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2024/04/27 ゴールデンウイーク、なるものが存在するそうでございますね。インタビューで10連休などと答えていらっしゃる方がおられました。いいなぁ。うらやましいなぁ。むしろゴールデンウィークは死にそうに忙しくて休むひま無いですって人にインタビューすればいいのに。でもニュースっていうのは珍しいから報道する価値があるんですよね。ゴールデンウイークは忙しいのが当然。休みっていう人は、きっと珍しいのでござましょう。……うらやましいなぁ。 ..
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『ゼッタイ! 芥川賞宣言ゼッタイ芥川賞宣言
 ──新感覚文豪ゲームブック』
佐川恭一:著
(中央公論新社/2023/9)
  
 この作品、
ゲームブックで検索すると
よく引っかかっておりましたものの、
全くノーチェックでございました。
 
 だってねぇ、タイトルが、小説投稿サイトの
いつまでたっても書き上がらない作品──
いや、それ以下の何かみたいなんでございますもの。
 
 それがまさか、ちゃんと流通する紙の本だったとは!!
 本屋さんでびっくりいたしましたよ。
 
 まぁ、狙ってのタイトルなのでございましょう。
ですが、その狙いがわたくしには逆に響いたと、
そういうことでございます。
 
 にしてもこのタイトルでございますからな、買うのをためらいました。
 とりあえず、ゲームブックだから仕方ないと、中を見ずに表紙だけで買ってきた次第。
 
 で、プレイしてみたのでございますが……。
 うーん、やっぱり波長合わないなぁ。
 そんなわけで今回は、トンチンカンな酷評になると思われます。
 
 無駄足を踏ませてしまって申し訳ございません。
 そっ閉じしてくださいませ


 パラグラフ数、プロローグ+44。
 全220ページほどで45パラグラフでございますから、
単純計算で1パラグラフは5ページに足りないぐらい
ゲームブックとしては長いですな。
 数値判定はございません。
 移動型は拡散型。
 
 フローチャートといたしましては、こんな感じでございます・
 
ゼッタイ芥川賞宣言フローチャート
 

 
 夢オチのようなところ以外でのループはなく
非常にシンプルな形のパラグラフ選択型小説でございます。
 分岐する物語と聞いて、真っ先に思い描く形ですな。
 バンタム社のものを翻訳した
講談社のアドベンチャーブックスシリーズがこの形で、
形式的には新感覚どころか
もっとも古い形と申してよろしゅうございましょう。
 
 

 内容は、タイトルから受ける印象とは違います
 文学的な話や、
文学新人賞や芥川賞を獲るための技術などはあまり書いておりませんでして、
 文学界とその周辺の狂騒
──と申しますか、文学賞を目指した主人公のその後を
戯画的に描いた作品でございます。
 
 主人公は「」。ですが、
プレイヤーの分身でもプレイヤーキャラクターというわけでもございません
 
 無色透明ではなくて、その性格や家庭環境などが、
作者によって決められております。
 
 主人公が芥川賞を目指すのは、女の子にもてるため
 
 本は買うことをしないらしく、家の本棚にあるのは、
父が買った『サラリーマン金太郎』『課長 島耕作』『ナニワ金融道』
『右曲がりのダンディー』といったマンガとビジネス書、
小説はと申しますと、とあるアダルトゲーム原作の3冊とフランス書院の1冊のみ……、
 
「君」の性格も、それによってつちかわれたものと思ってください。
 
 しかも、本を読むのが苦手。
そんなやつが、原稿用紙200枚を書いて
大きな文学賞に応募したら一次選考を通過したというのでございますから、
その後の展開も戯画的なものであることは、想像に難くございませんでしょう。
 
