忍者ブログ
2024/04/27 ゴールデンウイーク、なるものが存在するそうでございますね。インタビューで10連休などと答えていらっしゃる方がおられました。いいなぁ。うらやましいなぁ。むしろゴールデンウィークは死にそうに忙しくて休むひま無いですって人にインタビューすればいいのに。でもニュースっていうのは珍しいから報道する価値があるんですよね。ゴールデンウイークは忙しいのが当然。休みっていう人は、きっと珍しいのでござましょう。……うらやましいなぁ。 ..
(タイトル下に収まらなかったので、ここで)

『深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説』辻真先(東京創元社/2018/8)
 
 昭和7年名古屋生まれの作者が送る、東京と当地を主舞台とした作品。
時代的にはシナ事変の直前かな、満州の事情なども関わってくる。 
 名古屋汎太平洋平和博覧会が開催された期間、
その隣にしつらえられたという設定の「慈王羅間(ジオラマ)」が目玉の舞台となる。
 
 前半は当時の状況などをいろいろと結びつけて、情報をあふれさせている。
やり過ぎな感があるが、多分そこを自然な感じにするともの足りなくなるのだろう。
 
推理小説というよりも探偵小説
読者が謎を解くのは不可能に近いと思う。
パノラマ館ならぬ慈王羅間館が目玉の舞台となっている
ことからわかるとおり、乱歩作品へのオマージュもある。
それも悪ノリ、かなり好き勝手にやっている感がある。
当時の技術でこれは無理、現実と見間違えるほどには出来ないだろうと思うけれど、
そこら辺はフィクションということで割り切っているのだろう。
当時これを作るとしたらを考えるのは楽しい。
でもエログロ・悪趣味は嫌だなぁ。
そもそもこんなものに大金をかけたということは
いくら大金持ちとはいえ信じられない。
 
トリックも、当時の技術を考えると、
フィクションでなければ成立し得ないもののように思う(現代でも無理かと)。
 
二十面相オマージュならそれもありということか。
どちらかというと大トリックはルパン三世な感じがしたけれど。

拍手[0回]

PR
『N』道尾秀介(集英社/2021/10)エヌ
           
 6つの作品が収められた短編集。
 この本には特徴が2つございます。
 
 一つは天地が逆になっている作品があるということ。
 タイトルの『』は、
おそらくそれを表わしているのでございましょう。
 
 6つの短編すべてが「○○ない~」という題名で
統一されていることから、
英語にすれば「No ○○~」となることも意味しているのかもしれません。
 
 天地を逆にした理由について著者は
「章と章の物理的なつながりをなくすため」と書いております。
 もっと深い意味があるのでは、と勘ぐってしまいますが、
よく分かりませんでした。
 
アイルランドが舞台の「笑わない少女の死」と
「消えない硝子の星」が天地逆になっているのですよねぇ。
 
 ですから地球の反対側で起こった物語が逆なのかな
とも思ったのでございますが、
「名のない毒液と花」の舞台は日本。
 
なのでそういうことでもないのでしょう。
 うーむ、疑問でございます。
 
 疑問は疑問のままにしておきまして、
 
 もう一つの特徴は、
本の最初にそれぞれの短編の冒頭部分が書かれたページがあり、
 その中から選択してどれでも好きな作品から読み進めていい
と作者による指定があることでございます。
 
 選択はそこだけ。
物語の途中で分岐が起こるようなことはございません。
 単に短編の選択だけ、ですな。
 
 オビには
「読む人によって色が変わる物語を作りたいと思いました。
 (中略)物語のかたちは、6×5×4×3×2×1=720通り。
 読者の皆様に自分だけの物語を体験していただければ幸いです」
と書かれております。
 
 最初この惹句を読みましたとき、
 
 720通りなんてはったりもいいところ。
 ゲームブックのように通らなかったパラグラフがあるのならまだしも、
短編自体は変わらないのだから、
それを並べ替えたところで、そう何度も楽しむことができるものではない、と──。
 
 でもこれ、そういうことじゃないのですな。
 
 1人の人が何度も楽しめるものを目的としているのではなくて、
読む人によって印象が変わる、というのでございますから。
 
 確かに、読む順番によってその物語から受ける感じが変わってくる
というのはございましょう。
 
 雑な例でいえば、推理小説のトリックなどが思い浮かびますな。
 古典的な推理小説をまったくのサラの状態で読むのと、
現代の作品でそのトリックが紹介されているのを先に読んでいるのでは、
かなり感覚が異なってまいります。
 
