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2024/04/19 高島屋の1040万6000円のお茶わん。約180万円で買い取ったお店が、すぐに別の店に約480万円で転売したそうですな。最初買い取ったお店は、盗品って気づかなかったのかなぁ。それとも事件のことを知ってて買い取り転売したのでしょうか? まぁ、知らなかったとおっしゃりますのでしょうなぁ。いづれにしましても、1040万の品も売るとなるとこのぐらいの価格なのでございますな。
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 若桜木先生といえば、
大陸書房秋本書房を中心に、
多くのゲームブックを発表されてきたことでご存じでしょう。
 霧島那智名義では『Xファイル』(KKベストセラーズ)のゲームブックも
ものにされています。
 
 そんな先生のお作りになるゲームブックは、
プレイしたかぎりにおいてですが、すべてが無方向移動型です。
 
 ときには、長い一方向移動型のところどころにそれが挟まれる場合もありますし、
逆に全編にわたって、無方向移動型という作品もあります。
 いずれにせよ、どこかしらにそれが含まれているのです。
 
 使われるのは、迷路と戦闘
 迷路は想像できるでしょう。
 洞窟をさまよう場面などですね。
 戦闘は、殴り合いのケンカなどがそれに当たります。
 ロストワールド(クイーンズブレイド)を活字で描写したような
と書けばわかるでしょうか?
 
 無方向移動型なのでループ構造ですし、体力やフラグなどないため、
戦闘にしても迷路にしてもヘタをすれば延々とそれが続くわけです。
 
 初めてプレイしたときは、どうなっているんだと不安になりました。
 何十分もパラグラフを追っているのに、ぜんぜん迷路から脱出できない。
似たような描写が続いてはいるものの、少しずつ違っていて、
元の場所に戻ってきたのかそうでないかすら分からない……。
 
 フローチャートは描かなかったものの、指しおりを何本も使って、解法を探ります。
そうやって、あっちこっちとたどっていくうちに、
ようやくループになっていることを理解したのです。
 
 そのスタイルが分かったときは、なるほどと感心しました。
  
 迷路というと一般的なのは双方向移動型ですが、
これは迷っている感覚が薄いことが残念です。
 
 歩いているうちに、どこに何かあるかが分かってしまい、
最後のほうは作業的になってしまうのです。
 
 四角四面に作られたダンジョンや開けた場所ならそれもいいでしょう。
 
 ですが、人の感覚を狂わせる迷いの森や、
曲がりくねっているうえに枝道も多い洞窟など、
幻想的な空間や、マップを作ろうにも作れないような場所は、
この無方向移動型のほうが、むしろふさわしい
 
 たとえば、『ネバーランドのリンゴ』は双方向移動型ですが、
そのため幻想的な感じがしません
無方向移動ならばより妖精の国の不思議さを表現できたのではないかと思うのです。
 
 
 戦闘については、延々と続くことが非現実的と感じる人もいるかもしれません。
 ですが、アクション映画でも長時間続く格闘シーンってけっこうありますよね。
それを表現したと考えれば、むしろこれは正しい。
主人公が死なないのも、映画なら普通です。
 
 主人公が死なないなんてヌルすぎる、と思うかもしれませんが、それも違います。
 キャラクターが死んで一からやり直す、というペナルティはないものの、
このスタイルはループに入ってしまえば戦闘がいつまでも続きます。
長引けばプレイヤーの時間を奪うことになるわけで、それがペナルティとして機能します。
 
 しかもあきらめる以外に終了させる方法はないわけです。
死によって終われるものよりも、罰としてはさらに酷い場合さえあるのです。
 
 
 この戦闘方法の長所は、没入感にあります、
 ルールで処理される戦闘は、
サイコロを振るために本を置いたりしなければならないため、
ストーリーとゲームは別のものになりがち。
描写も無味乾燥です。
 
 対してこのスタイルでは、そのようなことはありません。
 戦闘がパラグラフに組み込まれているので、
ストーリーとゲームが別のものになることなどないのです。
 加えて自分の次の行動が具体的に選択肢に示され、
跳び先ではそれに対する敵の具体的なリアクションが描かれるという点も
没入感を高めます(これは迷宮についてもいえます)。
 
 
 
 こうした長所を持つスタイルなのですが、いいことばかりではありません。
 若桜木虔先生のゲームブックの、
プレイヤーから見た問題点としては、次の3つが挙げられます。
 
(1) すべての作品がこのスタイルなので、ストーリー以外はどれも同じ
    量産のためには正しいのかもしれないが、一作読めば十分だと感じてしまう。
 
(2) 移動型の性格上、パラグラフをものすごく消費する
    システム的な戦闘なら数パラグラフですむところを、
    無方向移動型では、何十パラグラフも費やしてしまうことがザラにある。
    そのため物語は薄く、戦闘や迷宮が延々と繰り返される展開になりがち。
 
(3) 一つの戦闘や迷宮は、運良く正解ルートを通ることができれば、
    ほんの数パラグラフで終えることができるが、
    一歩選択を誤れば、永遠にループから抜け出せない蟻地獄におちいる。
 
