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2024/04/28 「オタク用語は非日常の世界を描くためか、そこにはまりこむためか、日常生活にかかわる用語(たとえば衣食住・乗り物。店など)がないのが大きな特徴である。その他、表記を変えた当て字が多い」(『俗語百科事典』米川明彦:著(朝倉書店/2021/7)。うーん、確かに。って思ったけれど、あたりまえのような気も……。
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コレクションフランス語
『コレクションフランス語 4 話す[CD付・改訂版]』
田島宏:編
中川努・東浦弘樹・中井珠子・
曽我裕典・古石篤子・小石悟・田島宏:共著

(2002/12 白水社)
  
 

お薦めはできません。

 
 冬川準二先生の同人誌で紹介されていた
ゲームブックにございます。
 フランス語なんか全然興味がございませんでしたから、
当時はまぁ、目にしたら買おうぐらいの気持ちで、
あまり気にも留めておりませんでした。
 
 ですが、この前その同人誌を再読し、
あったら読んでみたいと探すようになったのでございます。
 
 とは申せ、1991年の初版
(1995年の「さかだちするふかふか」(p.9)の時点で第4刷)ということは、
今から30年のご本でございますからな。
図書館で見つけられたら、ぐらいに思っていたのですが、
どうも無いご様子。
 この手の本を古本屋さんで見つけるのはけっこう難しそうでございますし──。
 
 ところが。
 
 静岡のジュンク堂に普通に置いてございました。
 
 奥付を見ますと、2002年に付属品がカセットからCDに変わったご様子で、
2019年2月新版13版となっております。
 
 こういう参考書の類いって息が長いものでございますな。
 
 というわけで、新刊書店で今でも買える本発見でございます。
 
 
 とは申せ。
 語学の教本ですよ。
 
 フランス語に興味のないものにとって、
話のネタになるかな、程度のものでございますよね。
 
 パラグラフ数58ぐらい。
1パラグラフの文章量も、例文と日本語を合わせて約半ページ。
日本語だけだと4~6行程度といったところでございます。
 
 パラグラフ構成も非常に単純ですし。
 手に取ってみる必要もない──。
 
 のですが。
 
 予想外でございました。
 
 いい意味かどうかはともかくとして、ストーリーがスゴい
 
 
 だってね、フランス語の会話テキストっていったら、
極々平凡な日常会話を想像するじゃないですか。
 友達の家へ行く道をたずねたり、
その家で自己紹介をしたり楽しくおしゃべりをしたり、みたいな。
 
 
 でも、そういうのではございません。
 SFとかファンタジーとかではなく、現代現実の話ではあるものの、
あるにもかかわらず、とにかくぶっ跳んでおります。
 
 主人公のマキは、空港で文通相手と待ち合わせをし、彼と空港を出ます。
 ここまでは普通。
 
 だけど、空港を出たとたん
文通相手のポールは車にはねられて入院してしまいます
 
 ね、普通じゃないでしょ?
 
 最短で Fin.(おしまい)を迎えるルートだと、その後も御難続き。
 
 面会しようと病院の廊下を歩いていると女性にぶつかられ(p.136)、
その後1人で帰ると途中で強盗に遭い(p.144)、
パスポートと現金を盗まれ帰国しなければならなくなります。
 で、おみやげにスカーフ{p.50)とチョコレートを買って帰るという、
 
いいとこ無しのフランス旅行
 
 バッドエンドルートってことなのでございましょうが、
フランス語を学ぶ人っていうのは、
フランス旅行を楽しみにしている人が大半でございましょう。
 
 そこに冷水をぶっかけるような仕打ち。
 
 いや、ビックリいたしました。
 
 でもまぁ、これはいわゆるバッドエンドですな。
 
 他にもエンドは3つほどございます。
 
 拡散型のゲームブックなので、
それぞれのエンドはまったくのバラバラでございます。
 目標があってその成否を問うゲームブックとは別でございます。
 
 ただ、そのストーリーが脈絡がない。
 このゲームブックのスゴいところは、
その脈絡のなさ、因果関係のなさにございます。
 
 
 例えば、
 
 先ほど書きましたとおり、
主人公はポールに会うためにフランスにやってきたのでございます。
 
 ところが。
 事故で入院したあと、彼とは電話で話したっきり(p.166)。
 p.72で「病院に行く」と言っているので
そのあと行っているはずなのですが、
そこからの分岐では、もうまったく別の話になっております。
 
