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2009/9/2  パソコンの調子がちょっとわるいので、ブログの更新が何日とか何十日とか止まったら、そのせいだと思ってください。                        まあ、めんどくさくなっておやすみということもありえますが。
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『暗黒日記』1942-1945

清沢洌(きよさわきよし)著
山本義彦編

岩波文庫(1990/7)



 日記にも関わらず、
この本には、クライマックスとでもいうべきものがある。

 それは、昭和20年4月15日の日記だ。

 3月10日の東京大空襲から、
著者が空襲に遭うこの日の記事への流れは、
描写が的確なこともあり、
構築された小説のようでさえある。

 それに、この日作者が体験したことが、奇跡。
 まさに小説のクライマックスのようなのだ。

 作者は空襲に遭ったと書いたが、それでかすり傷一つ負っていない。
家も焼けることなく残る。
それらはまさに偶然なくしてはありえなかったことだが、
作者の必死の行動と、その奇跡のような偶然、
そしてそのときの作者の心の動きが、まさに小説的なのだ。

 そのような奇跡によって、日記も作者も、空襲の被害から免れたのであるが、
残念なことにこの日記は、5月5日で終わっている。

 作者は、昭和20年5月21日、肺炎がもとで55歳で急逝したのだそうだ。
 戦争が直接の原因ではない(間接的にはあるだろうが)あたり、何か、天を仰ぎたくなる。

 広島・長崎の原爆投下、終戦、戦後……。
 ソれらを、作者はどう見たのだろうか。

(ちなみに、昭和18年8月17日の日記では、
「今回の戦争の後に、予は日本に資本主義が興ると信ず」と書いている)

昭和20年1月1日の日記で彼は、
「僕は、文筆的余生を、国民の考え方転換のために棒げるであろう。」
と書いている。
 まことに惜しいことだ。

 その、昭和20年1月1日の日記から、最後に引用しておこう。
今、引用した直前の部分だ。

 他にも引用したいところがあるのだが、
キリがないし、時間もない。

 あとはご自身でお読みいただきたい。

 今回挙げなかったが、
名前ぐらいは聞いたことがあるけれど、
何をやったか知らない人などについても、
実名で上がっていて、そういう点でも面白い。

 というわけで、とにかく読んでもらいたい。


p.261

一月一日(月)
(……)
日本国民は、今、初めて「戦争」を経験している。戦争は文化の母だとか、「百年戦争」だとかいって戦争を讃美してきたのは長いことだった。僕が迫害されたのは「反戦主義」だという理由からであった。戦争は、そんなに遊山(ゆさん)に行くようなものなのか。それを今、彼らは味っているのだ。だが、それでも彼らが、ほんとに戦争に懲(こ)りるかどうかは疑問だ。結果はむしろ反対なのではないかと思う。彼らは第一、戦争は不可避なものだと考えている。第二に彼らは戦争の英雄的であることに酔う。第三に彼らに国際的知識がない。知識の欠乏は驚くべきものがある。
 当分は戦争を嫌う気持ちが起ろうから、その間に正しい教育をしなくてはならぬ。それから婦人の地位をあげることも必要だ。
 日本で最大の不自由は、国際問題において、対手(あいて)の立場を説明することができない一事だ。日本には自分の立場しかない。この心的態度をかえる教育をしなければ、日本は断じて世界一等国となることはできぬ。総ての問題はここから出発しなくてはならぬ。
 日本が、どうぞして健全に進歩するように――それが心から願望される。この国に生れ、この国に死に、子々孫々もまた同じ運命を辿(たど)るのだ。いままでのように、蛮力が国家を偉大にするというような考え方を捨て、明智のみがこの国を救うものであることをこの国民が覚るように――。「仇討ち思想」が、国民の再起の動力になるようではこの国民に見込みはない。

(……)

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1942-1945

清沢洌(きよさわきよし)著
山本義彦編

岩波文庫(1990/7)


 数年前の8月の中ごろのことだ。
 NHK第二ラジオの「朗読の時間」で、この作品の朗読をしていた。
 たまたまそれを聞き、その面白さにたちまち惹(ひ)かれ、その後本屋さんで探して購入した。

 原題を『戦争日記』という。
 題名どおり、1942-1945年という、
まさに太平洋戦争の最中(さなか)に、国内(東京と軽井沢だったか)で書かれた日記だ。

 著者の清沢洌(きよさわきよし)は、自由主義者(リベラリスト)
日米関係が専門の国際関係学者
 そんな人物だからこそ、
当時の政府の愚行がよく見えているし、それに対する批評も、歯に衣着せず容赦ない。
(当然ながら、これは非公開の日記という前提があってのことだ。日記の中にも、これが当局に見つかれば処分されてしまうだろうから、隠しておく旨のことが書かれている)

