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2024/04/28 「オタク用語は非日常の世界を描くためか、そこにはまりこむためか、日常生活にかかわる用語(たとえば衣食住・乗り物。店など)がないのが大きな特徴である。その他、表記を変えた当て字が多い」(『俗語百科事典』米川明彦:著(朝倉書店/2021/7)。うーん、確かに。って思ったけれど、あたりまえのような気も……。
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『スーパーマリオブラザーズ vol.2ネオクッパの挑戦
  大魔王ネオクッパの挑戦』
 池田美佐/スタジオハード
(双葉文庫ファミコン冒険ゲームブックシリーズ6
  /昭和62年1月)
 

 さてさて、『マリオを救え!(1) (2) (3) から
ちょっとだけ開いてしまいましたが、
双葉社スーパーマリオゲームブック2作目でございます。
 
 もっとももちろんこの作品、
前作との関連性はいたってございません。
 
 第1弾はファミコン『スーマリ』のノリを 
キチンと表現したものではございましたが、
それが安っぽく思われたか、子供っぽく思われたのでございましょう。
 
 今度のマリオはSF
  
 クッパを倒し、ピーチ姫とまみえた瞬間、とつぜん起こる大爆発。
 マリオは500年後の世界へタイムワープするのでございます。
  
 冒険の舞台・ファンガスは、
 クッパに支配された未来のキノコ王国みたいでございますが、
 原作のおとぎ話っぽい感じはございません。
 敵はアーマード、ハイパーとサイボーグ化されており、
 見た目だけでも強敵にございます。
 
 これって、勁文社
スーパーマリオブラザーズ外伝』の影響があったのかもしれませんな。
 あれだけ原作とはかけ離れた世界が受け入れられたのなら、
さらにぶっ飛んだ世界でやってもいいはず。
いや、やらねば。
そんな思いが入ったような気がいたします。
 
 
 敵のサイボーグ化に対抗すべく、
主人公のマリオもアーマードスーツを身にまといます。
 
 さらに、道中でミサイルやバリアなどの武器をそろえて、
敵に対抗していくわけでございますな。
 
 というわけで、今回「キミ」は、そのマリオになるわけでございます。
 
マリオを救え!』では、
主人公はテレビゲームの世界に入り込んだキミだったため、
元気な子供または少年以上の個性はございませんでしたが、
今回は違います。
 
 主人公のマリオが、とにかく威勢がよく、やたらとかっこいい
 
 
 主人公が無色透明のキミの場合、
プレイヤーの意思に近い行動が出来るというメリットがあり、
また、選択肢や作品内容もそのようなものが期待されますが、
 反面、
個性的には弱い面があったり、
行動にブレや矛盾が起きたりする場合がございますな。
 
 それに対して、
主人公がキャラクターとしての個性を持っている場合には、
プレイヤーの性格というよりも、
キャラクターの性格、ストーリーに則した行動とあいなります。
 
 この作品のマリオの
目標に対する強い意志、ガンガン攻めていきそうなノリは、
プレイヤーをその気にさせる役に立っていると存じます。
 
 加えて、このゲームブック。
 特筆したいのは、何より

ルイージがかっこいい!! 

そして、
 
マリオに信頼されている。
 
オレにはお前という最強の味方がいるじゃないか!!
と、マリオに言わしめているんですよ。
 
クッパめ、覚悟しろ! 
 1+1が5にも10にもなるマリオ&ルイージコンビの挑戦だ!
ですよ。 
 
プロローグ

   (↑ プロローグ。ベビィマリオはもしかしてここから?)
 
 他の作品では、
マリオに隠れて影がうすかったり、恐がりだったり、ぼけてたりと、
2番手ポジションをほしいがままとするところでございますが、
この作品ではしっかり活躍してくれます。
 
 時空を跳んだ際にマリオと別れ別れとなってしまうので、
いっしょに戦うのは跳躍前と跳躍後のラストだけではございますものの、
  
 クッパ戦では『スーマリ2』で差別化された高いジャンプ力で
敵の背後に跳んでとどめを刺しますし、
ネオクッパの城では門番のクリボーたちをやっつけ、
マリオとともに巨大クリボーを倒し、
秘密の抜け穴を発見するという活躍をしております。
 
 ただし、ネオクッパ戦ではルイージは
ピーチ姫とチェリーを助けに行くため、
タッグを組んでの攻撃とはならないのでございますが――。
 
 まぁ、そこら辺、最後は主人公一人で、ということなのでございましょう。
 
 
 
