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2024/04/27 ゴールデンウイーク、なるものが存在するそうでございますね。インタビューで10連休などと答えていらっしゃる方がおられました。いいなぁ。うらやましいなぁ。むしろゴールデンウィークは死にそうに忙しくて休むひま無いですって人にインタビューすればいいのに。でもニュースっていうのは珍しいから報道する価値があるんですよね。ゴールデンウイークは忙しいのが当然。休みっていう人は、きっと珍しいのでござましょう。……うらやましいなぁ。 ..
『人名の世界地図』人名の世界地図
21世紀研究会編
(
文春新書/2021/11)
 

以前「ネーミング辞典」なるものが
話題となりましたよね。
ある単語の訳を十数カ国語にわたり
横断して参照できるご本でございます。

それを見比べて、雰囲気に合った言葉を作ろうという
主旨の辞典でございますな。
 
TRPGの命名表などもヒントになったのかもしれませんが、
このアイデアは1つの発明でございますな。
 
ただ、とは申せ 
正直わたくしは、あまり使っておりません。
 
いや、そもそも
そういう名称が必要になるまでものが書けていないという
悲しい理由なのでございますが。
 
そうではなくて、単語だけではもの足りない、
もう一歩人名らしいネーミングをしたいという方には、
今回紹介する本が参考になるのではないかと思います。
 
特に巻末の大索引がすばらしい
欧米・ロシア・アラブ・インドという風に分けて、
各地方によくある姓名と、その語源、意味について書かれております。
  
それがただ読んでいるだけでも楽しい。
例えばヒトラーは「製塩所の監督」、
チャンドラーは「ろうそく職人」、
フェラーリは「鍛冶屋」なんだそう。
  
読んでおりますと、種族や民族によって、
名字の付け方の系統を変えたくなってきたりいたします。
  
たとえば、宗教国家でしたら神や聖人の名前に何かつけるですとか、
商業国家でしたら職業が名字になるですとかね。
  
あるいは語のどこかに何かつくとか、
濁音は避けるとか、そういうことで種族の違いなどを明確にできるかもしれません。
  
そういうことのヒントになりそうなのがこのご本でございます。
  
大索引のさらに後ろには、本文も含めた索引も充実しております。
  
 わたくしもパラパラッとめくっている程度ですが、けっこう楽しんでおります。
 

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(上で書こうと思ったのですが、長くなってしまったのでこちらへ
 この頃こういうの多いなぁ)



数日前、NHK-Bs3で「世界サブカルチャー史」1950-60年代、1960-70年代を見ました。
 
・アメリカは第二次大戦後、安定的な経済の高度成長で、
 保守的な中流層が大半を占めるようになる。
 頼もしい父親と優しい主婦としての母親という家族像が理想とされ、
 それが当時のホームコメディーにも現われている。
 
・一方、経済の安定はベビーブームを呼び、
 そうして生まれた子供たちが10代となる1950-1960年代には
 一つの文化層を形成するようになった。
 ティーンエイジャーの出現である。
 
 それまでの主人公は大人──社会人であったが、
 『理由なき反抗』を皮切りに、この世代を主人公にした作品が創られるようになった。
 

・保守的な親世代に反抗し、彼らは新しい文化を創っていくことになる。
 
 
・1960-70年代は、理想のアメリカ像にほころびが出始める。
 黒人差別、男女の不平等、政治的腐敗も明らかになる。
 ベトナム戦争が終了しその意味が取りざたされる。
 経済も不安定になり失業者が増加する。
 50年代に描かれていた理想の家族像は、
 収入を担っていた「たのもしい」父親が、職を失い、権威を失うことで崩壊する。
  
 
・1970年代後半は、『スターウォーズ』のような
 現実とかけ離れた夢に逃げ込むような作品が創られる。
  
 
 かなりはしょりましたが、大体こんな感じでございました。
 
 50年代が保守、60年代が反動、70年代が混迷といったところでございましょうか。
 番組は、5-60年代はまとまっておりましたが、
 70年代は、少々とっ散らかっていたような印象も──。
 それは、70年代の方が新しい映画がいろいろと出てきたからかもしれません。