 戦争が終わったあかつきには彼は、
これをもとに日本現代史を書こうとしていたのだそうだ。
 そのため日記には、雑誌や新聞の切抜きが多数貼りつけられていて、
本書にもそれが活字に改められた形で収められている。
 それが日記を真に迫ったものにし、また当時の状況を知るうえで役に立っている。

 架空戦記ものには、日本が大勝利を収める話がでてくるが、
これを読んで思うのは、それはあり得ないな、ということだ。
 また、そんなことにならなくてよかったとも思う。

 官僚主義。政界と財界の癒着。
 イデオロギーと責任逃れ。
 国際感覚のなさ。
 国民を身分が下のものとしてみる政治家。
 精神論の横行。
 精神的な屈伸性のなさ(時に応じた対策というもののなさ)。
 新聞の偏向・嘘報道。
 官憲による暴行
    :
    :

 このような体制の中で住みたいとも思えない。
 戦争に勝っていれば、日本はますますこのような態度を強固なものになっていっただろう。


 一般的な生活についてもそうだ。

 モラルが低下し、泥棒が横行。
 電車の窓も割られているという。

 物資の不足ゆえかもしれないが、
挙国一致という言葉が、スローガンでしかないのがわかる。
 日本が勝っていれば?
 犯罪は減るかもしれないが、殺伐とした雰囲気は残るだろう。
 それに、負けた側の国には、このようなことが起こる可能性はあるのだ。
それが日本でないからいいというのは間違いだろう。

 支配下に置かれた国のことについてさらにいえば、
そこでの日本の軍人の態度だ。
 もちろんそれは、そこに派遣された軍の上官の性格によって決まるものだろう。
 だが、たとえば昭和18年8月17日(火)の日記に書かれているように、
炎天下での労働で死亡した一高(今の東大)学生のことが、賛美されていたりするのだ。
 外国でも同じことを住民に強制させて、よろこんで迎え入れられるとは思えない。
 それにたとえば、同年12月16日の日記。

p.120
国内においては神風連(じんぷうれん)的な右翼思想が流行する。外国に行くのはそういう連中に限られる
(中略)彼らは無知でありながら、恐ろしく自信がある。そこで大東亜諸国に行って、それ錬成だ、それ儀礼だという。こんな国民に彼らが推服する(うやまって服従する)ものではない。

 これも、よろこんで受け入れられることはなさそうだ。

 

 いずれにせよ、このような国が、世界に勝てる可能性はまずないだろう。
 国際状況もわからず、戦力比も考慮せず、
日本は神国であるといった精神論のみが横行するような状態では。
 しかも、当時の政府は、戦後経営について、何も考えていなかったようだ。
とにかく勝てばいいと思っていたのだろう。
 よくある話ではあるが。

 政界と財界の癒着ぶりについては、たとえば昭和19年9月21日の日記にある。

p.229
かつても書いたが、日本の最重要職業、会社、官吏は全部軍人で占領。首相、海相、東京市長、翼賛会、翼壮団長、総て、然り。
 今回の戦争で儲けたものは右翼団で、彼らは支那、内地、どこでも鉱山その他の権利を得て、大金を儲けているそうだ。彼らは軍人と連絡があるからだ。

 一円を笑うものは一円に泣く、などと、苦しい中みんなでがんばりましょう、
といっているそばで、自分たちは金儲けのことを考えているのだ。
 そんなことで挙国一丸などどうしてできるものだろう。

 架空戦記には、すぐれた政治家が鋭い決断で苦境を乗り切っていく姿が描かれたりするが、
そんなことはまずありえそうもない。

 政治家だって人間だ。
 時代が変わろうと何をしようと、そんなにすごい人物が出てくるとは思えない。

 たとえば想像してみてほしい。
 今の(別に何代か前のでもいい)政府が、
いきなりこの時代、太平洋戦争の真っ只(まっただ)中に放り込まれたとしたら……。

 あの政治家やあの大臣が、矢継ぎ早に的確な判断をして、
すべてを成功に導くということがあると思うだろうか?

 あの人なら、という人がいる人もいるかもしれないが、
私はそうは思えない。
 そういう人がいたとしたら、
現在でも、さまざまな問題が、もっとスマートに解決されているはずだろう。

 国際感覚がなく、政治家が自分の金儲けのことを考えている状況ではなおさらのことだ。


 現代の政治家がこの時代に放り込まれたら、
と書いたが、逆に、この日記を読んで、
政治家というのは、今も昔も変わらないなぁ、ということも感じる。
 上に書いたことからも、それは感じるのではないだろうか。

        (もう少しだけ、次回に続きます)

マーティン・J・ドアティ 松崎豊一監訳 (2008/11 原書房)
"THE WORLD'S WORST WEAPONS"
by Martin J.Dougherty




