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2024/04/30 今月に入ってお歌の動画をあまり見なくなったなー。あれは日本に対する海外の評判につられてYouTubeのおすすめに入ってきたものだし、そもそも変な歌しか聴かないものなぁ。で、変なお歌って一定数はあるけれど、そんなにあるものではないしなぁ。  日本に対する海外の評判に関しては、いろいろ書きたいこともございましたが、時機を逸したと申しますか、自分の中でのタイミングを逃したと申しますか。結構長くなってしまうのですよね。タイトル下には収まらないですし、では本文で腰を入れて書くことかと申しますと、どんどんブログのテーマから外れてしまうと申しますか……。まぁ、それはあまり考えてはいないのですが、ちょっとは、ね。
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『成功者K』羽田圭介 (河出文庫/2022/4)成功者K
 『ゼッタイ! 芥川賞宣言~』のオビに
羽田圭介先生の名前が挙がっていたので、
芥川賞獲得後のご自身をモデルにして書いたと思われる
『成功者K』という作品を読んでみました。
  
 どこまで実際に近いことが書かれているかは
不明でございますが、
かなり事実に近いと思われます。
 
 だって、
テレビに出演している部分は変えられませんし、
その周辺だって違うことを書けば不自然になりましょう。
 プライベートについてももちろんアレンジはございましょうが、
全くなかったことからこんな煙は立てられないと思われます。
 まぁ、
 芥川賞受賞者と申しましてもいろいろなかたがいらっしゃるものでございます。
 その中でもKは行動的な部類と申してよろしゅうございましょう。
 
 テレビに出演し、そのギャラを地震で交渉し、投資にも手を出し……と、
いろいろやってそれを足がかりに金と名声をつかんでいったのでございますからな。
 
 最初は本を売るためは知名度を上げていかなければ、
そういう心づもりだったようでございますが、
その手段が次第に目的に変わってまいります。
富と名を得、複数の女性とつき合っていくうちに
自分が「成功者」であることを意識し
そのために行動するようになるのでございます。
 
 「成功」を手にすることで、
金も女性との付き合いもなくただただ小説を書き続けた
安い暮らしの頃とは意識が変わってきたのでございますな。
 
 この作品の特徴は、
なんと申し上げましてもタイトルにもございます
成功者K」という言葉にございます。



 もちろん主人公を表すのでございますが、
なにか「サンプルA」といった実験体を観察する語感がございましょ? 
同時にKは作者のことでございますから私小説的な内面も拾えます。
成功者という言葉には、自分に対する誇りが感じられると同時に、
そういう状況にいることを第三者の立場で捉え、揶揄するような雰囲気も──。
 
 作中でも編集者に指摘されております。
 一人称でも三人称でもない、
僕にも俺にも彼にも言い換えられる不安定さを感じると──。
「作家がナレーターやったら駄目でしょう。
 ナレーションは、小説の外側から聞こえてくる声のはずだよ。
 なのに、作家自身が小説内に入って好き勝手にナレーションをつけたら、
 それはただの作家にとってご都合主義になる」
 
 これを受けてKは
ご都合主義にならないように作品を改稿していくのでございますが、
これ、本当に編集の方がそうおっしゃったのかは疑問だと、
わたくしなどは勘ぐります。
 
 視点の不安定は、むしろ作者が意図したことにございましょう。
でなければ、成功者Kを人称として使わないと思いますし、
タイトルにもしなかったことでございましょう。
 
まぁ、自分に都合よすぎてしまったので書き直した
ということはあるかもしれませんが、
それも書いているうちに作者が気づいたことかもしれません。 
 
 作中作である「成功者K」に対する指摘というメタ構造なので分かりかねますが、
両方の可能性があると存じます。
 
  
 さて、物語の内容についてでございますが、
全体としてはかなり古典的なテーマと申してよろしゅうございましょう。
 
 昔話でいえば「怖がることを習いに出かけた若者の話」あたり──。
主人公が知らない世界に足を踏み入れ、
その世界を経験してどうにかなるという展開の話でございます。
 
 地方から都市部にやって来てとか、企業に就職してなど、
このような形は物語の典型の一つでございますな。
 
 Kは「成功者」というステージに立つわけでございますが、
その過程は比較的スムーズと申してよろしゅうございましょう。
 
 ただし、水面下には常に不安が渦巻いております。
 雑誌の密着取材・ドッキリ企画の予告・
そして複数の女性とつき合っているがゆえの問題……。
 
 さらにKは、
自分が完全な「成功者」になりきれていないことも感じ始めます。
 
 クイズ番組での自分の扱われ方が、自分としてではなく
芥川賞を獲ったヨワヨワなお調子者というキャラクターとして扱われていること。
 
 自分はマスクなどをして人前で顔を隠そうとするのに、
つき合っている女優の方はそうはしない。
 
 芸能人の自宅でのパーティで、
他の芸能人はそこが居場所だというようにくつろいでいるのに
自分ではそうはできないこと。
 
 それらを通して、自分が
内面的にも外的にも「成功者」たり得ていないことを感じるわけでございますな。
  
 でも
Kを「成功者」たらしめているのは、芥川賞受賞者という肩書き、
すなわちレッテルでございますし、
K自身も立ち位置・重心は小説家であって、
芸能界には完全に足を突っ込んでいるわけではございませんからな。
 そういう扱いにもなり、またK自身がそれを感じるわけでもございます。
 
 それに芸能人のパーティの場面で
Kが本当の成功者としてベテラン芸能人を見るのも、
そこだけしか見ていない感がございます。
そういう地位についた人でも
それまでに失敗したことは多々ございましたでしょうし、
そらにそれ以上にそうなる前に、
Kよりも早く芸能を去った方もたくさんいるはず。
ここではそのあたりを考えずに「成功者」というものを見ている気がいたします。
  
 
 そんなKは、
レッテルではなく自分自身を名声あるものとして認めてもらおうと
テレビに出演するときの発言を変えてまいります。
 それまで文学青年のレッテル通りの
女の子にもてない情けないキャラを作っていたのを、
実はモテるんですよというふうに切り替えたのでございます。
  
 その結果、「K」ではないみなさんには予想できると思いますが、
テレビ局からのお呼びが次第に少なくなってまいります。
テレビ局の欲しかったのは、
パターンにあうキャラクターの方だったのでございますな。
  
 人気が無くなってきたKは、
やはり自分の本分は小説だったとあらためて思い返し、
この作品『成功者K』を上梓するのでございます。
  
 羽田先生がどうだったかは存じ上げませんが、
この「K」の着地は実に上手いこと行ったと申してよろしゅうございましょう。
  
 密着取材は都合よく編集され、Kにとって不本意だったものの、
それが『成功者K』を生み出すきっかけとなったわけですし、
 
ドッキリ企画はKに身に覚えがないまま放映されたらしく周りから同情され、
 
トラブルを起こしそうだった女性も
Kの人気が無くなるとともに自然消滅といった感じで消えていく、
 
とまぁ、ひどい事件やトラブルにならずに霧消したのでございますから。
 
 この作品、『成功者K』が出版されたあとも話が続きます。
 そのあたりは未来の話ということで、
幻想と申しますか、現実でない部分が混ざっているようでございます。
 駐車場に置いてあった高級車が消えたり、通帳の数字が消えたりするのでございますね。
 
 どういうことか疑問でございますが、想像いたしますに、
これらは小説の嘘、実は車は買っていなかったし、
投資も本当はしていなかったということなのではないかと思います。
 
「成功者」を端的に表すのにはいいですけれど、
車などは東京で本当に必要かと申しますとそうでもないと思われますし。
 
 
 
 ……違うかな?

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