 
 印象的だったのは、やはり
60年代のカウンターカルチャーがベビーブームを起としているところでございますな。
 
 何か文化の革新と申しますと、
その時代の芸術家とか思想家ばかりに注目が集まり、
彼らが世界を動かしてきたように語られたりもいたしますが、
そこには時代の趨勢、大量の若者が発生し、
その前の世代と対抗できるような発言力を持ったということも
重要だということでございます。
 
 今の時代、そうした大きな新しい世代というのは出て来そうにございません。
 その分反動的な動きもなさそうでございますが。
 
 ……
 
 もし新しい世代を形成するものがあるとすれば、
やはり、コンピュータネットワークの中なのかなぁ。
 


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『[ヴィジュアル版]中世ヨーロッパ 城郭・築城歴史百科』
城郭・築城
チャールズ・フィリップス:著
大橋竜太:監修
井上廣美:訳
(原書房/2022/3)
 

今日4月6日の日だそうでございます。
どうしてそうなのかは存じませんが。
 
 そこで、というわけではございませんが、
偶然買ってきたので紹介しておきましょう。
 
 
 ファンタジーRPGが好きなら、西洋の城の構造とか内部に興味ございますよね。
 そのためか、西洋の城についての本はたくさん出ております。
 が、なかなかこれだというものに出会えません。
  
 写真集は、様子はわかるものの、位置関係が分りにくかったり、
表向きの部屋しか載せていなかったり。
 
 専門書の類いですと、構造が描かれていても、
写真が白黒だったり、図版が線画だったりして、わかりにくかったりいたします。
 
 そんな中本書は、カラー写真が数多く入れられていて、
わたくしが目にした中では割と分りやすいように存じます。
 
 
 本書の核となりますのは、ゲドロン城(château de Guédelon)
フランスはブルゴーニュで
まるまる一つの城を作ろうというプロジェクトにございます。
 
 ゼロから
 
 もうホントに、城主の設定から始めております(p.26)。
 これが細かい。
 
 しかも十三世紀当時の技術と道具だけで。
(ただし、ブレーキやロープなど、
 安全面で必要な最低限のものだけは使っているようでございます)
  
 材料も中世の運搬事情を考慮して
半径五キロ以内で調達できるもののみというこだわりよう。
 
 中世に同規模の城を建てようとすれば、12年~15年で完成するようですが、
 この築城では1997年の5月から20年(執筆時)かかってまだ完成しないそうな。
 
中世のように何千人もの労力を動員しているわけでもなく作業員は70人ほど。
失われた技術を再現するための考証、研究が必要でございますし、
作業時間の半分以上を一般観光客に対する説明に充てているなどで、
作業は着々と遅れているのだそうでございます。
 
 一応2025年ごろ完成とございましたが、
実験考古学の現場としての意味はその後も続くことでございましょう。

 
 とにかく色々なものを作っております。
城郭・築城
 タイルやモルタル、釘といった
基本的なものはもちろんでございますが、
かごや食器、スカーフといった日用品、
パンなど食料、硬貨も。
 城のまわりには水車小屋や菜園、
それに食器を焼く窯や職人の小屋など小さな村まで。
 
 もちろん、石を整形し、木を伐りだし、
当時使われたようなウィンチやクレーンで
それらを持ち上げ組み上げて
城を築きあげていくさまも。
 
 多数の写真と文章で
それらを解説しているわけでございますが、
とにかくその写真を眺めているだけで
楽しいものでございます。
 
 あっ、そうそう。
 この書にはもちろんこのゲドロン城のことだけが載っているのではございません。
 
 中世ヨーロッパ 城郭・築城歴史百科というタイトルでございますからな。
 
 ほかのお城の図版も多く取り入れまして、
立体的に中世の城とその暮らしを説明しているのでございます。
 
 巻末には、用語集や索引もございます。
 
 中世の城の暮らしについて興味がございましたら、
パラパラっと紐解いてみてはいかがでございましょうか。
 
 ちなみに、このドロンボー一味の女ボスみたいな名前のお城について
お知りになりたいのであれば、
検索すればガイドしているサイトとか動画などが見つかると思います。

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NHKスペシャル 新型コロナウィルス全論文解読
たまたま、後半だけ見ることができました。
 面白かったので、ちょっと紹介しておきますね。
 