 ウィキペディアを見ますと、
『スーパーマリオブラザーズ2』1986年(昭和61年6月)の説明書には、
無鉄砲な性格」と書かれているのだそうでございますな。
 
それが反映されたのでございましょうか。
 
 ちなみに(ネタバレではございますが)、
ネオクッパさんのお城にたどり着くまでには、
ニセモノが何回も登場いたしますので気をつけて。
 
 他には、クッパさんのニセモノなんかも――。
 



    
 さて、
 
 物語の流れといたしましては、
 クッパとの戦いで爆発に巻き込まれたマリオは、
超近代的な建物のベッドで目を覚まし(199)、
そこにいたナースに状況を聞かされます。
 
 彼女の名はチェリー。
 
序盤のナビゲート役といったところでございましょう。
マリオのサポート役として行動することになる、
ピーチ姫とはまた違った魅力を持つ女性でございます。
 
 ここがネオクッパに支配された未来だとチェリーから聞かされたマリオは、
彼女からアーマードスーツを受け取り、
ここでもとらわれの身となったピーチを救うため、単身空港を目指します。
 
 空港でチェリーと合流。
彼女の能力を知ったマリオは、彼女とともに船に乗り込み(110)、
敵との戦闘とあいなります。
  
 その後、
着陸してネオクッパ衛星基地をめざすのでございますが、
その道中、チェリーは連れ去られてしまい(76)、
そこからは一人旅となるのでございますな。
 
 ネオクッパ衛星基地(386)から、地下を通って地上へ。
  
 そこから道は、東西南北へと分かれます(123)。
 
 ここのところ、
 一見双方向移動型だと思いがちですが、そうではございません。
 これは、一方向移動の束ねたロープ型
  
 つまり、
東西南北のいずれかに行って条件を満たしたら、
他の方角に行って条件を満たし……、
を繰り返す形でございますな。
 
 このゲームブックの場合、
ここで赤・青・黄色のファイヤーフラワーを集めるのでございます。
それを持っていると、それが金の鍵に変わり、
ネオクッパ城に入れるようになるのでございます(290-349-51)。 
 
 ただし、束ねたロープ型とは申しましても、一筋縄ではございません。
 川に流されたり、跳ばされたり……。
 
「この本の遊び方」のp.8には「堂々めぐり」について書いてございますが、
同じところでぐるぐるしてしまう危険性があるのでございます。
 
ピーチとチェリー  
   (↑ ピーチ姫とチェリー)
 

 とは申せ、前作よりは簡単。 
 
 前作、『マリオを救え!』の場合、原作準拠でございますからな。
  
 風景の描写が単調で、しかも
その並びに整合性がなくても物語的になんの問題がないものでございますから、
とつぜんどこかに跳ばされても、
跳ばされたこと自体に気づかない場合が往々にしてございました。
 
 が、本作では跳ばされたとわかる描写かあることもございますし、
それぞれの場所が
『マリオを救え!』ほど簡単な描写でも脈絡のないものでもございませんから、
あっ、ここ来たことある、とわかるのでございます。
 
 気づかないまま延々ループということは、まずございません
 
 ですから、「堂々めぐり」に関する注意は、
今作についてというよりもむしろ、
前作が解けなかった方に対するメッセージなのだと思います。
 
 道中には迷路や間違い探しなど、簡単なパズルもございます。
 ストーリーに絡ませてはいるものの、融合というほどではございません。
そのあたりは『ガバリン』などと同じでございますな。
  
 迷路に関しましては、見開きページの迷路のまん中あたりが見づらい……。
手描きなので、余計に紛らわしいといえるかもしれません。
 ま、よくあることではございます。
 
 で、その見づらいあたりが、重要だったりするのでございますよね。
これもよくあること、とは申せ困ったことでございます。
 まぁ、答が分からずとも、二択か三択なので問題はございません。
 
 変動する数値は、体力」「頭脳」
「ジャンプ力」「パンチ・キック力」
それに「コイン」
 
 戦闘にはサイコロや乱数は使わず、
これらの数字か、それをいくつか足したものが数値以上か以下かと、
アイテムの有無などで、判定をいたします。
  
 池田美佐先生のゲームブックと申しますと、
小学館やファミ通ゲーム文庫のそれを思い出して、
単純な構成と想像する方もおられるかもしれませんが、
この頃はそうでもなかったようでございます。
 
 それなりに手ごわい造りにはなっていると存じます。
 
 でも、ストーリー的には単純かな。
 
 ネオクッパを倒すという直線的な目標がございますし、
戦闘とアイテム集めが基本でございますし。
 
 それを、
クッパ戦から
未来へ跳んで宇宙戦での戦闘、
市街地の冒険、
東西南北に進むフィールドアドベンチャー、
そしてネオクッパ戦と、
場所を変え、展開を派手にして
飽きさせないようにしているのでございますな。
 