夢とロマンと理想……と現実。

 図書館であと一冊何を借りようかと迷って借りた本。

変な兵器とかドジな発明とかを見るのは楽しい。
そうした本はたくさん出ているが、本書はちょっと違う。

超重戦車マウスとか曲射ライフル・クルムラウフ
などよく出てくるトンデモ武器・兵器がある一方で、
パトリオットミサイルとか、AK47のように、武器のことをよく知らない
わたくしのような人間でも名前は聞いたことがある有名な武器も登場する。

 これは、この本のコンセプトに理由があるようだ。

「「最悪」の武器のなかには救いようもないといっていいものがあるいっぽうで、めぐりあわせが悪かったとしかいいようのないものもある。優れたコンセプトに基づいてつくられたが、時宜を得ないまちがった場所で使用されてしまったものだ。そのほかには、優れものではないが欠点を補って有用な武器となるだけの特徴を備えたもの、あるいは欠陥が数多くあっても武器として何とか役に立つものもないではない。

 本書ではすべてのタイプを網羅しているがそれだけにとどまらず、どうしようもないコンセプトに基づいたもの、うまく機能しないもの、欠点を補うだけの特色がないものも取りあげている。」
(「はじめに」より)

 この定義を「最悪」というかというと疑問だ。
 まぁ、タイトルを派手にして、目を惹くようにするやり方は雑誌などでよくあるやりかただし、
ある一定の効果もある。
 たとえば、『世界の中心で、愛をさけぶ』が、
作者の用意した『恋するソクラテス』というタイトルだったら、
あれほどのヒットは見込めなかったろう。

 おっと、話がそれた。
 だから、戦艦大和なども登場する。
 確かに、航空機の時代には時代遅れとなった大艦巨砲の象徴は、この建造コストを他に割り当てていれば、というのが現実的には正解だろう。

 だが、それはあと知恵というものだ。
 計画立案時にはそのようなことになるとは考えもしなかっただろう。
 それに、何よりもロマンがあるんだよな。
 この本で「最悪」と称されるものは、
ロマンや妄想が現実の壁にぶつかって失敗している例が多い。

 アイディアはよかったんだけどね
 とか、
 それができればすごいよね
 というやつだ。

 よく、ナチスのトンデモ兵器でそれらは引き合いに出されるが、べつにこうしたことはナチスドイツに限ったことではない、ということがよくわかる。
 ドイツの場合は、逆に技術力と熱意があったから、突出してしまったというところだろう。

 戦争なんていうのは、始まってしまうとなかなか止まらないものだし、
科学者というのはロマンティックなものだから
--いや、未来など読むことができない以上、人はみなロマンティックだ--、
あとから見ればばかげていることでも、本当に真剣に取り組んでいるものなのだ。

 そして、そのようなものは、単純にトンデモとしていとおしい。

 この本では、そうしたいわゆる兵器だけではなく、それ以外の武器も採りあげている。

 たとえば、ヌンチャクシュリケン
 カンフーブームやニンジャブームで何かものすごい武器みたいに思われているけど、
実際にはたいしたことないよ、ということが書かれている。

 ヌンチャクなんて見世物とししては派手だけど、扱いにくくて自分が怪我をするだけだよ

 シュリケンじゃめったに人を殺せないよ、
いや、正確に投げることだって難しい、あれはもともとも、
敵の注意をそらすためのものだよ。

 と書いている。

 たしかにそうかもしれないけど、言いたくなる。

 それを言ったらロマンがないよと。

 さらに、最後の項で紹介しているのは、「ヤギにらみ」だ。
 なんだかわからないでしょ。

 まっ、超能力だ。

ある超能力者が念力でヤギを殺したという噂がきっかけとなり、米軍において、念力を軍事に応用する可能性を探る研究が開始された。
(p.314)
のだそうだ。

 ロマンがあるよね。

 この項で作者はコメントしている。
多くの賢人たちが、もっとも強力な兵器は人間の頭脳だと語っているが、彼らはおそらく、その言葉がそのまま文字通り解釈されるとは思っていなかっただろう。
(同)

 それはそうでしょうね。

 作者はイギリス人。
 それは、イギリスの兵器を採り上げることが多い以外でもわかる。
 上のコメントからも見てとれるとおり、
 イギリス人独特のユーモアというか、文体なのだ。




* 「最悪」な兵器の中には、デザインが特殊なものもあって、
  それがまたよろしゅうございますな。
  有名な兵器は見慣れてしまっているし、
  最適値を求めていくと、
  みんな似たりよったりの感じになるのでございましょう。

  オントス戦車駆逐車(M50オントス自走無反動砲)なんて、
  ガンタンクみたいでカッコいい!!
  逆に申さば、アニメに登場するメカなどは、
  実際に作れば「最悪」の仲間入りをするものが
  けっこうあるのでございましょう。
  もっとも、アニメの場合、
  技術レベルをイカサマにも設定できますから、
  問題はございませんのですけどね。

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