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2024/04/28 「オタク用語は非日常の世界を描くためか、そこにはまりこむためか、日常生活にかかわる用語(たとえば衣食住・乗り物。店など)がないのが大きな特徴である。その他、表記を変えた当て字が多い」(『俗語百科事典』米川明彦:著(朝倉書店/2021/7)。うーん、確かに。って思ったけれど、あたりまえのような気も……。
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『大統領を捜せ!!』大統領を捜せ
てつまなぶ:著 
菊池英一 :画 
オフケン :企画協力
(西東社シミュレーション・ブックス(1)
     /1985/7)
 
 ただ者ではないポール・ブリッツ様ご推薦の
大統領を捜せ』について
少し書いてみることにいたしましょう。
 
 
 エドワード大統領が専用機ごと行方不明になった。
 10日後にはサミットが迫っている。
 国際情報局局員、ケニーことケン・田島(キミだ)は、
 大統領を救出すべく、さっそく捜査に乗り出した。
  
 では、諸君の健闘を祈る。
 

  大統領を捜せ
 
 

 というわけで、スパイ物の世界で冒険をしていくわけでございますな。
 
 大統領を捜せ
 
 前書きには、32か所の選択と、22か所のエンドマーク
 それに4つのハッピーエンドがあると書いてございます。
 
 このゲームブック、やってみるとフシギなのでございすよね~。
一本道の話のようでいて、
ふと隣のページを見ると、ぜんぜん別の展開になっている。
ではルートが何本もあるかというと、それほどの分量でもなさそうだ。
 
 では、どういうことになっているのだろう、
 と申しますと──。
 
 フローチャートを見ていただくことといたしましょう。
(この程度のフローチャートだと、チェックを入れなければ1日2日で描けるので楽)
   重要なポイントは、15と73
  そこで大きく物語は2つに分かれ、
  合流することはないのでございますな。
 
  パラグラフノイローゼの軍人を選ぶか、
 
  パラグラフ31ハーケンクロイツを選ぶと、
  ネオナチのペスト計画
 
  パラグラフ31黄金のバラを選んだ場合は
  秘密結社ゴールデンローズの伏魔殿へ。 
  と、まったく違った2つの物語が
  1つのゲームブックの中で展開されている
  のでございます。
 

  
 
 
大統領を捜せ
 しかも双方の物語とも展開が急で、
舞台がどんどん移り変わってまいります。
 
 そのため、同じルートの物語内でも
通っていないところは
まったく別の物語みたいでございますし、
逆に違うルートのエピソードでも、
1つの物語内の展開であってもおかしくはない
 
 それでストーリーが
1本にも幾重にも分かれているようにも
思えるのでございます。
 
 
 
 
 

 
 ネオナチルートとゴールデンローズルートを比べてみますと

 大統領を捜せ  大統領を捜せ
 
 ネオナチのほうが王道のスパイ物

ゴールデンローズは、多少SFファンタジーが混ざっている感じでございます。
  
 ゴールは両方とも2つ
 
 フロー構造的には、両方とも同じような感じ。
 36(ネオナチ)と122(ゴールデンローズ)の迷路で分かれ、
それぞれにハッピーエンドが1つつくという形になっております。
 
 プレーした感じではネオナチのほうが力が入っている気がいたしますな。
そういう区別はないものの、どちらかと申しますれば、
こちらが本ルートでございましょう。
 物語的にも王道のスパイ物でございますし。
 
 ゴールデンローズのほうは、本拠に乗り込んでからが特徴的なので、
もう少しそこが長かったらよかったような気もいたします。
 
 
 選択肢に関しましては、ワザと外しているような部分もあって、
頭を使えば死なないというようなものではございません。
まぁ、この手のゲームブックは、そこが楽しいところでもございます。
 
 
 
 
 
さて、 
 この作品に対する「ウォーロック」誌の記事と申しますと、
 
 まず、vol.15のp.5「かってにアトガキ!」で、
ケン・田島先生が「西東社・イズ・ベスト!」というタイトルで、
『ベースボール・ゲーム』
(レギュラーズ9・作 ダイナマイト・鉄・画)の
レビューをお書きになっておられます。
  
 その中で、
 西東社のゲームブックに対する先生ご自身の評価が語られておりますな。
 
 FFクラスと比べれば低レベル、だが裏を返せばやりやすい、
 取っつきやすく初心者向け。で、
「派手な絵、デカいタイトル、適度なオチ。
 『マジかよ~っ』『ひゃー』とか、言いながら一冊を終え、
 『ふっ』とか、『まあまあじゃん』と、言いながら帰れる味があったのです。
 こんな愛すべきゲームブックがあったでしょうか」
  
 とお書きになっておられます。
 次にこの作品にインスパイアされたと思われる作品に、
 
 「ソウル・アドベンチャー スプリンターを守れ」
 わきあかつぐみ&冒険企画局 イラスト/大迫純一
 (「ウォーロックvol.23」p.35~53 パラグラフ数160)
  
                     
がございますな。
 
 
 また、「ウォーロックvol.37」からは、
 「マーくん調査室」というコーナーを鳥居雅博先生が担当しております。
 
 このお方、おそらくケン・田島先生と同一人物なのは、
 第11号の「秘境 "黒川鶏冠山" に幻の『黄金』を求めて」から推測できます。
 
 p.25の右端の計画書に CL と書かれているのは、
      おそらくチーフリーダー=隊長のことではないかと……。
 
(このあたり、以前ブログで書いたと思っていたのでございますが見当たらない。
 どうやらどこかのコメント欄か、昔あった「ゲームブックなチャット」に書き込んだようでございます)
 