 もう少しちゃんと知りたい方は、
今なら多分カギでかこったタイトルで検索すると出てくると思いますので、
答あわせをしてください。
 (だいたいは合っていると想いますが、雑にとったメモを参考にしているので、
  細かい間違いはあるかも、です)
  
NHKの会員登録とかしていると、オンデマンドか何かで視れるのかな? 
登録していないので、はっきりとしたことは申せませんが。
 
 というわけで、わたくしが興味を持ったのは、このあたりでございました。
 
 

☆ 新型コロナウィルスによる東アジア人の死亡率が低いのは
  それ以前のコロナウィルス(風邪)にかかったときに
  免疫が出来ているためではないか、という説があるそうだ。
 
 マスクは、
  感染者からの飛沫を抑え、感染拡大を防止する効果のみ期待されていたが、
  マスク着用者の感染予防にも効果があるかもしれないらしい。
  マスクをしていれば感染しても無症状かごく軽い症状であることが多いそうだ。
  マスクを着用すればそれがない場合よりも、
  体内に一度にウィルスが入り込む量は少ない。
  その少ないウィルスに対してなら、免疫は対抗できる。
  その際抗体が出来るため、
  感染したとしても症状は軽く抑えられるのではないかということだ。
 
 新型コロナウィルスは他の風邪とは違い、
  治った後も全身にさまざまな症状が残る場合がある。
  これは他のウィルスとは違い、全身にあるACE2という突起にくっつき、
  そこから侵入、バリアとなる細胞を破壊するかららしい。
  破壊された場所からはその後、ウィルスや異物が侵入し、
  炎症などさまざまな症状を引き起こすのだそうだ。
  その症状がウィルスによるものか免疫によるものかは分からない。
  そのような症状は比較的若く(平均44歳)、女性に多いので、
  免疫の過剰反応ということも考えられるのだそうだ。
  免疫となると、若いから体力があるから大丈夫、
  というということでもなくなってくる。
  むしろ免疫力が高い方が危険ということもありうる。
 
 コロナ予防には加湿器も有効なようだ。
  加湿することで喉の繊毛が活性化、
  ウィルスを体外に追い出すのに効果的なようだ。
  また、呼気や空気中に含まれるウィルスも滞空時間が短くなるために減少する。
  湿度40~60%がいいようだ。
  それ以上だとカビが発生してしまうため、よくないらしい。
  また、空中にとどまるウィルスが少なくなるということは、
  下に落ちているということなので、
  テーブルや床などの消毒・清掃もあわせて重要だとのこと。
 
 マスクは鼻を冷やさないためにも重要とのこと。
  体温が37℃から33℃になることでウィルスは増大するそうだ。
  
 他にウィルス対策に有効と考えられているものに、
  低濃度のオゾンガス波長222ナノメートルの紫外線などが紹介されていた。
  特に222nmの紫外線人体にも害を及ぼさず
  コロナウィルスを10秒で9割無害化できると
  近ごろ注目されているらしい。
  ただ、個人向けの製品はない模様。
  今後、病院や公共施設などさまざまなところに取り付けられるのだろう。
 
 とはいえ、やはり三密を避け、マスク着用、うがい手洗いの基本が大事とのこと。
  まぁ、それはそうだろう。
 
 
         ☆     ☆     ☆
 
 
  新型コロナウィルスは、全身のいずこかに何ヶ月も後遺症状を残すところが、
  特に恐ろしゅうございますな。
 
  というわけで、
  地球温暖化で昔ほどには寒くなっていないような気もいたしますが、
  これから冬本番にむかって、皆々さま、
  インフルエンザや風邪、コロナウィルスなどなど、十分お気おつけなさいませ。
 

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(タイトル下に書こうと思ったのですが、長くなったのでこちらへ)

NHKスペシャル「東京裁判 Tokyo Trial」見てしまった。
東京裁判の内実を明らかにするドキュメンタリーフィクションとして
の意義があるのだろうけれども、それ以上にドラマとして面白い。
  
