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2024/05/01 以前買った磁気ネックレスが出てまいりました。疲れていたので付けてみたのですが。確かに肩のコリはとれる。でも疲れは取れない! うーむ、そんな感じか。あ、個人の感想でございます。
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ナイトランド21 「失物之城 ピレネーの魔城・異聞」
フーゴ・ハル:著 尾谷道草:訳
(NIGHT LAND vol.21 2020/06/アトリエ・サード)
 
 この作品、『魔城の迷宮』の続編である
ピレネーの魔城』の外伝だそうでございます。
 
ピレネーの魔城』が完成しているのかどうかは存じません。
 
note」(p.64)によりますと、
 
『ピレネーの魔城』本編の書籍化も諦めたわけではない。
  物語同様の空間をさ迷うことになる超難解な立体迷路を、
  世に出さんとする勇気ある出版社の登場を待つ。(著者)」
 
とあるので、すでに作品はできているのかも???
 出来上がっているとすれば、出版のあてもなくそれだけのものを作りあげるのは、
すごいバイタリティだと存じます。
 何らかの方法でぜひとも世に出してほしいものでございますな。
(ただ「作る機会を逸したまま似た趣向のゲームや映画も登場」
 とも書いておられるのですよねぇ。
 この表現だと、完成までにはいたってないような……) 
  
とまぁ、閑話休題。
 
 失物の城  まず、ピレネーがどこかはご存じでしょうか?
  フランスとスペインを分ける山脈ですな。
  ユーラシア大陸とイベリア半島がくっついたときに
  造山運動によってできたのだとか。
 
  このピレネーの名を題に入れた
  『ピレネーの城』という絵がございます。
   マグリットの代表作ですな。
 
  『ピレネーの魔城』は、
   この城についての物語でございます。
 
  
 と、作中にもそのように書いてあるのでございますが、
関連はあまりございません
 
 何しろ、マグリットの絵は、
空中に浮かぶ卵形の巨大な岩塊の上に、ちょこなんとお城が乗っているというもの。
 
 に対して、今作の魔城はゴツゴツした立方体
 上には何も乗っておりません。
 中に人が住んでいることから、それ自体が城でございましょう。
 
 その立方体も、対角線方向に地面に垂直というわけではなく、
各辺が地面に対して並行と垂直
──要するに地面に置いてあったサイコロをそのまま持ち上げたような向き
浮かんでいるのでございます。
 
 マグリットのそれとは似ても似つきません。
ボーグキューブのほうが近いというものでございます。
 
 しかもこの城、北に向かって移動しております。
 おそらく北極まで行ったら南を目指すのでございましょう。
 
 つまり、たまたま舞台がピレネーであるだけで、
ピレネーに居着いているわけではないのでございますな。
 
 その他にも、神々のサイコロであるとか、バベルの塔との関連とか、
眉唾がいろいろと書かれてございます。
 
そのまことしやかを楽しみたいのなら、関連する書物をひもといたり、
ネットで調べてみたりするのも面白うございましょう。
 
 そのまま鵜呑みにするというのもまた、物語におぼれる1つのやり方ではございますが。
 
 さてさて、この空飛ぶサイコロには、アーレアという名がついてございます。
 
魔城の迷宮』のルドゥスと同様、
カイヨワの『遊びと人間』に出て来た言葉でございますな。
 
 なので最初読んだとき、ついつい、
対になる言葉なのかな、と思ってしまいました。
 
 アジアにあるルドゥスが地(上・下)の混沌、
ヨーロッパのアーレアが空中の秩序なのかな、と。
 
 でも、ルドゥスは「競技」。
規則的で参加者の意思力がより反映される遊びで、
対義となるのはパイディアにございます。
 
 対してアレアは、遊びを4つに分けた分類のうちのひとつ
クジやルーレットなど、に左右されることを楽しむ遊び。
 
 アーレアがサイコロの形をしているのも、そのためにございましょう。
 
 要するに、対立するどころか、まったく別の分類だったわけでございます。
 
 
    ☆   ☆   ☆
 
 この物語は9章から構成されております。
 
 1章は空中城塞アーレアについて
 今書きましたようなことが書かれておるのですな。
 ちなみにこの作品、『魔城の迷宮』の第2弾の外伝にもかかわらず、
主人公はハーマン・オクトーネさんではございません
 
 彼は、城を見た人物として1章にちょこっと出てくるのみにございます。
 
 主人公の登場は2章から。
 ここからオッカムワーダの一人称(私)となります
 
 調べてみますと、オッカムはイギリスの南部、
サリー州の村のようでございます。
 
 オッカムと申しますと、
オッカムの剃刀という言葉で有名な
スコラ派の哲学・神学者が思い浮かぶ方もございましょう。
 
 でも、その方との関係もあまりないみたい。
 
 ちなみに、オッカムの剃刀(Ockham's razor)は、
ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定するべきでないとする指針、
だそうでございます。
  
  
 それはさておき、
 このワーダの設定がいいのでございます。
  
 検閲官である彼は、各地の僧院や大学をまわり、
禁書目録に記載された書物、それにその原典となった古書を、
焚書とするために回収するのがそのお務めでございます。
 
 ですが、職務に忠実というわけでもございません。
 
 彼がローマに送るのは、
すぐにそれと分かるような見かけ倒しの代物のみ。
異端であっても後世に価値ありとみれば、
仲間に保管を依頼しているのでございます。
 
 また、ギターンをつま弾き、神の御技に疑念を挟む唄を心すさびに唄うことを
ひそかな楽しみとしていたり──。
 
 要するに、ガチガチのキリスト者ではないのでございますか。
 
 そんなお方ですからこそ、アーレアからの招待を受けることになるのでございますが。
 
 
 なんか、アーレアとか関係なく、
この設定だけで面白いゲームブックが作れると思いません?
  