 現実でも、
あるニュースに関して、その裏事情を知って聴くのとそうでないのとでは、
そのイメージは大きく変わってくるなんてこと、ございますよね。
 
 でも720通りは機械的で、ハッタリめいて大げさですよねぇ。
オビの背や表紙側の「あなた自身がつくる720通りの物語」となると、
さらにハッタリめいて聞こえます。
 
 さてところで、
 どこから読んでもいい、読む順番によって読書体験が異なる、
そういう特徴を持つ作品群にするためには、
それぞれの作品が何らかの関連性を持っていなければなりません。
 
 ぜんぜん関係がなかったら、読む順序も関係ないですからな。
 
 そんなわけでこれらの作品に登場するキャラクターは、
あるときは主人公として、あるときは脇役として登場いたします。
意外な一面を見せたり、ぜんぜん違った感じで現われたり……。
 
それがいいのでございますな。
 
ニヤリとさせられたり、フーンとさせられたりいたします。
 
 ただし、
あるキャラクターがすべての作品に関わっているわけではございません。
関わっていると申しましても別の一作くらいでございます。
 それが欠点というわけではなくて、
それぞれの作品に独立性と自由度を与えているのでございますな。
 
 
 蝶が出てくるのは、バタフライ効果と何か関係あるのかも。
偶然と偶然が重なって、
日本とアイルランドの物語が奇跡的につながっているということなのかも?
 
とも思ったのでございますが、
読んだ感じではそこまでのつながりは見いだせませんでした。
 
 ただね。日本の側では花が出てくるのですよね。植物の花ではございませんが──。
 それが、アイルランドの蝶と対比する関係になっているような気がいたします。
  
 気づけば表紙にも蝶と花が描いてございますし──。
(カバーかけて読んでいるので、気づかなかったのです)
 
 アイルランドの蝶が死のイメージ、
日本の「花」が生と申しますか、生きる希望のイメージ。
そんなふうに対比させていることはあきらか、
とまで言っちゃっていいのかな、に受けとれます。
 それが全体を一つにまとめているのでございますな。
 
  
 先ほどは独立性と自由度と申しましたが、
発展させるとすれば、キャラクターをもっと色々な作品に登場させた、
より複雑な物語も期待するところでございます。
  
そのための鳥羽口ともこの作品は取れますな。
作者がそうするかは存じませんが。
 
 
 さて、さてさて、
 
 アドベンチやーゲームの視点から見ますと、
ザッピングや双方向移動型のゲームが、それに近いと申せますが、
それほどでもない部分もございます。
 
 ザッピングにしろ双方向移動にしろゲームでは、
大抵フラグを使って時間軸を管理しております。
 そのため、ある部分によっては、
どちらを先に読むかが必然的に決められてしまうわけですな。
そうでないとゲームが進行いたしません。
 
 もっとも、この小説にしたところで、
1つの作品の中での時間軸は決定しているわけではございますが。
 
 まぁ、ですから、完全に同じではないとはいえ、
こういう形式を取り入れることはできると思うわけでございますよ。
 ある場所でメインを務めたキャラクターが別の場所でも脇役として登場し、
それが意外な一面を見せるというようなことが。
 
 矛盾が起こらないようにしなければなりませんが、
頭に入れておいて良いアイデアだと存じます。
 
  
 最後に一言。
 さきほどカバーをかけて読んでいると書きましたが、
それだとちょっと読みにくいのでご注意を。
 
 いえね、パッと開いたときに、どちらが本当の天地だったか、
言葉を変えて言えばどちらが表紙だったか
一瞬分からなくなるのでございます。

拍手[0回]

『なめくじに聞いてみろ』なめくじに聞いてみろ
都筑道夫
(講談社文庫/新装版:2021/7)
 
 
 タイトルからは想像できませんが、
アクション小説でございます。
元のタイトルは『飢えた遺産』、
1962年に東都書房というところから出たようでございます。
 
解説によりますと、雑誌連載があったそうでございますが、
何に掲載されたかは分かりませんでした。
 
 映画化は、『殺人狂時代』(機会に恵まれず、見てはおりません)。
 解説にもございますように岡本喜八監督の作品でございますが、
原作とはかけ離れたものみたいですな。
 
 タイトルの「なめくじに聞いてみろ」は
決めぜりふ的に用いられる言葉でございますが、
作品を言い表しているものではございません。
(でも、作品作者の雰囲気は表わしているのかも?)