 まず、インドのバル判事が「平和に対する罪」と「人道に対する罪」について、
この法律は事後法なので適用するのは間違っている、
それ以前からあった「残虐行為に対する罪」のみ適用すべきだと主張。
会議は混乱を極める。
 
 ニュルンベルク裁判で決定したナチスドイツの判決を
正当なものとしたいヨーロッパ勢。
 ヨーロッパ主導に疑念を抱く植民地経験のある東南アジア勢。
さまざまな立場とキャラクターが絡み合い、物語は二転三転をしていく……。
 
 単に人を裁くのだったら、これほどまでに混迷することはなかったろう。
そうではなく、法律が戦争をどう裁くか、どう向き合うか。
あるかもしれない次の大戦を未然に防ぐために、法は何が出来るのか……。
 そこまで踏み込んだからこそ、結論までこれほど長引いた。
  
 結果、判決は十一ヶ国中七ヶ国賛成の多数決によって決まったものの、
一つの同意意見と四つの反対意見書が提出される。
それほどこの裁判は重要かつ論の割れる問題を含んでおり、
それに対して各判事たちが真摯に取り組んでいたということだ。
 
 裁判に関わる判事たちをはじめ、登場人物は個性的で配置もバランスが取れている。
 彼らの葛藤が、ドラマとして実に活きていた。
 

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7月7日タイトル下に書いた
第一次世界大戦ことを日本ではなんと言った」のソースがこれ。
たまたまうちで見つけました。
 
『中學百科寶典』大日本國民中學會:編
(國民書院/明治45年6月初版/大正10年11月30版)
 
中學百科寶典
 

 大正十年は、西暦で申しますれば1921年。
 
 言ってみれば、当時の中学の教科書ガイドでございますな。
それを総合的に1冊にまとめたようなもの。

目次のうち、
 
地文學と申すのは、天文と気象、
圖畫は図画、
三角は三角関数
 
について書かれております。
 
 日本史のはじめが、高皇産霊尊と神皇産霊尊の国産みから始まっていたり、
修身に皇位皇室や至誠奉公などという項目があるほかは、けっこうまとも。
世界史や理科、数学や英語など、まんべんなく教えられていたようでございます。
 
 富国強兵・和魂洋才の時代でございますからな。
とにかく外国の技術を把握したり、世界情勢を理解するために、
外国と同じレベルの教養が求められていたのでございましょう。
  
 修身に関しましても、
第二次大戦中の極端な軍国調をイメージしていたのですが、
そこまでではございませんでした。
体育会系ではございますけれどね。
 
 国際性の重要が解かれていたり、
共同の精神とともに、自主独立の精神が尊重されていたりしております。
 
 まぁ、読み方にもよりましょうが。
 
 それにしても、
「大正ロマン」とか「大正モダン」と呼ばれる、ハイカラで華やかさと、
「大日本帝国」の語感から印象される、軍国調。
 
 まさに「和魂洋才」。
 都会と地方でも違ったでしょうし、
モザイク的だったり対立的だったりすることもございましょう。
 
 個人的には、ちょっとわかりにくい時代でございます。 
 
 
 

 さて本論。
 
日獨戰争」に関する記事はこれ。
 
日獨戰争

「日本歴史」の最後のページに書かれておりますのが
「日獨戰争」に関することにございます。
 中学の教科書(ガイド)がそう言っているのですから、
こと日本ではこれが一般的だったのではないかと思われます。
 何しろ当事者性もございますし。
 
 
 と、結論づけようと思っていたのでございますが、
「西洋史」のほうでは「世界大戦役」なる文字が。
また、「日獨戰争」のところにも「欧州大戦乱」なる言葉がございますかな。
となると、場合に応じて使い分けていたのでございましょう。
 
世界大戦役
 
 
 

 ついでですので、「日本地理」のところから「台湾」、「朝鮮」あたりを。
 
 地理の教科書に載っているようなことなのでたいしたことは書かれてはおりません。
興味のある方限定でございますな。
 
 クトゥルフとかやる人には参考になるのかなあ?
 