 
(1)は量産が利く、
(2)はページ数を増やせる、
(3)は、読者に繰り返し文章を読んでもらえると、
 
 どれも、作者にとっては都合のいい仕様ではありますが、プレイヤーにはつらい。
 
 初見者には、(3)がとくに厳しいのはいうまでもありません。
コンピュータのプログラムなら、バグにあたるものですし、
プレイヤーとしてはどこかにゴールがあると信じるものですから、
それこそ何十分も同じ迷路でぐるぐるしてしまいます。
 
(2)で書いたとおり、数十に渡るパラグラフで、
しかも戦闘にしろ迷宮にしろ同じような描写が続くものですから、
「ここ、さっき来たような気が……」と思いながらも、
ずぶずぶとはまってしまうわけです
(迷宮の表現としては、優れている部分なのですが)。
  
 若桜木先生は、それをとしているわけですね。
 ゲームブックを、そうした
ループ構造を含むフローチャートの迷宮を正しいルートで通り抜けるパズルゲームと
規定しているのです。
 
 そのため、あとがきには最小手順は何手と書かれており、
難しいゲームであることを誇っていたりもします。
(時代がそうだったわけでもあるのですが)。
 
 そんな若桜木先生が、
「現在(昭和61年)世界で最も難しいゲームブック」(p.240)と豪語するのが
貴族仮面を倒せ!』(サンケイ出版/昭和61年8月)です。
 
 ジャングル内で開催されるプロレスで、
最強王者の貴族仮面(ミル・マスカラスあたりがモデル)と戦い
勝利することを目指す……、とストーリーはこれだけ。
 
 ジャングル内でライバルや猛獣と戦い、
貴族仮面の待つリングに向かうという展開になるのですが、
それがすべて無方向移動型で構成されているのです。
 
 詳しく書けば、
 
 まず、ジャングル大まかなブロックに分かれていて、
そのブロック同士のつながりが無方向移動型
 
 ブロック内の森や川で出会う猛獣やヘビ・クモ・ヒルとの戦いが無方向移動型
 ライバルのレスラーたちとの戦いが無方向移動型
  
 入れ子構造の無方向移動型なので、ライオンと戦い、
さらに2,3の敵を倒したら目の前にまたライオンが現れた、ということが
しばしば起こります。
 
 そのようなジャングルを踏破し、
ようやく貴族仮面の待つリングにたどり着くわけですが、
そこでの戦いももちろん無方向移動型……。
 
 
 総パラグラフ420で、
ゴールまでの最短手順は、スタートの1を含め、ちょうど百手」だそうですが、
ズルしてやってもスタートからゴールまで行くのは、まず無理というものです。
 
 先ほどの例でも、二度ライオンに出会っている時点で最小手ではないのですから、
詰んでいる状態なのですね。
 
 私もけっこうやりましたが、結局ゴールを見つけたことでよしとしました。
 ただ、クリアを目指さず、
パッと開いたページからの展開を楽しむだけと割り切れば、
それはそれでそこそこ楽しめると思います。
 
 そうそう、(2)物語が薄いと書きましたが、
だからといってつまらない訳ではありません
ストーリーは、無方向移動以外の部分に入れればいいのですし、
アクションが連続する映画やゲームが面白いように、
描写さえ良ければ物語性などなくても十分楽しめるものです。
 
 
 
 さて、プレイヤーから見た問題点を挙げたあと、
それが作者にとっては都合のいい仕様だと書きました。
 ならば作るのは簡単かと訊かれれば、そうだともそうでないともいえます。
 
 システム的には、フローチャートのランダマイズさえ行うことができれば、
難しいことはありません。
 実際若桜木先生は、コンピュータを使ってパラグラフをシャッフルしている
とお書きになっていますし、速いペースで出版されているのも事実です。
 
 ですが、描写に関しては力量が必要です。
 
 とにかく
数十パラグラフにわたって迷路や戦闘を具体的に描写しなければならないのです。
迷路に関しては細かな背景描写を多彩に描ける実力が必要ですし、
戦闘にしても技の名称やそのかけ方、弱点などを事細かに知っていて、
さらにそれをしっかり描ける能力、面白い展開に持ち込める演出力が必要となってきます。
 
 逆に言えば、そこがこの移動型の腕の見せ所でもあります。
 
 戦闘については、没入感のところで書いたとおり。

 迷路については、
双方向移動型の場合、
行きと帰りでつじつまを合わせなければならないため、
描写はその場限りの平板になるきらいがありますが、
 
無方向移動型
では
部分的にはパラグラフ間に流れがあるので演出をさしはさめます。
しだいに森が深くなってきたなどの描写をすることができ、
そこに工夫をすることができるのです。
 
 
 ちなみに、作者若桜木の先生は、文章講座(タイトルは忘れましたが)で、
小説は戦闘を描くのが苦手だということを書いておられます。
たしかに、単純に戦闘だけを書くのは苦手そう。
 となると先生は、小説が苦手な戦闘を書きたいために、
ゲームブックを書いたのかもしれませんね。

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