 
 
 主人公桔梗信治桔梗信輔は、科学者でございまして、
ナチスドイツで毒ガスの開発などに関わっていた(p.156)お人でございます。
その後出羽山中に疎開した後も、様々な殺人技術を考案し、
その突飛な方法を殺し屋に通信教授していたのだとか。
 
 その負の遺産をそそぐべく、信治さんは、
父親の弟子、孫弟子というべき人物と、
1人1人と対決していくわけでございますな。
 
 なかなかいい設定。
  
 なのはさておき、ですから活劇ものと申しましても、
対戦格闘ゲームのように1対1の対決が中心となるのでございます。
 
 忍者もの剣豪小説なんかに見られる形でございますな。
 
 こうした展開の場合、重要なのは敵のキャラクター。
 
その性格や生い立ちが独特で、
その攻撃方法が特異であればあるほど、
読者の興味を引くというものでございます。
 
『なめくじに聞いてみろ』の場合、
敵の生い立ちはそれほど深く書かれていないものの、
キャラクターの外見や職業、それに主人公との対決の場所は、
注意深く分けて書かれております。
もちろん、その得物と戦い方も。
 
 彼ら彼女らの使う武器は、トランプや傘といった日常品であったり、
コブラの前身かと思われる仕込み銃であったり、独特なのでございますな。
  
 暗殺を目的としたそれらの武器は、スパイの秘密装備的でございまして、
その戦いもスパイ物的でございます。
 
 狭い室内でばかり戦っているわけではございませんが、
007『ロシアより愛を込めて』で電車の個室内にて、
アタッシュケースをめぐる攻防がございましょう。
 
 あのような戦いが手を変え品を変え発生するわけでございます。
 
 
 そうしたくせもの揃いの難敵に対決を挑む主人公の桔梗信治は、
交差点を斜めにわたる世間知らずのひょうひょうとした田舎者
として登場いたしますが、それはお芝居であったのか、
それとも書いているうちに性格が変わったか(雑誌連載だそうでございますし)、
次第に達人レベルの身体能力と洒落たセリフをこなす、
スパイ物の主人公らしい人物に変わってまいります。

 セリフは当時の日常でもなくて、外国のスパイ物でもなくて、
 邦画のアクションものの感じかな。

 ただね。いかんせん古い
 例えば、今なら使い捨てカイロでも使うところで、
蓄熱式の電熱あんかなんて言葉が出て来たり。
 紙のこよりを作るシーンでは、ティッシュではなくて鼻紙だったり。
 ちょっとおしゃれ度が落ちてしまうというものでございます。
 
 ただ、もちろん、そういうのは善し悪しでございますな。
 設定のいくつかは、今の時代では出来ない、もしくは書けないものでございますし。
 
 そうでなくても、この時代だからこその味もあるというものでございます。
 
 携帯電話がないのも、そうしたものの1つだと思いますが、
この作品ではそれが足かせになる場面はなかったように存じます。
 
 まぁね、そこら辺は書き方、話の進め方というものでございましょう。
 
 
 さて。
 1人1人と対決していく形式でございますから、
最後には圧倒的強さのラスボス登場、と相成ってほしいものでございますが、
そこら辺の欲求は満たしてくれませんでした。
 
 見ていない「殺人狂時代」では、溝呂木博士がその役目を担っているのかな? 
そうでございましたら、やはり、この作品にはラスボス的要素が欲しいものでございます。
 
 おそらく映画では、その辺考慮されたのでございましょう。
 
 
 でも都筑先生は、それをなさいませんでした。
 
 代わりに用意したのが、実は、という推理的要素
 そこらへん、推理作家の都筑先生らしいと申せましょう。
 
 でも、ラスボスと対決する盛り上がりは欲しかったなぁ。
 

拍手[0回]

(上に書き切れなかったので、こっちで) 
 
『涙香迷宮』
竹本健治(講談社/2016/3)
 
読了。
 
旅館で起こった殺人事件を皮切りに、
前半は黒岩涙香の多才ぶりを、
涙香の隠れ屋敷に場所を移してからは、
創作いろは歌の暗号解明を中心に、連珠の解法などが試みられる。
 
