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2024/05/01 以前買った磁気ネックレスが出てまいりました。疲れていたので付けてみたのですが。確かに肩のコリはとれる。でも疲れは取れない! うーむ、そんな感じか。あ、個人の感想でございます。
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その5語、巨匠たちは、『その午後、巨匠たちは、』
藤原夢雨
(河出書房新社/2022/2)
 
 
 注釈によってつながっていく小説
ということで買ってみました。
 
 フーゴ・ハル先生が『R・P・G』に
連載していた「虚しい口」みたいに
分岐したりループしたりがあるかも? 
と期待したのでございますが、
予想どおりそういうものはございません。
 
 節の中にアスタリスクは一つ。
 その*部分の註がその文章に続きます
 
 例えば「北斎」だったら、北斎の説明がひとしきり入り、
「北斎は」というふうに、自然にお話に戻っていくわけですな。
その間に段落を挟むこともございません。
ごく自然に続いていくのでございます。
 
 初登場の人物や物事を説明してから物語を続けていくということは、
別段珍しいことではございません。
 ですからひどく変わったことをしているというわけでもございませんが、
これが作品にある種のテンポを与えていて面白いのでございます。
 
 それと、最後の方、画家たちが退場する場面。
そこでの注釈は句点の意味を果たしている気がいたします。
そのために注釈小説という形を採ったようなような気もするのでございます。
 
 
 
 
 
 ジャンル的にはマジックリアリズムでいいのかな。
 本の紹介をそのままもって来ちゃうと、
 
町にふらりと現れて、空き家に棲み着いた、歳を取らない女・サイトウ。
彼女が山の中に建てた神社が祀るのは、6人の巨匠画家ーー
北斎、レンブラント、モネ、ダリ、ターナー、フリードリヒ。
やがて町は、
神様として現代に蘇った画家たちの描く絵画世界に染まっていくのだったが…。
 
 有名な画家たちを集めてご神体にしたのは、
彼らが巨匠としてあがめたてられている、
つまり信仰されている、
信仰されているのならであろうという理屈なのでございますな。
 
 その結果はみごとに現われ、
北斎の絵を神社に置くとテレビの中のタレントが役者絵風に、
モネの絵だとあたり一面が
印象派風のふわふわとした光に包まれるといった具合にございます。
 
 そうして山に住むことになった画家の方々と、
幻想にふわっとくるまれた漁村の日常が
サイトウを中心に描かれていくことになります。


 特に事件が起こるわけでもなく、
巨匠たちとサイトウを中心とした村の方々の日常が淡々と描かれるので、
いったいこの話の着地点はどこにあるのだろう、
巨匠たち6人の絵が飾られて、
村は幸せに包まれ、祝祭的な雰囲気の中、フェードアウトしていくのかな、
などと思っていたのでございますが、そんなことはございませんでした。
 
 ある一点を転として、物語は性急といえるほどの展開を見せていきます。
最初はわずかばかりの変化と思えたのでございますが、それが怒濤の展開に。
 
 筆はクライマックスで止め置かれております。
 エピローグはございません。
 文学でございますな。
 
 わたくしといたしましては、
石ノ森章太郎先生『ジュン』あたりの一枚絵で終わる作品を連想いたしました。
 
 
 
 ラスト「ひとり自分の身体で受け止めた」でございますから、
吉郎の心の中で起こったこととも解釈できますが……。どうなのでございましょうねぇ。
 
 できれば村が平和と幸運に包まれて存続していったと考えたいものでございます。
 
 文章は読みやすく、言葉の使い方にも工夫があってうまい。
 作品としてもまとまっております。
 
 でも心情的には、
巨匠たちとサイトウを中心とした村の平和な生活をもっと見てみたかったなぁ。
 
 そして、幸せのうちに終わって欲しかった。
 足が地に着いていないふわふわした感じでありながら現実味のある描写で、
そのためにそう思ってしまいます。
 
 そう思わせることが、
クライマックスを効果的にしているのではございましょうが、しかし──。

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