってしまいます。


それもクリアすると、パラグラフ14で船にジャンプ。
 
「アメリカには、こんなことわざがある。『子供と馬鹿者は神様が守っている』
 ぼくらはその両方だ。何とかなるさ。」

 こういう気の利いた文章が各所に織り込まれていて、
それがこの作品をしゃれたものにしておりますな。


 さて、そうして前半終了。
 主人公はラリーとなり、船内で事件の真犯人を捜す後半へと移ります。

 マーク・トゥエイン先生に助けられたりするものの、
密航者でございますし、何やら背後にある事件を解決しようというのですからな。

 狭い船内での隠れながらの捜査と追いかけっこが、
少年冒険ものらしい楽しさを出しております。

 で、その過程で、新事実が次々と明らかになっていくのでございます。
 この間紹介した、「ユーズド・ゲームズ」の記事では

ユーズド・ゲームズVOL.16 p.8
「無意味に濃くて困る」
が、

「結局事件の真相には
何一つ関わってこない。
なら無理に入れるなよ。」(p.8-9)

と評された原作の基本設定が、

「実はこうだった」とどんどん
上書きされていくのでございます。

 意外な人間関係が明らかにされ、
その裏に隠された真相が
明らかになっていく――。

そうやって
『ミシシッピー殺人事件』に、
オリジナルの解決をつけている
のでございます。
↑「ユーズド・ゲームズvol.16」 p.8


 
凶器に関しては、この作品の中心読者と思われる層には少々難しそう。

 というか、西部劇ファンでなければ無理というものかもしれません。
 ですが、これがクライマックスで重要な意味を持ってまいります。
 この名銃でなければならないのですな。

 というわけで、クライマックス。

 マーク・トゥエイン先生が捨て身で子供たちを助け、
ミシシッピー殺人事件/リバーボートの冒険

真犯人と

少年たちの追いかけっこも頂点に達し――。

下船したはずの探偵も登場。

謎だった人物の
意外な正体も明らかになり――。


そして、
真犯人とその謎の人物との対決。

これがやたらとカッコいい。

よくTRPGでは、PCが関われない、NPCだけの場面はいけないと申しますけれど、ここは違いますな。

 2人の対決は旧い時代に生きる大人たちの生き様を子供たちに伝えているのでございます。

 対決のあと、旧い時代の終わりを感じて、ラリーは夢が崩れる思いを抱きます。                                                                    (↑犯人の名前消しておきました~!)
                                                                                                 
 それを受けて、マーク・トゥエイン先生のセリフからエピローグは始まります。

「古いものと新しいもの、その入れ代わり、
君らは、そんな時代を生き、また、そんな場所に生活している」
……。

 西部劇やマーク・トゥエインのロマンティックな時代は終わり、
 新しい時代がやってくる。
 古い時代の良さは残さなければならないが、
 新しい時代は、新しい時代の良さがある。
 ともあれ、君たちは1人の女性を救う冒険をした。
 このことは、君たちが大人になっても、輝かしい栄光として残るだろう。

 そのようなことを先生は申します。

 そして、
主人公が、仲間とともに新しい時代を生きていくことを予感させてエンド。

「ただ今、ちょうど二尋(マーク・トゥエイン)!」水先案内人の声が応える。
 ジムは驚いた顔で、作家を見た。コーン・パイプの男はニヤリと笑った。

 結びはこれでございます。
 
「マーク・トウェイン」(水深二尋)は、
「蒸気船が座礁せず安全に通航できる限界の浅さ」と、
ウィキペディアにございましたから、ここは、
マーク・トウェインのペンネームの由来を挟むと同時に、
少年たちの前途を予感もしくは祝福した暗喩が
込められているのかもしれませんな。






☆ ところで主人公たちをつけ狙う殺し屋3人組は、
「投げナイフ」を武器にしているのですが、
いったいどうしてなのでございましょうねぇ?