 50以上の創作いろは歌を用意したりするなど、非常に労作ではあるものの、
 羅列的で冗長にさえ感じられる。
 
 タイトルが『涙香迷宮』である以上、
読む方としては、涙香が密接に関わってきて欲しいところだが、その点では薄い。
 
 その事跡については詳しく書かれているものの、それも並べただけであり、
創作いろはや連珠を導き出すための、マクラになってしまっている。
 
 作者がそういうものをやりたかったことは、非常によく分かるのだが……。
 
  
 
 
 ☆ それにしても……。
  黒岩涙香先生が『鉄仮面』や『噫無情』、『巌窟王』などの翻案小説の作者であり、
 「萬朝報」社長だったことは知っておりましたが、
  連珠のルールを制定したり、競技カルタを創始したり、
  都々逸にも関わっていたり……。
 「萬朝報」では宝探しも企画し、自分で宝を隠していたというのだから、
  ほんとうにそういうことが好きだったのでございますなぁ。
 
☆ ところで、
  黒岩涙香が、「黒い悪い子」に読めるっていうのは、
  西尾維新先生が『化物語』でお書きになっているそうで。
  その程度のことは、まぁ思いつくよなぁ~。

拍手[0回]

綾辻行人/有栖川有栖 監修(2003/5 講談社)


図書館で借りた一冊。

内容は
「新本格誕生15周年を記念して行われた謎解きイベント&トークショーをここに完全再現」
(裏表紙より)とのことだ。
 

 なぜ借りたかといえば、もちろんこのイベントの内容。
 実際どういうものだったのだろう? と興味がわいたのだ。

 会場で事件が起こって……、というようなものではないにしろ、
舞台の各部屋を歩き回って情報を探し、
それらをヒントに犯人とその証拠を掴(つか)んでいく
というようなものかと思ったのだが、そうではないらしい。
 そうしたライブRPGのような演劇的なものではないようだ。

 簡単に言えば、ファンと作家の交流イベントに、
推理ゲームが組み込まれているというべきか――。
 交流イベントと推理イベントの比重は同等、
というか、混ざりあっている感じだ。

 具体的な流れとしては、

 1日目

1) 事件のあらましが、ビデオレターとして映像で流される。

2) 船内に掲示される情報や、配られるヒントを入手し、
   事件の謎を推理。

3) 綾辻行人先生と有栖川有栖先生の部屋に分かれて情報入手。
   (両方には行けない)

4) 「逮捕状」(推理した結果を書く紙)を入手する。

 2日目

1) 推理した結果を「逮捕状」に書いて提出。

2) 解決編、
   表彰式

 で、その合間に作家の方々のトークショーがあり、
 そのほかの時間は、推理にいそしんだり、
作家の方々との交流の時間
(サインもらったり、お酒飲んだり、カードゲームをやったり、麻雀したり?)
……という感じらしい。

 1日目の(3)は、どちらかの先生を選ぶということで選択分岐になっているが、
どちらを選んでも、有利不利はない。
 ちよっとつまらなくもあるが、そのあたりは公平にということなのだろう。
 まぁ、ハプニングで、どちらかの先生がぽろっと重要なヒントを言ってしまう、
という可能性もなきにしもあらずの場面ではあるが、
さすがにそのようなことはなかったようだ。

 即興劇的な予測不可能なイベントがないので、ライブRPGに比べて、
運営的にはスムースなのだろうな、とおもう。

 共通の趣味の人が集まるのは、それだけでも楽しいことではあるし――。

 事件という共通の話題があれば、それがきっかけとなって話も弾むことだろう。

 でも……、やはり期待してしまうよね。
 船上とか閉ざされた空間で推理イベントとなると、ライブ感覚のあるやつを。

 さて、
 この回の「ミステリーイベント」
 最優秀名探偵賞、つまり、もっとも正解に近い答えを出した方は2人
――といっても夫婦だというので、実際には1つの解答といっていいだろう。

 多数の参加者の中で、ただ1つの解答のみが正解というのは、
まさに絶妙のバランスというべきではないだろうか。

 有栖川先生が「難しくないから」(p.20)とおっしゃっているように、
解決編を見れば、特に難しい部分というのはない。

 密室トリックも王道なものだし、
犯人も、正解者が気づいた点に気がついて、
それがどんな意味かを考えていけば、解ける問題だと思う。

(思う、というのは、はなッから推理する気なしに読んでいたので、
いまひとつどうかわからないのだ)

 ところで、このご夫婦、パソコン通信時代のネットのゲームで知り合ったという。
 もしかすると、
非電源ネットゲームがインターネット上のネットゲームに移行したころの
ネットゲームをやっていたのだろうか?