 文学的なこともほとんど出てはまいりません。
 
 不勉強なことに
「君」の読んだことのある作品をことごとく読んだことのないわたくしなどは、
まったく主人公に共感できませんでした。
 
 なので思うのでございますが、
「君」という人称代名詞が合わないんですよね。
 
 このように我が強く癖も強いキャラクターならば、
おれ」あたりがいいのではございませんでしょうか。
 筒井康隆先生のような感じで。
 
 二人称なら「お前」でございますな。
「お前」という言葉には、上から目線で評価する印象がございます。

 ですからですね、特に呼びかけるキャラクターを決めなくても
「グレイルクエスト」シリーズのマーリンみたいな感じになると思われます。
 叱ったり、けなしたり「よかったな」と苦い口調で口ごもる、
みたいな行動に対する評価を与えるような感じでございますな。
 
 そのほうが、無軌道なことをしている主人公の行動を
「君」と普通に描写されるよりも、わたくしでしたら納得できると思います。
  
 あるいは三人称でございますな。
 三人称で俯瞰的に主人公を眺めるのなら、問題は起こらないと思います。
 ただ、それは作者の意図とは違う気がいたします。
  
 内容はでございますねぇ。
『バンカーズクエスト』の裏ルートでございますとか。
『ザ・政治パワーゲーム―めざせ永田町二丁目三番地』
『大江戸疑惑人走る』が近いかな。
 あとは『天国か地獄か─恋と遊ぶゲーム─』あたりでございますか。
 
 「君」の読書歴が性格となって、
ちょっとヤバ目の人生に足を突っ込んだりするわけでございますな。
  
 結末をみますれば、
トゥルーエンドが芥川賞を獲って女の子と結婚、
エンドが芥川賞、
他に直木賞を獲ったり、
ノーベル文学賞を獲ったり、
ピューリッツァー賞獲ったり、
美人と小出版社を経営したり。
 
 そのあたりがいい方
(内容を読むとそれほどいい人生ではないものもございますが)。
 
 他には、マルチ商法でドナドナ、詐欺に遭う、ブラック企業で社畜、
ガテン系に、ドラム缶入り、死ぬまで書き続けるも報われず……、
など、多彩な将来が約束されております。
 
 感想といたしましては、
 正直わたくしはこの主人公について行けませんでした。 
 だって、まったく性格が好きになれないんですもの。
 オビには「共感性羞恥炸裂必至」なんて書かれてございますが、むしろ逆。
 行動に困惑すら覚えました。
 
 ゲームブックの主人公は無色透明の君であるべきだ、
などということは申しません。
 
 はっきりとした性格があれば、
その性格のために取らない行動(たとえば逃げる)を外して
無駄な選択を減らすということも可能でございましょう。
 
 理解できる性格ならば、その性格に
プレイヤー=読者が寄り添うことも可能でございましょう。
 
 ですが、この作品の主人公に対して、わたくしはそれができませんでした。
 加えて、物語が主人公の発言や行動でパラグラフ内で、
つまり選択肢が入らない部分でどんどん展開していくんですよね。
 
 それが、読者の選択によって物語が変わるという、
ゲームブックの根本と相反していて、
その意味でもわたくしには容れられないものでございました。
 
 ゼッタイ芥川賞宣言
 
 おそらくこういうのは、
コンピュータのノベルゲームのやり方なりでございましょうな。
 
 このような作品の場合、
天国か地獄か─恋と遊ぶゲーム─』のように、パラグラフ内の文章を短くし、
選択の場面を多くしていくほうがわたくしはいいと思うのでござますが、
作者としては小説としての展開を入れたかったということでございましょう。
 
 確かに選択を入れたら進まない方向に物語は進んでいると思いますが、
それがゲームブック性を失わせているのもまた事実。
わたくしといたしましては、でしたら工夫が何か必要な気がいたしますし、
もう少し選択を入れてもいいのでは、とも思います。
 
 
 この作品、芥川賞受賞作がどんなものかは書かれておりませんが、
もしかすると、実はこのゲームブックそのものが受賞作だった
というメタ構造を考えているのかも、とちょっと想像してしまいました。
 