追記:

ちなみに、原作の原作である「マーダー・オン・ザ・ミシシッピー」(アクティビジョン)については、「月刊Bug News」誌1986年10月号にございます。
(「チャールズ卿の手帖」津田宏(p.52-55))
 そこではこのゲーム、ジョイスティックで操作できること、 メモを取れること
などが評価されているようですな。
 おそらく、このジョイスティックで操作できるという点が、
ファミコン版が作られる決め手になったのではないかと――。

 にしても、同年にファミコン版が出ているのですから、早いですなぁ……。


 さらにちなみに、同誌のその月の「編集部が選んだ、おすすめゲームソフト」では第4位となっております。


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『光の旅人――夢の笛戦記――』

 君野和摩・作 岩田くみこ・絵(偕成社/1994年10月)

光の旅人  
 
  フルパラ国のアップリン村は、幸せに包まれた村でした。
  それというのも、この村には、「夢の笛」という美しい笛があったからです。
  その笛の音に包まれているかぎり、平和は永遠に続く……。
  ところが、その笛を魔物「ギャグーン」が奪っていってしまいました。
  笛の力さえあれば、世界を支配できるーー。
  ギャグーンはそう考えたのです。
 
 「夢の笛」は、「ソーサリー」「冠」みたいなものでございますな。

  それを取り戻すべく、「セラム」・「ルルナ」・「モグモグ」という、
3人の若者が立ち上がるわけでございます。

  3人は、それぞれ技能や性格が違い、
特定のキャラクターでないと進めないような場所がございます。

 と申しましても、数値などの要素はございません。
お金の出入りはあるものの、それも記録しておく必要ないものございます。

  子供向けのマンガ絵本で、
コマの所々にある選択肢に従って進んでいくわけでございますが、

  他のゲームフックとちょっと変わっているのは、
パラグラフナンバーが、ページ順ではなくて物語の進行順になっているのでございます。

 例えば、10の次の選択肢は11が12になっているわけですが、
そのパラグラフナンバーが、ランダムにページに配置されているわけでございます。

 そのため、例えば先ほどの例なら、
「p.32-11へ」・「p.21-12へ」といった記述になっているわけですな。

 わかりやすいんだか、そうでないのかは、よく分かりません。


 中心となるゲーム性は、迷路でございます。

 絵をお描きになった岩田くみこ先生の略歴からも分かりますが、
一種の迷路絵本でございますな。

 ゴールとなる場所が、迷路には何カ所かあり、
それによって目的地に着いたり、ひどい目に遭ったり、元に戻されたり……。

  迷路ものとしては、一般的な展開でございましょう。

 そこにアドベンチャーゲームブックの
ストーリーと選択の要素が加わるわけですが、
子供向けなので、お使い的なわかりやすい流れ……。
失敗したときなどに思わぬ展開とかあって、楽しいと思いますよ。


 このゲームブック、これは、と思った点があったのですが、
どうも勘違いだった様子。

 と申すのは、地図の扱いにございます。

 見返しに、地図が描かれているのですが、
そこにはアップリン村と星の塔以外の地名は書かれていないのでございますな。

 で、1に「地図に分かった地名を書き入れよう!!」
とあるものでございますから、

それによって、
それぞれの位置関係が分かっていき、
ある場所から別の場所へ行くときに時間の短縮となったり、
まったく知らない場所に行くための手がかりになる
のかと思ったのでございます。

 ですが、そういう要素はない様子。
 暗号を解いて新しい場所へ行く、という場面はあるのですが……。

 とは申せそれは、まだ伸びしろがあるということですな。

 場所やそこへ行くまでの道筋を発見するのは、地図を見る上での楽しみの一つ。
 そういうものをゲームブックに取り入れる、
ヒントとなるのではございませんでしょうか?
 

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『雪の魔女の洞窟』
著:イアン・リビングストン 訳:浅羽莢子
(アドベンチャーゲームブック9 社会思想社 1986/4)

今日は白い日だということでございますので、『雪の魔女の洞窟』。

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メランコリックオペレーション


  恋愛ノベルシミュレーションゲーム
   Heart of Magic
  『メランコリック・オペレーション』
  執筆:東風円/監修:みやかわたけし
  ホビーデータ(平成9年7月/角川mini文庫)

 (おおっと、画像がじっさいの本と逆だ)


頑張っているね」の比較級は、

「無理しているね」、最上級は

「無茶しているね」だよね!?