 で、同誌vol.39 p.2では、
はじめてやったゲームブックは何?>というアンケートの結果に
対するコメントとして、鳥井先生は次のようにお書きになっておられます。
 じつは私、マーくんは
7位の「大統領をさがせ」が初めてやったゲームブックなんです。
たしかに「魔法使いの丘」「火吹山の魔法使い」に比べて
謎や戦闘は微々たるものだし、解いたときの感動も負けるかもしれません。
しかし、あの清涼飲料水を飲み干すような
軽いストーリーの爽快感と独特の雰囲気、
何度も楽しめるマルチストーリー。
私は今でもこのゲームブックが大好きです。
「ウォーロック」誌に載ったものといたしましては、
こんな感じでございましょうか。
 
 マルチに展開するストーリーについてでございますが、
ザッと思い浮かべるかぎり。
このように二本のまったく別のストーリーがくり広げられるゲームブックは
西東社の作品の中でも珍しいもののように思われます。
 
 先ほども書きましたとおり、
それが一本道にもマルチに展開する物語にも思えるところがこの作品の面白いところ。
 
 反論はございましょうが、
 第一作にして、西東社のベスト、なのかも知れません。
 書いているうちに、そのように思えてまいりました。










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永六輔作詞
ゲームブックコレクターのネット友人がゲームブックを交換するというので、今ちょっとお高めになっている創元のゲームブックを目当てに、アマゾンでバカみたいに安い¥1とかのゲームブックを買っては交換してもらってますが、そうした¥1くらいのゲームブック「ザ・商社」とか「ザ・流通」とかは、交換前にその場で寝転んでゲラゲラ笑いながら読んで、全ルートをたどって結末までたどり着いて、読み終えたら送るための封筒に後腐れのない思いで詰めるのですが、代わりにもらった創元のゲームブックは、ページを開いて戦闘システムを読んだだけで、そのまま段ボールに入れて積読状態にする、という毎日で、いったい、もらった端から積読にしてしまう創元のゲームブックと、アマゾンで¥1で買った、あからさまにしょうもなくて内容が浅くて、一度読んだらなんの思い入れもなく友人にあげられるゲームブックとでは、いったいどちらがわたしにとって「完成度」が高い作品なのか、と、考えれば考えるほどドツボにはまって抑鬱症が発生してくるであります……。

♪知らないゲームブックをためしてみたい~
 どうか道化に聞きたい~

古い歌だなあ自分……気分降下中。
ポール・ブリッツ URL 2020/10/29(Thu)00:42:09 編集
個人の感想ですね。
 それに、完成度ではなくて満足度でございますな。
 面白いものは面白い、面白くないものは黙して語らずでよろしいかと存じます。
 加えて、ゲームブックと比較するのに、ゲームブックを持ち出す必要などまったくございません。
 小説やマンガ、映像作品、ゲーム……。あらゆるものが、面白さという土俵でしのぎを削っているのでございます。それに勝たなければ、ゲームブックの再興などあるはずがございませんでしょう。
 ゲームブック同士を比較するのは1つのやり方ではございますが、それだけでは視野が狭いのでは、と存じます。
道化の真実 2020/10/30(Fri)02:41:16 編集
いい方を変えれば
「ゲームブックと比較するのに他のゲームブックを持ち出す必要はない」

のであれば、

「ゲームブックと比較するのに他のゲームブックを持ち出すことをとがめる必要もない」

ということですな。

正直な話、小説やマンガ、映像作品、ゲームと正面から比較しうるだけの、同等以上の質を持った作品を、量的にゲームブックがどれほど持てたか……と考えるとまた抑鬱症が発症してきたので今日はもう寝ることにします……。
ポール・ブリッツ URL 2020/11/01(Sun)22:52:05 編集
ひと晩寝たら
ゲームブックというジャンル、いや、質量ともに他ジャンルに負けないくらい充実しているじゃん、ということに気づいたので前言を撤回するものなり。

それはそれとして、STEAMで「FIGHTING FANTASY CLASSICS」をDLしてちょっとやってみたが、戦闘のサポートなど実に快適であった。ゲームブックを電子化してKINDLEに載せるくらいではもう新規のユーザーを得ることは難しいのではないか、などと真っ暗な未来を考えてしまったのでまた抑鬱症かもしれない。
ポール・ブリッツ URL 2020/11/02(Mon)13:08:19 編集
それはいいのですが。
 このブログ、どこかしらこれからゲームブックを書く人のことを頭に入れているところがございましてな。そうすると、大海知らずでいいのか、という気分がございました。「ゲームブックと比較するのに、ゲームブックを持ち出す必要など」ないとは、そのような気分からの一文でございます。

 
 それはそれといたしまして。
 ゲームブックがまったくの過去のものだとお思いでしたら、
 それはそれでよろしいのではございませんか?
 世の中には楽しいこと、楽しいものはたくさんございましょう。ゲームブックなどすっぱり見切りをつけてもよろしいかと存じます。
 わたくし自身は、ゲームブックにはまだ出来ることがあると思っておりますが。
道化の真実 2020/11/04(Wed)18:51:49 編集
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