 もしこの作品が芥川賞を獲れば、
輪をかけたメタ構造になって面白くはございますが……、
そんなことはまずございますまいなぁ。
 
 オビには羽田圭介氏推薦の推薦を細い二重線で消して当惑と書かれてございます。
 つまり、推薦するにあた……当惑したのでございましょうな。
 
* ちなみにということで、羽田先生の『成功者K』という作品を読み始めてみました。
 芥川賞受賞者、Kの姿を描いた作品にございます。
 テレビ局のギャラの話とかも出てきてまるで経験した事みたい。
 このあとフィクション味を増していくのでございましょうが。
 
 文章上手いね。読みやすい。
芥川賞と聞くと難解なのではと敬遠しておりましたけどそんなことございません。
そういえば「真夜中をさまようゲームブック」の
津村記久子先生の文章も読みやすかったなぁ。
 
 Kの心中も共感はそれほど出来ないもののわかりやすうございました。

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開き直った暴露系ラノベみたいな感じでしょうか
ご無沙汰しております。
古本を買う金がないので図書館でグレイルクエストの未プレイの後半4冊を借りて「ゾンビ塔」でシールを手に入れたりしておりましたが自分は元気です。幻し城の狡猾極まりないトリックに気がつくまで2時間も迷路の右半分ををさまよってしまったのは不覚だったなあ。
この本についてはなにかとXのTLに流れてくるので気にはなってましたがそういう話でしたか……。
図書館にあったらやってみようと思います。
なんかすがやみつる先生の「ザ・商社」みたいなゲームブックを思い出すのですが合ってますかねえ……。
ポール・ブリッツ 2023/10/26(Thu)23:01:50 編集
上で引用したページの感じのとおりでございます。  
 だいたい全篇そんな感じで話は進んでまいります。
 
 読んでいないので本文では書きませんでしたがこの作品、筒井康隆先生の『大いなる助走』を目指した作品だと思うのでございます。
 ですから文学界の内実を書いている面もございますが、それよりも登場人物に極端な性格の方が多ございまして、そのぶつかり合いによる狂騒のほうに作者の興味はあるように見受けられます。
 人称代名詞を「おれ」にした方がいいと思ったのもそのため。もっとも『大いなる助走』は一人称では無いみたいでございますが。
『大いなる助走』に比して優れているかどうかは、ご自身でご判断を。

☆ 『幻し城の怪迷路』はやはりあの、隣でなにかが起こっているにもかかわらず、そちらには行けない感覚がよろしいですよね。わたくしの場合、先にうっかり立ち読みで8巻のそのヒントが書かれているあたりを読んでしまっていたためにそれほどかからずに解けましたが、それでもその焦燥感は堪能いたしました。いや、1日かそれ以下ぐらいしか悩まなかったから傑作と思えるだけで、あそこで詰まっていたらそうとは思えなかったのかもしれませんが。
 原作ではどうなっているかと、以前紹介した Internet Archive で「日本語に翻訳する」して見てみたのでございますが、よく分かりませんでした。前書きの「秘密の扉-Secret Doors」というところを見ると、どうやら違う形式の謎、もしくは判定要素があるみたいでございますな。なんかサイコロをふるみたいなことが書かれているので、判定が含まれているのかも? いづれにせよ始まる前から秘密の扉があると明言している時点でサプライズがなく、その点で日本の方が良いと申せると存じます。
 もしかすると、向こうでも秘密の扉の部分が難しすぎとのお手紙があり、後の版でこのような文章がつけ足されたのもしれませんが。
 
 なお、Internet Archive のこの作品をご覧になりたいのでしたら、「日本語のページを検索」を「すべての言語」にして Gamebook: GrailQuest 7 - Tomb of Nightmares あたりで検索すると、何番目かに出てくると思います。
道化の真実 2023/11/01(Wed)13:16:42 編集
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