台湾・朝鮮   

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『話術』
徳川夢声
(新潮文庫/平成三十年四月)

戦後すぐに出版された話し方に関する本で、
平成15年の版を底本としているようでございます。
 作者の徳川夢声先生のことは、名前ぐらいは知っている人も多ございましょう。
 わたくしもそのクチでございまして、
どんなことを書いていらっしゃるのだろう、という興味から手に取った次第でございます。
 最後に久米宏さんが解説と申しますか、
エッセイみたいなものを書いているのも興味を引かれたところでございます。
 
 読んでみますと、さすがに語り口がうまい
それに構成も考えられている
ユーモアを差しはさみながらよどみなく流れるように、説を進めておられます。
 
 特に感心したのは、演芸の歴史についてお書きになっているところでございますな。
 時代とか人名とかがたくさん出てきて、読みづらくなるのが通例でございますが、
すんなりと知らず知らずうちにその話が進んでいく。

 ホントはこうした構成についてのアドバイスを読みたかったところでございますが、
そういうことはあまり書いてはございません。

 話術の本でございますから、声の出し方であるとか、
場にあわせた話し方であるとか、まあ、そういうことが書いてあるわけでございます。
 
 オビにも書かれております、座談十五戒など、わたくしには耳が痛いところ。
  (オビだけ読んで、わかったような気になってはいけませんよ)
 これが一つや二つでございましたらまだ個性でございますが、
半分以上が気になってまいりますと……。
 まぁ、そうは申しましても、今さら変えるわけにもまいりません。
 しかたがないとあきらめてもらうしかないようでございます。
 
「この本を読むと、話し方が上達する。
 それは恐らく間違いない。間違いなく少しは上達するはずだ」
 
 巻末の久米宏さんもそう書いてございますが、そのとおりでございましょう。
 
 話し方などは、結局は場数――経験が物をいうものだと存じますが、
ここに書かれていることを心に置いていれば、
経験点が1~2割増しぐらいにはなるのではないかと思う次第でございます。
 (余談でございますが、そういうRPGってあってもいいと思うんですよね。
  前もって練習したり、本を読んだりして時間を費やしていたら、
  経験値がそうではないときよりも何割増しかになるような……)。
 
 ただ問題なのは、読みやすすぎて頭の上を通り過ぎてしまうような気も……。
 何度も読むことが必要でございましょう。
  
 TRPGの、特にゲームマスターなどをやっている方には、
 参考になる部分もあると存じます。

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『暗黒日記』1942-1945

清沢洌(きよさわきよし)著
山本義彦編

岩波文庫(1990/7)



 日記にも関わらず、
この本には、クライマックスとでもいうべきものがある。

 それは、昭和20年4月15日の日記だ。

 3月10日の東京大空襲から、
著者が空襲に遭うこの日の記事への流れは、
描写が的確なこともあり、
構築された小説のようでさえある。

 それに、この日作者が体験したことが、奇跡。
 まさに小説のクライマックスのようなのだ。

 作者は空襲に遭ったと書いたが、それでかすり傷一つ負っていない。
家も焼けることなく残る。
それらはまさに偶然なくしてはありえなかったことだが、
作者の必死の行動と、その奇跡のような偶然、
そしてそのときの作者の心の動きが、まさに小説的なのだ。

 そのような奇跡によって、日記も作者も、空襲の被害から免れたのであるが、
残念なことにこの日記は、5月5日で終わっている。

 作者は、昭和20年5月21日、肺炎がもとで55歳で急逝したのだそうだ。
 戦争が直接の原因ではない(間接的にはあるだろうが)あたり、何か、天を仰ぎたくなる。

 広島・長崎の原爆投下、終戦、戦後……。
 ソれらを、作者はどう見たのだろうか。

(ちなみに、昭和18年8月17日の日記では、
「今回の戦争の後に、予は日本に資本主義が興ると信ず」と書いている)