……。
いや、この一言が書きたくて、
この作品を取り上げたのでございますが……。


だって言いたくもなるじゃないですか。


1ページ372文字(31×12)で、111ページ。
( 本文のみ。ルールやイラストは除いて、でございます)
およそ、えーっと、
ROLE&ROLLの作品募集ページを参考にすると、
あの雑誌で1516ページ分ぐらいってことになりましょうか。
ゲームブックですから、空白も多いですし……。
それで3人の女性、一年間を扱おうって言うのですから。


とおりいっぺんのものになるのが当然必然


制作中、作者はどう感じていたのでございましょう。


無理無理無理、と思いながら作ったのか、
それとも割り切っての仕事か……。


ちょっとネタバレではございますが、魔法適性試験に失敗すると女の子は、
消滅してしまうのだそうでございます。

恋と遊びと勉強の三すくみでゲーム性を出そうとしているのですな。

でも、ありきたりのイベントを積み重ねるだけしかできていないので、
切なさとか、焦燥とか、そういうものを出すまでに
当然到ってはおりません。


ちなみに、本書は、ホビーデータ社の大規模メールゲーム、
『ハート・オブ・マジック』の関連本だそうでございます。


ゲームについての詳しいことは存じませんが、
このゲームに参加するプレイヤーを対象に作られたものでございましょう。
登場するNPCと基本的なルールを紹介するという
仕様ありきなのでございましょうな。


そのあたりも、物語を圧迫しております。


後書きにも

mini文庫に許された枚数の中に
三人の女の子を詰め込んだため、
説明的な描写はほとんどありません。
でも、それはそれで良かったと思うのです。
つき合い始めの女の子って未知の部分がたくさんあって、
つき合っていくうちに初めてわかること多いもの。
この本もこれと同じなんですね。繰り返し遊んで
いろいろ「発見」してください。」


と書かれております。


……。


ものは言いようと申しますか、


無理をしておりますな……。


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 ドルアーガの塔・外伝。表紙『ドルアーガの塔 外伝』
 企画・構成:スタジオハード、
 文・作画北殿光徳
 (勁文社アドベンチャーヒーロー
 ブックス 昭和60年12月)

※ 扉ページには「ある勇敢な戦士
  の物語」というサブタイトルが
  つけられてございます。


さてさて、

このゲームブックと申せば、まずその舞台となる
城塞戦車・ドルアガノンが話題になりますな。

ドルアーガの塔・外伝。城塞戦車ドルアガノン
(↑城塞戦車ドルアガノン) 

ドルアーガの塔を求めて来たのに、戦車
石垣のような車体と、やはり石造りに思われる無限軌道。

インパクト絶大

こんなのが、「ギシンギシンと不気味な音を立てて」現れたら、
そりゃ、誰だって驚くというものです。

とは申せ、中は原作のビデオゲーム準拠の長方形の迷路なんですけどね。
インパクトのある仕掛けがあるわけでもなく、
原作準拠のまともな造り。

出オチ?

主人公の名は「ノヴァ」

「ギル」「カイ」「イシター」メソポタミア神話由来なのに、
ノヴァって何だ~! と一瞬叫びたくなろうと思いますが、
もともと『ドルアーガの塔』って、
『ダンジョンズ&ドラゴンズ』や『ウィザードリィ』に
触発されてできた作品らしい(「ドリマガ」2003/7/25,p.28-29)ですからな。
敵やアイテムもメソポタミア由来ではございませんし、
そもそもドルアーガという名前がインド神話由来
それほどこだわるところではございませんでしょう。

で、

このノヴァさん。
王国の従士長で、実はギルの双子の弟
(女神イシターに言われるまで知らなかったぽい)なのだそうでございます。
そんなこともあって、イシターさまから黄金の鎧をいただき、
ドルアガノンに立ち向かうのでございまずが……。

彼は、

おそらく、ゲームブック史上、
もっともかわいそうな
主人公の一人
といっても過言ではないのではないでしょうか?