 僧院に入って隠し扉見つけたり、禁書の封印を解いたり、
それと戦ったり、唄が重要な役を果たしたり……。
 
 様々な冒険の想像ができるところでございます。
 
 外伝ではない『ピレネーの魔城』では、
そんな彼の能力が発揮できる場面が用意されているのかもしれませんな。
 
  
 物語の眼目、アーレアに入ってからの見聞は、3章から8章までに描かれます。
 
 この魔城には、
アラン・カワックエ・シャーリキュ3つの王国がございまして、
それぞれが異なる〈地場〉の上に存在しているのですな。
そしてそのことが、この小説の外見にも分かりやすい影響を与えております。
 
 最初読んだときは、これら3つの〈地場〉を
三次元の基本である縦・横・高さに従っているのかな、
と思ったのでございますが、そうではございませんでした。
 
 それも道理。
 
 アラン・カワック王国が〈大地の民〉と〈地場〉を同じくしているのですから、
それでは浮揚することがまかりません。
 
 リキュ王国の〈地場〉が天を向き、その釣り合いによって、
アーレアは空中城塞と化しているのでございます。
 
 もう一つの王国、エ・シャーの〈地場〉は北。
 そのため、先ほど書きましたとおり、
このキューブは北へ向かって進み続けるのでございます。
住民が左右どちらに多いかの傾きによって、
多少方向を変えることが出来るみたいでございますが、
それもわずかなことでごさいましょう。
 
 
 ところで、ピレネー山脈のあたりの経度はほぼ0。
 つまり、北へ北へと進み、北極点を経過してさらに南下していくと、
日付変更線ぐらいを通るわけでございますな。
 
 ちょうど、ガリヴァーが遭遇したラピュータと同じあたりでございます。
 
 両者がもしも同じならば、
ガリヴァーがこの地にたどり着いた頃には、
おそらく立方体のどの面にもまんべんなく人が住んでいたため、
北や南に移動するということはなく、
太平洋上にとどまっていたのでございましょう。
 
 南北に移動するようになったのは、
その後の覇権争いでいくつかの面から王国が消えたためではございませんでしょうか。
 
 よく考えられております。
 
 と、思ったのでございますが、
 
ワーダって、ガリヴァーよりも前の時代の人なんですよね。
 
ガリヴァーがラピュータを訪れたのが170*年なのに対し、この作品の舞台は147*年。
 
 147*年に浮遊する城が存在していたとすれば、
 ピレネーから北、ロンドン上空あたりを移動するそれを
ガリヴァーが知らないと考えるのは、ちょっと難しい。
 
 いやいや逆に、この作品の結末から考えると、
ガリヴァーの時代には城は存在していなかったかもしれませんな。
 
 
 となるとやはり、この考えをくつがえすのは惜しいですが、
アーレアとラピュータは、世界線を異にすると考えた方が妥当でございましょう。
 
 
 まぁ、それはそれとして。
〈地場〉を異にする三国の住民はそれぞれに個性的
その個性も作品の魅力でございます。
 
 
 また、先ほども書きました三国の〈地場〉と連動する形式的な試みが、
この作品のもっともエポックな点でございますが、
それが単にそれだけのものでしたら、面白い試み、単なる変な思いつき、
で終わってしまいますよね。
 
 が、それだけにとどまってはおりません。
 
 最終9章には「落ち」を持ってきて、
それがこの形式をちゃんと意味あるものにしております。
 
 さすがでございますな。
 
 
 作品タイトル、『失物の城』については、ピンときませんでした。
 
『失楽園』を文字って、
失落の城」とでもしたほうが、作品的にも合っていいんじゃないかな?
などと思っておりました。
 
 
 
 ですが、「note」に許哲珮さんの同名作品から採ったとあったので、
ぐーぐるで「すべての言語」で検索し、YouTubeを見てみると、
しっかりとは分かりませんが、歌詞が漢字で表示されておりましたので、
なんとなーくの意味は分かったような気になりました。
 
 曲調も含めて、たしかにこの作品の最初か最後に流すにふさわしい気がいたします。
 
 でもね。
  
 やっぱり「失物の城」という言葉をポンと出されただけだと、
 意味不明だよー。
 
 
    ☆    ☆    ☆
 

 ところで、「note」にある似たような作品やゲームって、何のことだろう?
 気になる……。

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