篠田節子
(2008/12 新潮社)
"The Seisen-shinpo-Kai Case"
p.146まで。
(前回から動いてませ~ん:)
(今回は、外伝といいますか、ちょっと脇道にそれた内容です)
小説の時代は、アメリカの同時多発テロが出てくることからして、2001年。
つまり、主人公がゲームブックを上梓しようとしたのも、そのあたりということだ。
創土社のゲームブックの刊行が始まったのが2001年の11月だから、
困ったことに、もっともゲームブックが出ていない頃なのだ。
そのときに、ゲームブックを中核としたマルチメディア展開というのは、ちょっと無理っぽい。
まあ、コンピューターのアドベンチャーゲームを中核にというのならまだありえるかもしれない。
でも、そうなると今度は、もっと関わってくる人数が多くなってしまうから、
話がわかりやすくならないか、うそっぽくなるのだろう。
それにしても、だ。
『グゲ王国の秘宝』は、四百字詰め原稿用紙にして、5000枚。
作者の鈴木正彦は、それを1日40枚のノルマで、5ヶ月で完成させたという。
しかも、彼はエリートコースの地方公務員だ。
ソフト会社との折衝が続く日は、家に帰るのが12時というハードスケジュールの中で、
ノートパソコンを持ち歩き、細切れの時間を利用して書き続けていったのだそうだ。
執筆スピード、体力、集中力、
とにかく、小説を書くためのすべてが彼には備わっていたといっていいだろう。
それに彼は、これがまったくの初めての作品というわけではない。
公務員生活のかたわら、アニメやゲームのシナリオを書いたり、
ゲームのノベライズも覆面作家として手がけたりしていたという。
このゲームブックにしても、最終稿まで完成させていたわけだし、
作者も彼の担当の矢口も自信を持っていたようだから、かなりの完成度だったのだろう。
確かに、5000枚のゲームブックが灰燼に帰したことは痛かっただろうが、
そんな作品が書ける作者ならば、
次の作品に再起を賭けることは、そんなに無鉄砲なことでもなかっただろうと思う。
無に帰したといっても、書いたものと調べた知識は自分のものとなっているはずだ。
『グゲ王国の秘宝』を書くあいだにも、別の作品構想が浮かんでいても不思議ではない。
何も思いつかなかったのだとしたら、
『グゲ王国~』を小説化、とか、その一部を拡大して外伝を書くという手もあるだろう。
別に宗教事業などに乗り出さなくても、作家としてやっていけたのではないだろうか?
もちろん、会社を辞めてしまっているので当座の生活には困るかもしれないが、
昔のツテをたどってゲームノベライズを書かせてもらうこともできるだろうし、
それが無理なら当分アルバイトで糊口をしのぐのも仕方ない。
体力も常識も行動力も実力もあるこの作者ならば、作家としてちゃんとやっていけることだろう。
で、作家としてやっていけば、もしかするとそのうち、目にするかもしれない。
創土社の「俺に書かせろ!」というゲームブック募集の告知を。
そのときにこそ、おもむろに『グゲ王国の秘宝』を提示すればよいのだ、
5000枚は多いかもしれないが、
内容が素晴らしいものならば、それは関係ない。
(むしろ、いいとさえ言えるかもしれない)
出版されていれば、きっと反響を呼ぶものになっただろう。
ゲームブックの状況も、現在とは違うものとなっていたかもしれない。
(結局、これが言いたかったのですね)
えっ、妄想? まぁ、そうなんですけど……。
リンク先は微妙にネタバレがあるような,無いような感じなので,後々ご覧くださいませ
まぁ、最初の段階でこれだけ理想的に描かれますと、あとの展開は推して知ることができるような……?
二人の関係にいたしましても、信者の方々にいたしましても、伏線と申しますか、その芽は見えてきておりますしな。
とは、申せ、う~む。
それはさておき、この『仮想儀礼』の記事。
まとめるだけの時間がないものですから、
だらだらと長いものになりそうでございます。
と申しますか、書きおわる前に返却期間が来そうだという……