何が? ですって。
いや、その目的が、でございます。

イシターさまはおっしゃられます。

「おまえは、あの邪悪な死の戦車(いくさぐるま)ドルアガノンを
攻略するのです。あの城塞戦車には、ドルアーガの塔の秘密が隠されています。
おまえは、この秘密を解き明かし、それを兄ギルに伝えればよいでしょう。
兄弟二人して悪魔を倒すのです」

宝物の出し方を知らないと先に進めないというゲーム性で、
ソフトよりも攻略本の方が売れた、
というゲームの特色が反映された女神さまのお言葉ですな。

ですが、
「兄弟二人して悪魔を倒すのです」
とか、鼓舞するようなおっしゃり方をされても、
所詮は下働き
ギルのために攻略方法を調べて来い、っていうことですからな。
しかもでございます。

やっとの思いで、ドルアガノンを攻略し、ドルアーガを倒したと思ったら……。
ドルアガノンの六階部分が分離して宙に浮き、そのままどこかへ飛んでいくという……。
倒したと思っていたドルアーガは、実は生きていたというわけですな。

ゲーム自体はここで終わりですが、
「はてしなくつづくノヴァの戦い さてこれからの物語は……?」と、
次回予告めいたあらすじが、その後に続きます。

どうせ続編なんて出ないだろうからここであらすじを書いちゃえ、と思ったか、
それとも、ここで書いとけば、もしかしたら続編が出るかも、と思ったか、
はたまた勢いか。

とにもかくにも、ノヴァの前には第二・第三の「ドルアーガの塔」、

タワー怪獣ドルアガドン石像巨人ドルナイト

立ちはだかります。

ドルアーガの塔・外伝。タワー怪獣ドルアガドン、石像巨人ドルナイト
(↑タワー怪獣ドルアガドン石像巨人ドルナイト)

イシター様は、
「ドルアーガを倒せるのは何度かこの塔を制覇したあと、
秘密のかぎりを知りつくしたときです」
とおっしゃっておりますが、

その前に、ギルが一人でドルアーガ倒しちゃうよ!!
攻略本とか持っていたらもっと早いかもしれないよ!!

そうなると、ノヴァのやっていることは何だったのか……。
まったくの徒労でございますな。
本っ当~に不憫な主人公でございましょ?
しかも、ドルアーガの本体がギルが挑んでいる塔にいるとすれば
ノヴァが立ち向かっているのは、
分身? ニセモノ? そっくりさん

城塞戦車ドルアガノンやタワー怪獣ドルアガドン、
石像巨人ドルナイトなんてのも、
もしかするとドルアーガが見せた幻影とかなんじゃ……。

そう思うと、さらにさらに不憫。

まぁ、ゲームをプレイしている最中は、
そんなストーリー忘れているとは思いますけどね。
それに、

ギルがドルアーガを倒した裏では、人知れずこのような活躍が……、
というのは、外伝としては正しいですな。

ギルの双子の弟が、ギルと同じ黄金の鎧を身につけて……
というのは、アーケードゲームのストック( 残機) から
イメージされたものでございましょうし、

このゲームブックの目的である「『ドルアーガの塔』の秘密をさぐる」も、
先ほども書きましたとおり、
特殊な宝物の出し方を知らないと上階へと進めないという
ゲームの性質から導き出された、まことに正しいものだと存じます。
(確かにこんなの分かるか! という出現方法もございますしねぇ)

最終的にこの塔を攻略したことによって
○○の秘密を暴き出したというのはございませんが、
ゲームのところどころには、
元のコンピュータゲームのヒントとなる描写もございます。
ございますが……、そうではないところもございますし……、


そういう目的なら攻略本買った方が早いよね、

ということでございますな。

とは申せ、ゲームブックとしてはオーソドックスな造り。
ゲームをプレイしている「あなた」が不憫なのではございません。

ただただ、主人公のノヴァがかわいそうなだけなのでございます。




※ でも、考えてみますとわたくし、テレビゲームの『ドルアーガの塔』、
クリアしてない……どころか序盤でとどまっておりしたっけ……。
今では、攻略方法なんてゲームソフト自体に内蔵されていて、
ボタン一つで出てきたりいたしますが、そもそも『ドルアーガの塔』って、
アクションゲームとしても難しいんですもの。

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大江戸疑惑人表紙

『大江戸疑惑人走る!』かとう祐介・作 泉晴紀・画
(白泉社アドベンチャーゲームコミック/昭和61年2月)

