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2024/04/19 高島屋の1040万6000円のお茶わん。約180万円で買い取ったお店が、すぐに別の店に約480万円で転売したそうですな。最初買い取ったお店は、盗品って気づかなかったのかなぁ。それとも事件のことを知ってて買い取り転売したのでしょうか? まぁ、知らなかったとおっしゃりますのでしょうなぁ。いづれにしましても、1040万の品も売るとなるとこのぐらいの価格なのでございますな。
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『サキの忘れ物』津村記久子サキの忘れ物
新潮社(2020/6)  
 
 
ちょっと間が開いてしまいましたが、
『サキの忘れ物』に収録された他の作品についても、
少し触れておきましょう。
 
 
「喫茶店の周波数」
閉店間際の喫茶店。
そこに注文も決まらないのにいちいち店員を呼び出す客がやってくる。
隣の席に座ったその客を不快に思いながら、
その店で見たさまざまな客のことを思い出す。
 
 
「サキの忘れ物」
アルバイト先の喫茶店に常連の客としてくる女性が忘れていったサキの短編集。
それが気になって千春は同じ文庫を買ってみる。
それが彼女の初めて読み通せた本となった。
 十年後、近くの書店で正社員として働いていた彼女は、
本を読むきっかけを与えてくれた女性と再会する。
 
 
「Sさんの再訪」
大学時代の友人、佐川さんから葉書が届いた。
離婚して帰郷するので会いませんかという内容だ。
どんな人だったっけと、当時の日記を見直す田口。
だが、人名がすべてイニシャルで書かれていて、
その上Sから始まる人が多くてわからない。
 それをなんとか読み解いていくうちに、
やがて自分の夫の昔から変わらない性格に気づき……。
 
 
「隣のビル」
会社の隣にあるビルが気になる。
休憩時間にロッカールームから見える三階の窓が気になる。
どうしても気になって、私は隣のビルの屋上へとジャンプする。
 たまたまその部屋の住人と出会い、話すうちに、
私は肩の荷が下りるのを感じ……。
 
 
「王国」
光を見つめていると現われるラッパムシのデリラ。
傷口に浮かび上がる女王が治める王国。
幼稚園児ソノミの現実と空想をめぐる話。
 光の中、デリラは漂う。
 
  
「河川敷のガゼル」
P市Q町C川の河川敷に現われたガゼルに関する顛末。
主人公はアルバイトで警備員となった私。
そのガゼルをどうするかという市の動向と、
SNSにその写真を上げ続ける女性、
三週間に一度ぐらいやって来て一日中じっとガゼルを見つめている少年を軸に、
物語は展開する。
 南国の動物園に引き取ってもらおうとする市に対して、
ここのほうが広いのだからこのままで、寒さ対策をすればいいと主張する女性。
彼女はSNSなどを通して、一万の署名を集める。
 とある日、上流にガゼルは走り出し……やがて見えなくなった。
「行け! 行きたければ行ってくれ!」少年は叫んだ。
 
 
「行列」
「あれが無料で見られるなんてすごい」
というものをめぐって延々と連なる行列。
役所でたらい回しにされるコメディやカフカの「城」のように、
目的地には延々到達できず、時間とストレス、出費がどんどん嵩んでいく。
風刺的な作品。
 
 

「ペチュニアフォールを知る二十の名所」
ペンシルベニア州の観光名所・ペチュニアフォールを
旅行社のガイドが紹介する。
魅力あふれる観光地として楽しく紹介していくのだが、
その言葉の端々に、陰惨な歴史が垣間見えてくる。
野坂昭如先生の「骨餓身峠死人葛」を思い起こさせた。
サタイア(風刺的)な作品で、この短編集の中では異色。
 
 
 
     ☆      ☆       ☆ 


☆ 本の収録順とは異なり、
  現実から非現実という感じで並べてみました。
 
「隣のビル」
までが、まぁ現実。
「王国」はその中間。
「河川敷のガゼル」からが非現実といったところでございましょうか。
順番は異なる意見もございましょう。
 全体として、振れ幅はあるものの、スコシフシギな話という印象を
わたくしは持ちました。
 
現実の一コマを描いたような喫茶店の周波数」にいたしましても、
その構築からでございましょうか、はたまた文体のせいか、
それを感じまする。
 短篇としてキッチリとまとまっているところが、
スコシフシギを感じさせるのかもしれません。
 
 登場人物は個性的で、奥深くございます。
すべてに対して背景が考えられているのでございましょうな。
 描写は具体的で、それが作品に奥深さを与えております。
 
 あと、現在状況からの脱出
Sさんの再訪」「隣のビル」「河川敷のガゼル
それに「行列」といったあたりにそれを感じましたな。
 
 まだ書くことがあるような気もいたしますし、
まとまりもございませんが、わたくしの感想といたしましては、
こんなところでございましょうか。

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