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2024/05/10 きのう、寝ようと思ったら『プロフェッショナル仕事の流儀特別編・宮崎駿と青サギと』をやっていたので見ました。NHK-BSで。後半一時間ぐらいかな。最初は普通に宮崎先生のドキュメンタリーとして見ていたのでございますが、次第にその構成・演出に目が行くようになりました。きっかけは、先生が鉛筆を落とすシーン。普通に横から捕らえた後、下から鉛筆が落ちてくるシーンを入れているのですが、これって多分別撮りした演出ですよね。そんなところに常にカメラ置いているはずございませんもの。で、それに気がつくと、構図とかエピソードの入れ方とか、制作者の意図みたいなものがどんどん気になってまいります。やはりこういうドキュメンタリーを手がける方なので、そうした演出には知悉した方なのでしょう。そう思いつつ見ておりますと、番組としてしっかりまとまっておりますだけに、カットされた部分も見てみたくなる気がいたします。
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『石ノ森章太郎コレクション SF傑作選』石ノ森章太郎先生SF
(ちくま文庫/2021/8)
 
 
『ことばの記憶』に書いてあったと思いましたが、
石ノ森先生の活劇もののルーツは立川文庫だそうでございます。
 
 忍者ものや剣豪小説ですな。
 
 また、SFはファンタジーの一種だと思っている
──こちらはどこに書かれていたか忘れましたが、
 多分1980年代に書かれたものじゃないかな、
そんなこともお書きになっていたと思います。
 
こちらには、同話や民話、それにディズニーなどが含まれるのでございましょう。
 
 そういうもの身体に染みついたものを物語展開の核にして、
そこに映画や小説、科学雑誌、
その他様々なものを取り込んで作品に仕立てていく。
 
 活劇ものに関しては、そんな封に物語を作っているのだと存じます。
 
 
 さて、この作品集には、
  
「敵THE ENEMY」「狂犬」「おわりからはじまる物語」
「四帖半襖の下張りの下」「おとし穴」「赤い砂漠」「天敵」「UFO」
 
 という作品が収録されております。
 
 すべて単独の短編で揃えられているというのはすごい。
 
 解説で菅谷先生も書いていらっしゃいますように、
シリーズ物も多いけど、短編もまた多いということでございましょう。
 
 ただ、すべてが単体の短編というのは、一長一短でございますな。
  
 例えば『7P』などに収められているものの方が質が高いのでは、
と思うところもございます。
 
 でも、まぁ、それはそれ。
 単独の作品が集まるということは貴重でございます。 
 
 シリーズ作品については、それぞれの短編集が出るのを期待いたしましょう
(と思ったけれど、わたくしが読んでいないだけで、電子では出ているんですよね)。
 
 
 収録作品にUFOものが多いのも、ちょっと疑問。
たしかに石ノ森先生はUFOに興味を持っておられたのでございますが、
 
 まぁでも、こうしてUFOテーマを
いくつか重ねることに意味があることもわかるので、
疑問に感じるのがちょっとなのでございますが。
  
というわけで、各品について見ていくことにいたしましょう。 
 
 
 「敵 THE ENEMY石ノ森章太郎 敵
 
 サイボーグ009の少し前に描かれた
 サイボーグものでございます。
 
 設定的には、
『アンドロイドV』に似ているのかな? 
(参照にしていないので、思いつき)。
 
 主人公が自分がどういう存在か認識していない状況で
襲撃を受けるというのは、
『おれはだれた』という短編にもございました。
 
『サイボーグ009』で丈が他のメンバーと出会う前も、
こんなテストシーンでございましたな。
 
 まぁ、こういうオチは短編だから許せるし、
作者も納得してやっているのだと思います。
 
 長編でこのオチだと、夢オチと同じぐらい残念でございますな。
今までやって来たことは何だったんだってことになっちゃう。
 
 石ノ森先生の作品にもございます。
『イナズマン』と同名組織の──言わないことにいたしましょう。
 
 まとめ方が分からなくなったか、
飽きたか、何らかの理由で打ち切りになった化したのでございましょうなぁ。
 
 ちなみに関係はございませんが、
桐原書店のあるゲームブックでも、こうしたオチが使われておりました。
 
 

