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2024/05/05 國學院大學博物館を紹介した番組(Bs-12)で、縄文時代の火炎土器について、「土器のガラパゴス化」とおっしゃっておりました。なるほどー。日本人って先史のむかしから、独自の発展をさせることに長けていたのでございますな。
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ルパン三世19『戒厳令のトルネード』富沢義彦
(双葉文庫ゲームブックシリーズ/1991/12)
 
 というわけで、前回(2019/05/07) の続き。
 
 前回はあらすじ。
今回はその面白さについて迫ってみようと思います。
 
 
 このゲームブックの面白さは、ずばり物語としての面白さでございます。
 
 分岐によって展開は大きく変わり、
一度プレイしただけではそのすべてを堪能することはできません。
 
 しかも、どちらかのルートがハズレということはなく、すべてのエピソードが面白い。
 
 こう大胆に展開が変わりますと、
人物の出し入れや時間的なつじつまが結構大変なことになります。
 この作品でもそれはそうなのでございますが、
そのあたりを非常に丁寧に整合しているのでございます。
 
 わかりやすいのはスイス。ジュネーブでの潜入が終わったあと、
ルパンと行動するか、次元一人で日本に行くかで展開が分かれますが、
ルパンとならスイスでカーチェイスが入り、日本ならそのあとの山小屋で合流。
そのつながりがけっこう自然なのでございます。
 
 ユーリ・ゴドノフのシーンもそう。
マンハッタンの迷路に入る前か最後の最後、どちらかで対決するのでございますが、
違う流れが用意されていて、どちらもカッコいい。
 
 それとマンハッタン後半。
 このあたり、自力で行けるルート(わずか1でございますが)と
「銭形」を必要とする部分があるのでございます。
 どちらもそのあと歩きになって、
モニカとストリートファイターに出会うのでございますが、
出会う時間帯が両者で違うということなのでございましょう。
パラグラフを費やして、状況や戦い方を変えているのでございます。
 
 このあたり、たいていのゲームブックでは、シーンごとにまとめるなどして、
わかりやすく、事故が起こらないようにするのが普通だと思うのでございますが、
ここでは、物語の流れを優先している……。
 凝っているなぁ、と感じました。
 
 アイテムや情報といったメモしておくべき太字部分についても同様にございます。
 
 実のところ本作は、それほど難しくはございません。
 ズルをせず、正直にまじめにプレイしたとしましても、
 (↑ゲームブックの「ズルをしない」には何段階もあるような書き方……)
3回か4回かでエピローグまで行けるのではないでしょうか。
運がよければ1回で行けるかもしれません。
 
 フローチャートは素直だけれど、分岐によって激しく展開が変わるし、
太字のアイテムや情報を1回のプレイですべてとることはできないと思うんだけど、
どうなっているんだろう?
 読んだときには起こらなかった疑問が、
フローチャートを描いていてはじめてわき起こります。
 
 どういうことになっているかをたどってみると
(軽く見てみただけなので確かなことは申せませんが)、
どうやら取らないと詰んでしまうというような必須の太字はないようなのでございます。
 
 つまり、どのアイテムを取らなかったとしても、
エピローグまで行ける可能性はあるということでございますな。
 (素早く申しそえておきますと、
  関係ないところでゲームオーバーになることはございます)
 
『火吹山の魔法使い』を例に出すまでもなく、
アイテムの有無がパズル性になっているゲームブックがほとんどだというのに、
これは画期的と申しますか、独特と申せましょう。
 
 アイテムの効用としては、
ほかに物語の矛盾を排除するために使われることも多いですが、この意味合いも薄い。
先ほど書いたつながりを丁寧に管理して、それらを極力少なくしているのでございます。
 
 ですから、太字のチェックが使われるのは、主に展開の優劣、変化。
このアイテムを持っていればこのエピソードが加わるとか、
展開が変わるというものでございますな。
 その物語の変化を楽しむことが、このゲームブックのゲーム性とも申せましょう。
 
 ……。
 とは申せ、「銭形」は必要でしょうかねぇ。
彼が活動していないと、マンハッタン後半のルートが一つと、
かなり厳しくなってしまうものでございますから。
 
 物語の面白さについては、作者の富沢義彦先生、
こうしたアクションものが好きなのでございましような。
 冒険活劇やスパイもの、そしてもちろん『ルパン三世』によく通じていらっしゃる。
 
 ですから、手数が多い。
前回見てまいりましたように、シチュエーションはバラエティに富んでいて、
そこで起こるイベントもさまざまなものを用意しております。
 
 その中でのアクションもバリエーションがあり、
パラグラフごとに新たな展開があると申しても過言がないほど。
 
 よくございましょう? 
 先の展開が読める退屈な作品って。
 
 このゲームブックでは、そういうところが少なく、
先の展開が気になるところで終わっていて、
ページを繰る手を休ませないのでございます。
 クリフハンガーでございますな。
 
 しかも、多くの場面で展開には意外性と納得性がございます。
『逆転裁判』で申しますところの「オドロキ」と「ナルホド」でございますな。
 
 たとえば、次元がマグナムをぶっ放す選択がいくつかございます。
 
 スキーチェイスの場面では、迫り来る敵に対し、
手心を加えることなく、思いっきり撃ちつづけると……。
 ……。
なだれに遭っゲームエンド。
 
敵のことに気を取られて
雪山だっていうことは忘れておりますから意外でございますし、
雪山で大口径の銃をぶっ放したら、そういうこともあるな……、と納得もできます。
 
 日本で警官隊に囲まれる場面では、前方から放水車が現れます。
 前に撃って逃げようか、それとも後ろか……。
 この時、前に撃てば放水車のホースに弾があたって水圧の壁から逃れられるのすが、
これもホースを狙ったつもりはないので意外性がございますし、
放水が中断されたことで逃げられるという納得性もございます。
 