最初に書いておきますが、『ゲームコミック」となっておりますが、
コミックではありません。
絵物語の絵が、マンガというか劇画になった、そんな形式の本でございます。

さてさて。

 このゲームブックを見たのは、東側に古本、西側に古道具屋を置く、
雑然とした倉庫のような店でございました。
 棚からとって表紙を見たときは、んんっ? とうなりましたよ。
 白泉社で、ガロ系の絵……。
白泉社と申せば、少女マンガのイメージしかなかったものでございますから、
それとは真逆(まぎゃく)の絵に、うーむと考えてしまった
というわけでございます。
 白泉社が集英社の下部的存在として作られたらしいというのは、
当時すでに自分の知識としてあったのですが、それでもやはり、
そのギャップになじめなかったのでございますな。
 著者であるかとう祐介先生のことは存じませんでしたが、
絵をお描きになった泉春紀先生のことは存じ上げておりました。
 今では『孤独のグルメ』『花のズボラ飯』などで有名な久住昌之先生と、
『かっこいいスキヤキ』泉昌之名義の合作でお描きになっていた
(泉先生は作画担当だったようでございます)方でございますな。
 ですから、時代劇といっても、ちょっと変な感覚のものだろうということは、
予想がついておりました。

 大江戸というからは、時代劇らしい。疑惑人というのだから、悪人なのだろう。
といっても、盗賊とか渡世人とか、かっこよさが期待できる方向でもなさそうだ。
いったいどういう……。
 パラパラとめくっていくと、そこでまた首をかしげる挿し絵が。
 主人公とおぼしきはだかの男の人が、たくさんのはだかの女の人に
囲まれているのでございますな(詳しくはもうしませんが)。
 手軽なゲームブックの体裁ですから、小学生も読む可能性がございましょう。
にもかかわらず、これって大丈夫? そう思ってしまいました。
 とりあえず確保。
帰ってからプレイしはじめたのでございますが、疑問はますますつのるばかり。

「美浦屋和吉(みうらやかずきち)」
「古破夢堂(ふるはむどう)」
「水上滝之丞(たきのじょう)」
……。


サブタイトルからして

「万金猫²胸算用
   (よろずかねとにゃんにゃんぎわくのみつもり)」

でございますからねぇ。

「イコール」「スター」「グループ」「セックス」
などの、
外来語もまじえて語られるお話は、それ自体が時代劇っぽくない。

「これはなにか、現代の話がもとになっているな」というところまでは、
うすうす感ずいたのでございますが、それが何かはわからない……。
が、
 しばらく読み進めていくうちに、一つの言葉に行き当たって、
ようやくそれがわかりました。
その言葉とは、

「佐郷田滋門」

「疑惑の鉄砲玉」

そう、これは、
あの三浦 和義事件、通称「ロス疑惑」を題材にした、パロディ。
美浦屋和吉は、三浦 和義のもじりだったのでございます。。
(ここで、以前なら「キングカズ」こと、サッカーの三浦選手と混同させるような
ネタを書いたかもしれませんが、今さらそれをやっても……ということで割愛いたします)

 ただ、正直申しまして、わたくしもこの事件について詳しく知っているわけでは
ございません。

 なにか、容疑者の三浦氏が、やたらと派手でにこやかにテレビに出てくるものだから、
ワイドショーが連日ネタにしていた、その程度の認識でございます。
ですが、まぁ、そんなわたくしでも、「ジミー佐古田」とか「疑惑の銃弾」という単語ぐらいは聞いたことがございます(聞いたことがあるというだけなのでございますが)
そんなわけで、どこがパロディなのかを詳しく解説することはございません。
「ロス疑惑」について、知りたい方は、申し訳ございませんが、
検索でもして調べてくださいませ。

というわけで、それ以外のことを。

システムというほど大げさなことではございませんが、
 このゲームブックでは、「共通ページ」という部分があり、
そこは上欄外にアミ線が書かれております。この場所では例えば、
パラグラフ62から66までが共通部分でしたら、
その部分にはパラグラフのジャンプはなく、
62,63,64,65,66と、順番に読んでいくということを意味します。

だったら一つのパラグラフにまとめてしまえばいいのに、とも思いますが、
やはりそこは、文章に区切りを持たせたいのでございましょう。

また、場合によっては、パラグラフ62で書いていることは、
すでに120で説明してしまっている、という場合もあります。
 そういう場合には、120からは、62に跳ばないで63に跳び、
そのあと64,65,66と進めていく、という方法も使っています。