狂犬石ノ森章太郎 狂犬
は、「きりとばらとほしと」のところで一瞬触れましたな。
主人公が孤立無援になってしまう話でございます。
石ノ森版「転校生」(ウソ)。
解説のすがや先生もお書きになっておられますが、
ボディ・スナッチャー」や
」などのイメージが使われております。
絵的に分かりやすく、
インパクトも強いせいでございましょう。
 
この2つの映画は、
先生の他の作品でもよく使われております。
 
 

おわりからはじまる物語」。
石ノ森章太郎 おわりからはじまる物語
『リュウの道』の前駆的作品ですな。
「週刊少年マガジン」(講談社)で、
『リュウの道』の連載が始まったのが
1969年だそうでございますから、
1967年作のこの作品は、
たたき台となったと申して
よろしゅうございましょう。
  そしてこの2つの作品の間には、
 映画『2001年宇宙の旅』や
『猿の惑星』(ともに1968)が
ございます。
 
 それらの作品を見て、『おわりから~』に関して、
ああすればよかったという思いが募ったのでございましょうな。
 オールディスの『地球の長い午後』あたりの影響を受けているのかな、
とも思ったのでございますが、『地球の~』日本語訳は、
この年だったみたいなので難しそう。
 
 でも、情報ぐらいは流れていそうな気もいたします。
 
 それにしてもこのマンガ、
赤旗新聞の日曜版に連載されたということでございますが、
何ページごとの掲載なのか気になります。
 なにか、切れ目がどこにあるかよく分からないんですよねぇ。
 
 クライマックスシーンで【続く】というクリフハンガー形式は、
この手の連載の常道でございますから、きちんと終わらないで
危機が迫ったところに区切りがあるのかな、とも思いましたが、
それにしたところで、そういう見せ場がバラバラな気がいたします。
 
 そういうこと気にしないで描いたのかなぁ。
それとも単行本化するとき修正した?
 
 ところで、『009ノ1』では主人公のメイン武器になっておりましたが、
オッパイマシンガンって、この作品が最初なのかなぁ。
女性型ロボットでもないというのに──。
 石ノ森章太郎 四次元半
四畳半 襖の下張の下
『四次元半 襖の下張り』は読んでおりましたが、
こちらは未読でざいました、多分。
 
『四次元半~』のほうは、
ブラッドベリの『刺青の男』みたいな趣向で、
襖の下張からさまざまな世界を旅する
オムニバスでございます。
 
 それと同じで、
この作品もシリアスな話かと思っておりましたら、
ショートショートのようなオチのある話でございました。
 
『7P』など、こうしたSF的なショートショートも、石ノ森先生は
たくさんお描きになっておられますな。
 
 
 
 

おとし穴
 
石ノ森章太郎 落とし穴
 
p.215の「ほんとうの心」がキーワードでございますな。
 
 マンガに対する石ノ森先生の当時の心中を、
そのまま描いてしまったような作品にございます。
 
 先生の昔のマンガが好きだったというアシスタント。
 今の風祭のマンガを批判する「空気男」
 そして反論する風祭先生。
 
 前2者は、ファンや批評家の言葉でございましょうし、
最後のは作者からの反論でございますが、
作者だって今の自分が描いているマンガに対する批判は十分承知しているというもの。
 
 この3者の声は、風祭先生の、
すなわち石ノ森先生の心中の葛藤というものでございましょう
 
 最後はマンガを忘れて、
ずっと自分についてきてくれた幼なじみと自然を相手にした田舎での生活。
 
 それが、都市と田舎との対比で描かれております。
 トキ? サギ? 渡り鳥が主人公の心を表現しておりますな。
 
 田舎の湖から飛び立ち、薄汚れた都会へ。
 
 p.212で刀折れ矢尽きた姿を墜落によって表現し、
次のページでその鳥がヒロインに開放される様を描くことによって、
主人公の心がふるさとで癒やされることを暗示する。
 