昭和20年1月1日の日記で彼は、
「僕は、文筆的余生を、国民の考え方転換のために棒げるであろう。」
と書いている。
 まことに惜しいことだ。

 その、昭和20年1月1日の日記から、最後に引用しておこう。
今、引用した直前の部分だ。

 他にも引用したいところがあるのだが、
キリがないし、時間もない。

 あとはご自身でお読みいただきたい。

 今回挙げなかったが、
名前ぐらいは聞いたことがあるけれど、
何をやったか知らない人などについても、
実名で上がっていて、そういう点でも面白い。

 というわけで、とにかく読んでもらいたい。


p.261

一月一日(月)
(……)
日本国民は、今、初めて「戦争」を経験している。戦争は文化の母だとか、「百年戦争」だとかいって戦争を讃美してきたのは長いことだった。僕が迫害されたのは「反戦主義」だという理由からであった。戦争は、そんなに遊山(ゆさん)に行くようなものなのか。それを今、彼らは味っているのだ。だが、それでも彼らが、ほんとに戦争に懲(こ)りるかどうかは疑問だ。結果はむしろ反対なのではないかと思う。彼らは第一、戦争は不可避なものだと考えている。第二に彼らは戦争の英雄的であることに酔う。第三に彼らに国際的知識がない。知識の欠乏は驚くべきものがある。
 当分は戦争を嫌う気持ちが起ろうから、その間に正しい教育をしなくてはならぬ。それから婦人の地位をあげることも必要だ。
 日本で最大の不自由は、国際問題において、対手(あいて)の立場を説明することができない一事だ。日本には自分の立場しかない。この心的態度をかえる教育をしなければ、日本は断じて世界一等国となることはできぬ。総ての問題はここから出発しなくてはならぬ。
 日本が、どうぞして健全に進歩するように――それが心から願望される。この国に生れ、この国に死に、子々孫々もまた同じ運命を辿(たど)るのだ。いままでのように、蛮力が国家を偉大にするというような考え方を捨て、明智のみがこの国を救うものであることをこの国民が覚るように――。「仇討ち思想」が、国民の再起の動力になるようではこの国民に見込みはない。

(……)

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1942-1945

清沢洌(きよさわきよし)著
山本義彦編

岩波文庫(1990/7)


 数年前の8月の中ごろのことだ。
 NHK第二ラジオの「朗読の時間」で、この作品の朗読をしていた。
 たまたまそれを聞き、その面白さにたちまち惹(ひ)かれ、その後本屋さんで探して購入した。

 原題を『戦争日記』という。
 題名どおり、1942-1945年という、
まさに太平洋戦争の最中(さなか)に、国内(東京と軽井沢だったか)で書かれた日記だ。

 著者の清沢洌(きよさわきよし)は、自由主義者(リベラリスト)
日米関係が専門の国際関係学者
 そんな人物だからこそ、
当時の政府の愚行がよく見えているし、それに対する批評も、歯に衣着せず容赦ない。
(当然ながら、これは非公開の日記という前提があってのことだ。日記の中にも、これが当局に見つかれば処分されてしまうだろうから、隠しておく旨のことが書かれている)

 戦争が終わったあかつきには彼は、
これをもとに日本現代史を書こうとしていたのだそうだ。
 そのため日記には、雑誌や新聞の切抜きが多数貼りつけられていて、
本書にもそれが活字に改められた形で収められている。
 それが日記を真に迫ったものにし、また当時の状況を知るうえで役に立っている。

 架空戦記ものには、日本が大勝利を収める話がでてくるが、
これを読んで思うのは、それはあり得ないな、ということだ。
 また、そんなことにならなくてよかったとも思う。

 官僚主義。政界と財界の癒着。
 イデオロギーと責任逃れ。
 国際感覚のなさ。
 国民を身分が下のものとしてみる政治家。
 精神論の横行。
 精神的な屈伸性のなさ(時に応じた対策というもののなさ)。
 新聞の偏向・嘘報道。
 官憲による暴行
    :
    :

 このような体制の中で住みたいとも思えない。
 戦争に勝っていれば、日本はますますこのような態度を強固なものになっていっただろう。


 一般的な生活についてもそうだ。

 モラルが低下し、泥棒が横行。
 電車の窓も割られているという。

 物資の不足ゆえかもしれないが、
挙国一致という言葉が、スローガンでしかないのがわかる。
 日本が勝っていれば?
 犯罪は減るかもしれないが、殺伐とした雰囲気は残るだろう。
 それに、負けた側の国には、このようなことが起こる可能性はあるのだ。
それが日本でないからいいというのは間違いだろう。