これなどは、使えば、もっと凝ったことも出来そうな気もいたしますが、
このゲームでやっているのは、その程度ですな。 
 ともかく、そうした箇所では、
「51から62→66と読み進んだキミは 98へ進め」といった具合に書かれてございます。
ページをふりかえって見直すか、ステップメモをとっておくかする必要がございますが、
そう面倒なことでもございません。



あとは、
最後の方、捕まってからあとになりますと、

 大江戸疑惑人1

大江戸疑惑人2 


といった具合に、江戸と現代がごっちゃになったような面々が登場いたします。

結末はこれらの選択……
いや、あみだとかで決定されるから選択ではございませんな……
によって決定するマルチエンディングとなっております。
とは申せ、犯罪者なのですから、いい結果などは期待できず
たいていは死刑でございます。一番いいのは、島流しでしょうかね。
島流し先でスタアとして迎えられ、島流し後にそこでの体験を出版、
さらに「古破夢恋椿」という名の香入り椿油を売り出すなどして、大もうけ。
千両箱を枕に、若い娘に囲まれた生活を送るという。

ただし、「これでは納得できない人は」と最後にあり、
そこでは仕事人に殺されるエンドが待っており、「エンドのエンド」と結ばれております。
悪の栄えた試しはなし、でございますな。
もっとも、「納得できない人は」となっているので、
「納得がいく」ひとは、自分が主人公ならそれでいいという方は、
悪の栄えるエンドでもいいのでございましょう。

……。

いいのかなぁ。
 
追記:フローチャートはこんな感じです。
 
大江戸疑惑人




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ウルティマ失われたルーン 『ウルティマ~失われたルーン』
 構成・文:犬飼わたる/レッカ社 
 作画:松下徳昌
 (91/12,双葉社ゲームボーイ冒険
           ゲームブックシリーズ)














「ハード末期に現れた傑作」という言葉が、ゲームソフトではよく使われたりしますな。
双葉社のゲームブックにもそれは当てはまるようでございます。

『メタルマックス 爆走タンク冒険戦記』村上紳/レッカ社 編(91/06)

『ウィザードリィ外伝I 女王の受難』山崎和緒/スタジオ・ハード 編(91/11)

『ウルティマ 失われたルーン』犬飼わたる/レッカ社(91/12)

『戒厳令のトルネイド』富沢義彦/スタジオ・ハード 編(91/12)ルパン三世シリーズ19

『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』富沢義彦/スタジオ・ハード 編(92/07)

といったあたりは、どれも遊びやすくて面白く、本当に素晴らしい。

もっとも、最終作である『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』は、バグまみれで、
双葉社から送っていただいた正誤表を使ってもプレイできないものでしたが、
ストーリーがよいものですから、バグを洗い出していく作業さえもゲームとして
楽しめました(というわけで、これだけはマニア向けですね)。

おそらく、ゲームブックに対するノウハウが確立していったということなのでしょう。
スタジオ・ハード、レッカ社とも、どこよりも多くゲームブックを手がけているわけですから、それは当然ですな。

その中から、今回取り上げるのは、『ウルティマ 失われたルーン』
なんと言っても、この後書きがいいじゃありませんか。

失われたルーン後書き

多分ですが、これ、双葉社のゲームブックはもうこれ以上でないと知った上で
書いているのでしょうな。

そう思いながら読むと、いっそう胸にくるものがございます。

後書きでこれだけの宣言をしているのですから、本編が面白くなければ嘘でございます。

もうねぇ、FFシリーズをはじめとするゲームブックのオマージュやアイデアが込められていて、ファンならニヤニヤ・ニコニコできますし、『火吹山の魔法使い』をプレイして、次に何をやればと迷っている初心者にも勧められる(『バルサス~』は手強いですからねぇ)。
そんな造りになっております。

このあたりのノウハウが、小学館とかエニックスとか、HJG文庫とか、そのあとに出たゲームブックにあまり受け継がれなかったようなのが本当に非常に残念でございますな。

……。

とここまで書いてきて反省するのですが、ここら辺の作品って、現在入手困難みたいですよねぇ。

『ブラックオニクス』(これも名作ですな)が再構築~リビルドされて、復活したとネットで書かれておりましたから、ここら辺のゲームブックも、いろいろなんとかして、復活させられないものでございますかねぇ。

マニア向けの作品よりも、むしろこうした初心者向けの良作が、ゲームブックにとって必要でございましょう。

 

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