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2024/04/30 今月に入ってお歌の動画をあまり見なくなったなー。あれは日本に対する海外の評判につられてYouTubeのおすすめに入ってきたものだし、そもそも変な歌しか聴かないものなぁ。で、変なお歌って一定数はあるけれど、そんなにあるものではないしなぁ。  日本に対する海外の評判に関しては、いろいろ書きたいこともございましたが、時機を逸したと申しますか、自分の中でのタイミングを逃したと申しますか。結構長くなってしまうのですよね。タイトル下には収まらないですし、では本文で腰を入れて書くことかと申しますと、どんどんブログのテーマから外れてしまうと申しますか……。まぁ、それはあまり考えてはいないのですが、ちょっとは、ね。
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とりこまれる怪談 あなたの本
『あなたの本』
緑川聖司:作 竹岡美穂:絵
(ポプラポケット文庫/2018/12)
 
 本屋さんの平台で見つけたので、
最新刊だと思って買ったのすが、
奥付を見ると初版が2018年、
再版が2019年の5月に出ておりました。

 たぶん、見たことがあったと思いますし、
手に取ったこともあったのではないかな?
 
 ただ、ホラーなのでスルーしたのでございましょう。
 
 
 作品は二部構成になっておりまして、
一部は中学生の美緒さんが主人公でございます。
 
 近くの神社で行われていたフリーマーケットで、
彼女が「ひとかけ屋」なる看板を出す店を見つけるところから物語は始まります。
 
ひとかけ屋」。
 どこかしらが欠けているものを売っているお店。
 そのかけた部分の代わりに物語がついてくるという……。
 
 この設定いいいですよねぇ。
 これを発展させたほうが、面白くなったんじゃないかぁ。
 
 フリーマーケットではなく、ちゃんとうさんくさい雰囲気の古道具屋さんにして。
 そこの店主が、雰囲気たっぷりに、欠けている物語を語り始める……。
 短編集として、面白いものになると思います。
 
 それはさておき、
 
 そんな「ひとかけ屋」にならぶ品物の中から、
美緒さんが選んだのが『あなたの本』という題名の本。
 
 主人公が欠けている、読んだ人が主人公となる小説でございます。
 
 このあたり、なんともわくわくぞくぞくする感じの設定であり、導入でございましょう?
 
 100円だったこともあって、美穂さんはそれを購入するのでございますな。

 で、うちに帰って読んでみますと、
本には、知っていた・知らなかったに関わらず、
彼女が過去にあった出来事が書かれているのでございます。
 
 というわけで、二人称の怪談実話風のショートショートと、
それを読む美緒さんの話が、
交互に繰り返されるという形で物語は進んでいくのでございますが……。
 
『あなたの本』というタイトルからもウリのはずの、
二人称小説の部分が、期待外れなのでございますな。
 
「まるで、本に自分の心の中を見られているみたいだ」(p.26)と、
作中にも書かれておりますとおり、
二人称小説と申しますのは、没入感が強いところが特徴でございますな。
 そして、そこがまたむずかしいところでもございます。
「あなた」と語りかけてくるその物語が、
納得できるものでないと、どうにもしらけてしまう――。
 
 そんな二人称小説の特徴を、この作品では回避してしまっているのでございます。
 
『あなたの本』を読んでいるのは、主人公の美緒さん。
 つまり、読者にとっては第三者。
なので、その彼女が読んでいるのが二人称の小説でも、
読者の視点的には三人称なのでございます。
 
 しかも、話は過去のこと。
 二人称小説の当事者性がそこでもございません。
 緊迫感がないのでございます。
 加えて、『あなたの本』に収められている話は、
美緒さんが生まれる前のものまでございます。
 
「あなたがまだお母さんのおなかの中にいたときの話です」という部分が二人称で、
あとは母親の話になっているのが、二人称小説といえるかどうか。
 
 まぁ、あなた=美緒さんの話ではございますが。
 他にも視点一人称になっていないために、
二人称小説とは言いがたい部分がいくつか見受けられます。
 
 まぁ、それを逆手に取った「ドライブ」(p.53~)みたいな作品もあるので、
作者としては、新しい試みとしてやっているのかもしれません。
 
 ただ、いわゆる二人称小説を狙っていなかったとしても、
もう少し緊迫感のある書き方は出来るような気がいたしますが……。
 子供向けにマイルドにしたのかなぁ?
 