 ナビゲーター役であるチェリーの存在も、作品の魅力となっております。
 
 ラス2である400では、
マリオたちが元の世界に戻っただろうことを彼女視点で描き、
エピローグでは
マリオたちが今回の事件とチェリーについて思いをはせるーー。
  
 彼女に始まり彼女で終わることで、
未来での冒険が、彼女とともにあったことを印象づけているわけでございます。

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悲憤慷慨しちゃう宿命なのです(汗)
前からなんとなく思ってることですけど……西東社のシフトカード以上に安易な発想だったのが、
「双方向移動迷路」と、
「複雑なパラメータ管理」と、
「アイテムと情報の読者管理」
だったと思うんですよね。この三つがゲームブックの「マニア向けアイテム化」を推し進めて、市場を加速度的に小さくし、同時に表現としても痩せ衰えさせて、ゲームブックを焼け野原みたいにした元凶だと思うんですよ。そしてそれには、ゲームブックの拠り所であったはずの旧「ウォーロック」誌自体が大きく関わっているし、ある意味この自体を招くのは当然の帰結だったとも考えてます。

何よりも大きかったのは、「火吹山」信仰とでもいうべきスティーブ・ジャクソンの神格化ですな。「火吹山」や「ソーサリー」はたしかに名作ですが、あれはその気になってはいどうぞ、とやるタイプのゲームブックじゃないでしょう。準備と、それなりの長いプレイ時間を見込まなくちゃならない。そうした時間的余裕を必要とするゲームを持ち上げ、人気投票でもそうしたゲームブックばかりを上位においた結果、そうしたゲームブックしかまともに取り扱われなくなった。西東社などのゲームブックは、「子供向け」の、「まともに大人が語るものではない」作品としてしか扱われなくなった。その結果として何が起こったかというと、「難易度至上主義」とでもいうべきものです。そうでもなければ売れないんだからしかたがない話なのですが、難易度を上げるための誰にでもできる手っ取り早い手段が、「双方向迷路を複雑にして」「パラメータを複雑にして」「情報とアイテムをとんでもないところに散らす」ことだったわけです。これにパズルマニア好みの暗号や論理パズルを加えればなおよし、というわけで、それが「正しいゲームブックファンの好むべきゲームブック」だという誤解が広がった。

それに気づかせてくれたのが、90年代終わりごろに押し入れから久しぶりに林友彦の「ネバーランド」三部作と「ウルフヘッド」上下を引っ張り出してきてさてやってみよう、としたときですな。「リンゴ」にとりかかって一時間後にはふたたび押し入れ行きですよ。アマゾンで「紅蓮の騎士」を取り寄せたときも、ルール読んでから積読状態です。

なんというか、ゲームブックは「浸透と拡散」に失敗したんでしょうな。ライトに楽しむべきマリオのゲームブックですら、双方向迷路を行ったり来たりする構成にして誰もおかしいと思わなくなった時点でゲームブックというジャンルの敗北というやつです。ターゲットであるはずの小学生は、一時間くらいで飽きてやめてしまわなかったらよほどのつわものでしょう。続きを追おうとするにも「攻略本」すらないわけですからな。

単に生き残るだけなら、「マニア好み」を徹底して、「伝統芸能」にしてしまうのも一つのありかたです。シミュレーションゲームがそれのいい例ですね。「ゲームジャーナル」と「コマンドマガジン」が出版されてますが、いったい中年過ぎたマニア以外の誰があんな雑誌買うんですか、です。いまの「ウォーロックマガジン」を読んでも、似たような危機感しかわたし覚えないです。「実際にキャラシートを作ってサイコロを振ってプレイしてほしい」って、海外のFFのレビュー書いた雑誌を1980円で売るという……逆だろ?! とわたしはいいたくなるんですよね。もうなんというか。

これじゃ任天堂に千年たっても同じテーブルにつくことすらできないまま、歴史の中にもう一度埋もれて行くだけでしょう。「ゲームはときに死滅するよりも過酷な運命を担うことがある」って誰だかが「ハルマ」の「チャイニーズ・チェッカー」化を嘆いてましたが、そんなことにゲームブックをしてはいけない、とわたしは思うんです。

長々と失礼。
ポール・ブリッツ 2020/09/16(Wed)20:25:56 編集
このコメントの返信は、2020/09/21の記事『難易度と完成度」で書いておきました。
「悲憤慷慨しちゃう宿命なのです(汗)」に対するものですな。お手数ではございますが、そちらをお読みくださるよう、お願いする次第にございます。
道化の真実 2020/09/22(Tue)17:44:24 編集
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