 支配下に置かれた国のことについてさらにいえば、
そこでの日本の軍人の態度だ。
 もちろんそれは、そこに派遣された軍の上官の性格によって決まるものだろう。
 だが、たとえば昭和18年8月17日(火)の日記に書かれているように、
炎天下での労働で死亡した一高(今の東大)学生のことが、賛美されていたりするのだ。
 外国でも同じことを住民に強制させて、よろこんで迎え入れられるとは思えない。
 それにたとえば、同年12月16日の日記。

p.120
国内においては神風連(じんぷうれん)的な右翼思想が流行する。外国に行くのはそういう連中に限られる
(中略)彼らは無知でありながら、恐ろしく自信がある。そこで大東亜諸国に行って、それ錬成だ、それ儀礼だという。こんな国民に彼らが推服する(うやまって服従する)ものではない。

 これも、よろこんで受け入れられることはなさそうだ。

 

 いずれにせよ、このような国が、世界に勝てる可能性はまずないだろう。
 国際状況もわからず、戦力比も考慮せず、
日本は神国であるといった精神論のみが横行するような状態では。
 しかも、当時の政府は、戦後経営について、何も考えていなかったようだ。
とにかく勝てばいいと思っていたのだろう。
 よくある話ではあるが。

 政界と財界の癒着ぶりについては、たとえば昭和19年9月21日の日記にある。

p.229
かつても書いたが、日本の最重要職業、会社、官吏は全部軍人で占領。首相、海相、東京市長、翼賛会、翼壮団長、総て、然り。
 今回の戦争で儲けたものは右翼団で、彼らは支那、内地、どこでも鉱山その他の権利を得て、大金を儲けているそうだ。彼らは軍人と連絡があるからだ。

 一円を笑うものは一円に泣く、などと、苦しい中みんなでがんばりましょう、
といっているそばで、自分たちは金儲けのことを考えているのだ。
 そんなことで挙国一丸などどうしてできるものだろう。

 架空戦記には、すぐれた政治家が鋭い決断で苦境を乗り切っていく姿が描かれたりするが、
そんなことはまずありえそうもない。

 政治家だって人間だ。
 時代が変わろうと何をしようと、そんなにすごい人物が出てくるとは思えない。

 たとえば想像してみてほしい。
 今の(別に何代か前のでもいい)政府が、
いきなりこの時代、太平洋戦争の真っ只(まっただ)中に放り込まれたとしたら……。

 あの政治家やあの大臣が、矢継ぎ早に的確な判断をして、
すべてを成功に導くということがあると思うだろうか?

 あの人なら、という人がいる人もいるかもしれないが、
私はそうは思えない。
 そういう人がいたとしたら、
現在でも、さまざまな問題が、もっとスマートに解決されているはずだろう。

 国際感覚がなく、政治家が自分の金儲けのことを考えている状況ではなおさらのことだ。


 現代の政治家がこの時代に放り込まれたら、
と書いたが、逆に、この日記を読んで、
政治家というのは、今も昔も変わらないなぁ、ということも感じる。
 上に書いたことからも、それは感じるのではないだろうか。

        (もう少しだけ、次回に続きます)

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マーティン・J・ドアティ 松崎豊一監訳 (2008/11 原書房)
"THE WORLD'S WORST WEAPONS"
by Martin J.Dougherty




夢とロマンと理想……と現実。

 図書館であと一冊何を借りようかと迷って借りた本。

変な兵器とかドジな発明とかを見るのは楽しい。
そうした本はたくさん出ているが、本書はちょっと違う。

超重戦車マウスとか曲射ライフル・クルムラウフ
などよく出てくるトンデモ武器・兵器がある一方で、
パトリオットミサイルとか、AK47のように、武器のことをよく知らない
わたくしのような人間でも名前は聞いたことがある有名な武器も登場する。

 これは、この本のコンセプトに理由があるようだ。

「「最悪」の武器のなかには救いようもないといっていいものがあるいっぽうで、めぐりあわせが悪かったとしかいいようのないものもある。優れたコンセプトに基づいてつくられたが、時宜を得ないまちがった場所で使用されてしまったものだ。そのほかには、優れものではないが欠点を補って有用な武器となるだけの特徴を備えたもの、あるいは欠陥が数多くあっても武器として何とか役に立つものもないではない。