 
 さて、 
 
 先ほども書きましたとおり、この本は二部構成になっております
 
 二部目は、p.128から。
 まみさんという大学生作家が主人公でございます。
 実はこの作品、シリーズ物の一作なのでございますよね。
 
 これの前に『わたしの本』という作品がございまして、
その主人公がこのまみさんなのだとか。
 この本が完全な二人称小説の本として書かれていないのも、
シリーズの一作であるためなのかもしれません。
 
 でも、場面は変わりますものの、
なんの説明もなく主人公が変わるので、ちょっとわかりにくい。
「わたし」が第一部と同じ人物かと思って読み進めたので、
ちょっととまどいました。
 前作を読んでいれば問題ないのでしょうけどね。
 
 第二部は、
そのまみさんが、美緒さんから借り受けた
『あなたの本』を読んでいくという形になっております。
 今度は、まみさんの過去が作中作で語られるわけでございますな。
 
 それを読み進んでいく一方で、友人の清人さんとともに、
「ひとかけ屋」と、『あなたの本』に関する事を調べていくと……。
 核心に迫るにつれ、なぞの和服姿の男につけられていることを感じるようになります。
 その男が、この本の作者なのでございますな。
『あなたの本』に欠けているのは、主人公。
 
 ここからネタバレ。
 
 というわけで、
まみさんを主人公として本の中に取り込もうとするのでございますが……。
 
 そこに、山岸さんという人がいきなり現れて、
一ページ足らずで物語を解決してしまうのでございます。
 デウス・エクス・マキナでございますな。
 
 この山岸さんという方、このシリーズの主要人物らしくて、
前作でも「とつぜんあらわれて、とつぜん消えた」(p.218)のだそうでございます。
 ですから、そういう役回りのキャラクターなのでございましょうけれど、
これ単体で読んでおりますと、面食らいますし、安易と感じてしまいますな。
 そこにいたる危機が、もっと迫真のものでございましたら、
また感じ方は違っていたのかもしれませんが……。
子供向けということで、これぐらいでいいのかなぁ?
 
あなたに欠けているものは、作家の才能でも、主人公でもなく……
と断じて、呆然とする「ひとかけ屋」から、彼は
清人さんとまみさんを救出いたします。
 そのあとの言葉は書きませんが、 
 
 つまりはこれ、物語を書くことについての物語なのでございますな。
 
 
      ☆     ☆     ☆
 
 
 ところで、『あなたの本』というタイトルからも連想されるとおり、
この作品にはゲームブックについて言及している部分がございます。
 と申しますか、それがあると思ったからこの本を手に取ってみたのでございますが……。
 
 それは、第二部の最初のほう
 まみさんが『あなたの本』と出会う前、怪談研究をしている清人さんに、
そんな怪談がないかという聞いている場面でございます。
 
「そういえば、ゲームブックの怪談に『あなたの本』というのがでてきた」
と、清人さんがその怪談について語るという形で、作中作が登場いたします。
 
『あなたの本』と題されたそのゲームブックは、
その本を手に取った圭介さんの未来が書かれている本でございまして、
途中に選択肢があり、
それを選ぶとその結果に書かれたとおりのことが起こるのでございます。
 で、そのゲームブックで選択したとおりに現実でも行動していくことで、
圭介さんの生活はどんどんいい方向に進んでいくのでございますが……。

 この手の物語に破滅はつきものでございます。
 
 高校受験の選択で、彼女と同じ高校を受けるか否かの選択に迷った彼は、
ゲームブックの冒頭に書かれていた禁止事項を破って、
両方の選択結果を見てしまいます。
 禁忌を破って見た結果は両方とも悲惨なもの。
 どこで間違ってしまったのかと、必死に選択肢をたどり直すのでございますが……。
 どうなったかはここでは書きませんが、まぁ怪談でございますから……、
ということになるわけでございます。
 
 未来と過去が違うとはいえ、
このゲームブックの『あなたの本』と
主人公が手にする『あなたの本』は似ているような気も……。
 まぁ、両方とも『あなたの本』。
作中人物の人生と関わるものなので、仕方がないのかも知れませんな、
 

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