 作者の工夫と力量がうかがえる部分でございます。
 
 選択肢にしても同様。
 選択肢は選ぶ意味があり、その先の展開にもちゃんと一工夫が用意されております。
 
 意地の悪い致命的なルートがなく、
[END]から抜け出る手段が用意されているのもいいところ。
 
 選択によっては、
どちらを選んでもゲーム的な優劣には関係ないところもしばしばございますが、
物語的な違いという分岐する意味がちゃんと用意されているのでございますな。
 
 たとえば、ルパンがやるか、次元がやるか。
 どちらでも成功いたしますが、
展開が異なり、描写的な優劣があったりして、楽しめる部分でございます。
 
 安易なゲームブックですと、ここらへん、簡単に[END]にしちゃったり、
数値的要素がある場合ですと、体力減らしたり、戦闘を発生させる場面でございますよね。
 
 それを意外な展開や物語的な面白さで切り抜けているあたりは、
作者の腕の見せ所でもあり、ルパンらしさでもあるところ。
 さらに、このゲームブックの難度を低くとどめている大きな要因でもございます。
 
 ゲームブックは何度でも遊べるということから、
何度も失敗を繰り返さないとゴールにたどり着けないような
難しいものも多くございますが、
この作品は、展開を多彩にして、
何度もプレイしてみたくしているのが良いところなのでございます。
 
 描写と申しますれば、双方向移動部分。
 こういうところって、「○へ進む」など、方角の選択肢のみだったりして、
プレイしていてダレる部分でございますよね。
 このゲームブックではそうした場面でも、
描写に変化を加え、飽きさせないよう、ダレさせないようにという工夫がございます。
 
 前回見てきたマンハッタンでの、地図と対応した描写もその1つでございますな。
それだけではなく、警官隊の行動を各場所で違ったものにしたり、
ビルのらくがきやラジオの情報が入ったりと、いろいろと工夫しているのでございます。
 
 たとえば、どこでもよろしいのですが、
 
 パラグラフ294
 セカンドアベニューの交差点、イースト川沿いの道だ。
先にルーズベルト島に抜ける橋が見える。
マンハッタンの中に様々な罠が仕掛けてあるのを知ってて、
その中を通るのは馬鹿正直ってやつだ。ブルックリンから回る手もあるかな。
 
 と、次に来る選択に考える意味を持たせたり、
 
 パラグラフ373
 ウェスト59ストリートとウェストエンドアベニューの交差点だ。先は長そうだ。
慎重に行こうぜ。
 
 のように、1行あまりの文章でも、その場にいる雰囲気を出しているのでございます。
 


 このゲームブックでは、
次元の感想やルパンの台詞などをとおして臨場感を醸しだし、
プレイヤーの行動の指針を与えているのでございますな。
 
 主人公は無色透明な方がいいと、かつては言われたものでございますが、
そうとも限らないといういい見本と申せましょう。 
 
 
 

☆ ゲームブックの分類として、RPG型・パラレル小説型というものがございます。
 
 選択肢をたどるだけのものがパラレル小説型、
能力値や所持金など、数値的要素が変化するのがRPG型というわけでございますな。
 
 かつては、変動的要素があるため、RPG型のほうが本格的で優れている、
などと言われたものでございます。
 
 これは、ブームの最初の一年に安易なゲームブックが乱造されたり、
『火吹山~』以前の海外ゲームブックが数多く輸入されたことと、
ゲームブックについて書いていた方々が、
主にTRPG出身であることによるものでございましょう。
 
 当時はわたくしも、なるほど、そうなのか、と鵜呑みにしておりました。
 でも、ジャンル自体が、優れているとか劣っているということはございません。
 
 パラレル小説型のゲームブックには、物語としての工夫しがいがあり、優れた作品が生まれる可能性は十分にございます。
 
 あとは好みの問題でございましょう。
 


「私はロボットではありません」
これ、機械検索避けのおまじないだときいたのですが、ほんとうに効くんでしょうか?
 ぐーぐるさんには、ゲームブッククイズの答をばらされたりしておりますからなぁ。
 
 それはともかくといたしまして、フローチャートはこんな感じ。
   (パソコンにコピーするのでなければ、
       拡大率を500%(←わたくしのパソコンの場合)
               ぐらいにしないと読めないでしょうが)
 
 
 
戒厳令のトルネード フローチャート
 
  もう、パソコン上で清書するのはあきらめました。
 
 マンハッタンのマップ。
位置だけでしたら四方向の矢印だけで書けるのでございますが、
イベントなども中に書き足したので、斜め矢印が発生しております。
実際にはまっすぐ行くところなので、ご了承を。
  
 そのマップの下が小さく手見えにくい? わたくしもそう思います。
 次ページに書こうとも思ったのでございますが、
マップからのつながりや、それらが1つになるまとまりを描きたかったので、
むりやり押し込めてしまいました。思ったよりはコンパクトにまとまりましたし。
 
 とにかく、面白い作品のフローチャートを描くのは楽しいですな。
機会がございましたら、試してもみるとよろしいかと存じます。

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