 最後のページでは、
雲間から差す光に向かって鳥が鮮やかに飛び立つ姿を描き、
主人公の心の再生と開放を表現する。
 
 このような表現を直喩的だと指摘する意見は、
「龍神沼」のところで見てきましたが、
マンガの場合、この程度直喩的でないと、
わかってもらえない、読み飛ばされてしまう、ということがあると思います。
 
 実際、この作品でも、この渡り鳥が何を意味するか気に留めなかった
というかたは多いのではございませんでしょうか?
 
 
 それはさておくといたしまして、このような作品を書いたということはやはり、
 マンガに対してお疲れだったのかも?
 
 でも、本心でございましょう。
 
 
赤い砂漠石ノ森章太郎 赤い砂漠
みたいにラストに来て実は今のお話は、っていうのは、
石ノ森先生いくつか描いてございますな。
このパターン、夢オチの変形ではございますが、
それよりもラストが皮肉な結果となりますな。
 
 登場する兵士や戦車は、
『サイボーグ009』のベトナム編に
登場するのと似ておりますな。
 
と申しますか、いつもこんな感じ?
 
 こことは関係ございませんが、
それにしても石ノ森先生って、現用兵器描きませんよね。
 
 描いても、資料的だったり、必要に迫られて、といった感じ。
 
『にいちゃん戦車』という作品もございましたが、
あれも、父親がくず鉄から作ったという、
まぁロボットもののロボットを
戦車の形で出してきたようなものでございますし──。
 
 SFマンガをメインとしているので、メカは得意そうですが、
戦争反対という立場で徹底して入るのでございましょう。
 
 わたくしは石ノ森先生の作品しか読まなかったクチなので、
それあたりまえのことと思っていたのでございますが、
 
宮崎駿先生のように、戦争反対だけど戦車好きみたいな方もおられますし、
もしかすると特殊なのかも? しれません。

 
 
「天敵」・「UFO」
はUFOに関する作品。両者とも似た傾向にございますな。
 
天敵石ノ森章太郎 天敵
のほうは、そんなにひねらずに
自分の考えをそのまま書いた作品。
 石ノ森先生、UFOにとりつかれてらっしゃる、
と申し上げても過言ではございませんでしょう。
 
 第一にUFOと超能力が、
何のステップもなく1セットとして考えておられますが、
そう考える理由はそれほどございません。
それにUFOが上位存在と考えておられるようでございますが、
それも確たる根拠があるとは思えません。
 
 クラークの『幼年期の終わり』などに衝撃を受けたのかな、とは思いますが。
  
 
 「UFO石ノ森章太郎 UFO
 はストレートな作品。孤独な少年が、予知能力か妄想で
UFO襲撃の未来を幻視するという話にございます。
 
 素人が描くと、本当に一直線、
ストレートになってしまうと思いますが、
途中に会話を挟むことにより、話を広げております。
 こういうのがお話作りには重要なのですよね。
お話とは、エピソードの連続だといっていいぐらい。
 
 ただ、そうは言っても、単純な話でございます。
 少年の妄想、あるいは予知が実現するかだけでございますからねぇ。
 
 そんな単純な話だからこそ、
ラストはリドルストーリーの形式にしたのでございましょう。
ラストはどちらか、読者に予想させているのですな。
 
 これ、もし作者が結末をつけておりましたら、話は
本当に単純なものになってしまうと思われます。

 
 ところで、この工事現場の人は、石ノ森先生なのでございましょうなぁ。
それが少年だった頃の自分に語りかけている。あるいは今の少年に語りかける。
 
 そのための登場という気がいたします。
 

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