 本書ではすべてのタイプを網羅しているがそれだけにとどまらず、どうしようもないコンセプトに基づいたもの、うまく機能しないもの、欠点を補うだけの特色がないものも取りあげている。」
(「はじめに」より)

 この定義を「最悪」というかというと疑問だ。
 まぁ、タイトルを派手にして、目を惹くようにするやり方は雑誌などでよくあるやりかただし、
ある一定の効果もある。
 たとえば、『世界の中心で、愛をさけぶ』が、
作者の用意した『恋するソクラテス』というタイトルだったら、
あれほどのヒットは見込めなかったろう。

 おっと、話がそれた。
 だから、戦艦大和なども登場する。
 確かに、航空機の時代には時代遅れとなった大艦巨砲の象徴は、この建造コストを他に割り当てていれば、というのが現実的には正解だろう。

 だが、それはあと知恵というものだ。
 計画立案時にはそのようなことになるとは考えもしなかっただろう。
 それに、何よりもロマンがあるんだよな。
 この本で「最悪」と称されるものは、
ロマンや妄想が現実の壁にぶつかって失敗している例が多い。

 アイディアはよかったんだけどね
 とか、
 それができればすごいよね
 というやつだ。

 よく、ナチスのトンデモ兵器でそれらは引き合いに出されるが、べつにこうしたことはナチスドイツに限ったことではない、ということがよくわかる。
 ドイツの場合は、逆に技術力と熱意があったから、突出してしまったというところだろう。

 戦争なんていうのは、始まってしまうとなかなか止まらないものだし、
科学者というのはロマンティックなものだから
--いや、未来など読むことができない以上、人はみなロマンティックだ--、
あとから見ればばかげていることでも、本当に真剣に取り組んでいるものなのだ。

 そして、そのようなものは、単純にトンデモとしていとおしい。

 この本では、そうしたいわゆる兵器だけではなく、それ以外の武器も採りあげている。

 たとえば、ヌンチャクシュリケン
 カンフーブームやニンジャブームで何かものすごい武器みたいに思われているけど、
実際にはたいしたことないよ、ということが書かれている。

 ヌンチャクなんて見世物とししては派手だけど、扱いにくくて自分が怪我をするだけだよ

 シュリケンじゃめったに人を殺せないよ、
いや、正確に投げることだって難しい、あれはもともとも、
敵の注意をそらすためのものだよ。

 と書いている。

 たしかにそうかもしれないけど、言いたくなる。

 それを言ったらロマンがないよと。

 さらに、最後の項で紹介しているのは、「ヤギにらみ」だ。
 なんだかわからないでしょ。

 まっ、超能力だ。

ある超能力者が念力でヤギを殺したという噂がきっかけとなり、米軍において、念力を軍事に応用する可能性を探る研究が開始された。
(p.314)
のだそうだ。

 ロマンがあるよね。

 この項で作者はコメントしている。
多くの賢人たちが、もっとも強力な兵器は人間の頭脳だと語っているが、彼らはおそらく、その言葉がそのまま文字通り解釈されるとは思っていなかっただろう。
(同)

 それはそうでしょうね。

 作者はイギリス人。
 それは、イギリスの兵器を採り上げることが多い以外でもわかる。
 上のコメントからも見てとれるとおり、
 イギリス人独特のユーモアというか、文体なのだ。




* 「最悪」な兵器の中には、デザインが特殊なものもあって、
  それがまたよろしゅうございますな。
  有名な兵器は見慣れてしまっているし、
  最適値を求めていくと、
  みんな似たりよったりの感じになるのでございましょう。

  オントス戦車駆逐車(M50オントス自走無反動砲)なんて、
  ガンタンクみたいでカッコいい!!
  逆に申さば、アニメに登場するメカなどは、
  実際に作れば「最悪」の仲間入りをするものが
  けっこうあるのでございましょう。
  もっとも、アニメの場合、
  技術レベルをイカサマにも設定できますから、
  問題はございませんのですけどね。

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