 あと、もう一つちょっとした疑問。
 このイベント、東京と神戸で2ヵ月半ほど期間を離してやっているが、
情報が漏れてしまうことはなかったのだろうか?
 まぁ、根本にかかかわることだから、そこらへんは上手くやっているのだろう。
問題をさしかえたということもあり得るし――。
 


(イベントデータ:p.6より)

 新本格誕生15周年記念イベント

新本格 ミステリフェスティバル

(東京)
日程 平成14年10月10日~11日
場所 客船 ふじ丸

出演  綾辻行人  有栖川有栖
     山口雅也  竹本健治
     二階堂黎人 倉知淳

ゲスト 喜国雅彦  ヒロ・サカイ

司会  九十九一

(神戸)

日程 平成14年12月28日~29日
場所 ホテルオークラ神戸

出演  綾辻行人   有栖川有栖
     法月綸太郎  我孫子武丸
     麻耶雄嵩   太田忠司
     西澤保彦

ゲスト 喜国雅彦  ヒロ・サカイ

司会  九十九一


ミステリ作家殺人事件「隠されたメッセージ]

キャスト 九十九一 渡部雄作   貴山侑哉
      西岡隆浩 岡部たかし  古賀清
      岩谷健司 渡部友一郎  金谷真由美

  監修:綾辻行人 有栖川有栖

  企画・構成・脚本:城島和加乃

     脚色・構成 :かとうだい

脚本・映像監督・演出:青柳省吾

ツールテザイン    :五本木進 浜田親彦

企画制作        :イーピン企画

協力           :講談社

拍手[0回]

法月綸太郎:著

講談社ノベルス『本格ミステリ09 2009年本格短編ベスト・セレクション』
(本格ミステリ作家クラブ:編)所収
2009/06/04



 上記の本を本屋さんでぱらぱらっとめくっておりましたところ、
 その巻頭の作品

「しらみつぶしの時計」
(法月綸太郎)が、

なんと2人称小説なのですな。

 2人称といえばゲームブック

というわけで、期待して
分岐がないかとさらにぱらぱらとめくってみたのですが……。

 残念ながらございませんでした。

 いや、期待したのには、少々理由があったのでございますよ。

 この作品、

すべて異なる時を刻む1440個の時計
その中から唯一正確な時計を探し出せ――。

という内容で、

 ○○:○○

 という感じで(正確には少し違いますが)、
時刻をあらわす表記がところどころで出てくるわけでございますよ。

 ですから、それでパラグラフジャンプがあるかな、
と思ったのでございますが、
さすがにそういうのはございませんでしたな。

 法月綸太郎先生はゲームブックを書いていないので、
そういうことを期待してしまうほうがムチャということは重々承知でございますが、
無理だと思いつつ一応調べてみるわけでございますよ、
ゲームブックファンといたしましては。

 わかりますでしょ!

 ただ、そうしてぱらぱら~っとめくったのは、失敗でございました。

 そうやってめくっていったものでございますから、
最後の一文を読んでしまったのでございますな。

 そうしたら、それが答えだったというわけでございます。

 あと知恵で考えてみますれば、
提示されたこの謎は、一文一語で答えられるたぐいのものでございますな。

 答えだけ読めば、

 ああ、そういうことか。

 ですとか、

 な~んだ

 となったりいたしますが、
そこに至るまでの試行錯誤の過程が、作者の腕のみせどころ、というヤツでございますな。

(で、結末を読んで「ああ、そういうことか」とか「な~んだ」になったりするという)

 まあ、そういう内容の作品でございます。

ちなみにこの短編は、2008/7/23に祥伝社から出された、

『しらみつぶしの時計』

という単行本にも収められているようでございます。

 表題作ということから考えても、年間短編ベストの巻頭に収められたことから考えても、
やはりその最後の一文に持っていく過程が、見事だったということなのでございましょう。

拍手[0回]

カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 5 6
7 9 11 12 13
15 16 17 18 19 20
22 23 24 26 27
28 29 30
プロフィール
HN:
道化の真実
性別:
男性
趣味:
ゲームブック
最新CM
[11/01 道化の真実]
[10/26 ポール・ブリッツ]
[06/01 道化の真実]
[05/29 ポール・ブリッツ]
[05/06 道化の真実]
最新TB
ブログ内検索
バーコード
P R
フリーエリア
<
忍者ブログ [PR]