 以降、彼の話は出てまいりません。
 
 ポールは、3週間以上の入院だそうですので、
その間に起こった話ということなのでございましょうが、
それにしても、ねぇ(ちなみに病室の番号は14でございます)。
 
 これが名前もない行きずりの人ならともかく、
文通相手で、彼に会いに来たんですよ。
 
 
 3つ結末が用意されていると先ほど書きましたが、それも唐突。
スピーチ発表をして終わりとか、結婚を申し込まれるとか、
レーサーになるとか、その展開には驚かされます。
 
 構成とか伏線などはございません。
 
 物語を書いている人には、逆にこういうの、難しいんじゃないでしょうか。
 
 
 おそらく必要な会話を決め、シチュエーションを決めしていって、
それをつなぎ合わせていったのでございましょうな。
 
 会話のテキストなのでございますから、必要な場面から決めていくのは、
ごく自然なことと存じます。
 
 その中で、トラブルに遭ったときの会話は必要だ、
入院中のポールに面会する会話は要らないだろう、
カジノは入れたい、などと決めていったのでございましょう。
 
 普通の旅行会話を想定していたものといたしましては、
その展開が面白うございました。
 
 その辺りが作者の工夫と申せるかもしれません。
 
 
 そのようなわけでこのゲームブック、
見出しに書きましたように、まったくお薦めはできません
 
 物語として起承転結もなく、パラグラフ構成は単純で、
文章量も少なく、しかもCD付で高い(2400円+税)ですから。
 
 値段はともかくといたしましても、ゲームブックのコンテストでしたら、
落選する類いではございませんでしょうか?
 
 でも、わたくしとしては好きな作品でございます。
 と申しますか、こういう作品を書きたいんだな、とあらためて
 認識いたしました。
 
 わたくしのベストは以前にも書きましたとおり
天国か地獄か 恋と遊ぶゲーム』でございますが、
あの作品はライターの方が書いているだけあって
飛躍があってもつながりが自然で、滞りなく読んでいけるのですな。
 
 そのために気にならなかった部分に、
この作品では気づかせてくれたように存じます。
 
 そんなわけで、お薦めはできませんものの、
わたくしにとっては買ってよかった作品でございました。
 

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たぶんどっちも正しい感想なんでしょうけど
東野圭吾の短編「趙税金対策殺人事件」の作中作みたいなもんですかねえ。

シュルレアリスム文学にも通じますが、たまに読むとものすごく面白いけど、まとめて読むとわたしは辟易しますね、トンデモ本って……。
ポール・ブリッツ URL 2021/02/07(Sun)19:15:00 編集
「超税金対策殺人事件」は多分読んだことがございます。
読んだことないかなーと思って検索してみたのでございますが、『超・殺人事件』の他の短編のタイトルは覚えていたので、多分……。
内容は覚えておりませんが、税金対策というよりも、行き当たりばったりな旅情ミステリやサスペンス劇場のパロディみたいなもの、で合っているのかな? 
うろ覚えから申しますと、あれは外の事情が分かっているので、中でドタバタやっていても「えぇ、こんな展開になるの?」がなかったりとか、そもそもミステリは謎の一点に向かっていくおはなしなので、拡散的などこへ連れて行かれるんだろう? みたいな話とは違うと存じます。
ミステリの場合、正しい結末にたどり着かなかったり、思わせぶりな展開が伏線になっていなかったりすると、本を投げ出したくなるのですな。
(うろ覚え以下なのでトンチンカンな回答でございましょうが)。
 まぁ、いづれにいたしましても好きになる必要はございません。
 でも、ナンセンスな展開の話、わたくしは好きでございます。
道化の真実 2021/02/15(Mon)18:44:28 編集
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