『いぬかみっ! Exわんっ!』
有沢まみず イラスト/松沢まり (2007/9 電撃文庫)
p.11-102
ついでなので、 引き続き、第一章のほうについても書いておきましょう。
う~む、ライトノベルの最初は、
新井素子先生の「あたしの中の……」にしようと思っていたんですが。
まあ、あまりこだわっていると何も書けなくなるので、
順序や形式は気にしないことにいたします。
というわけで、「襲来! 赤道時子」でございますが、
読んでいるうちは、どうなることかと話の行方を追っていたのでございますが、
読後思い出してみますと、意外にオーソドックスな展開でございました。
どんな感じかと申しますと、
(ネタバレが嫌いなかたは、以下の文章を読む前に、作品を読んでくださいませ)
主人公のもとに、小学校低学年のときに結婚の約束をしたという
赤道時子さまが押しかけてきます。
その結婚の誓いというのは、
まあ予想がつくでしょうが、子供時分のことですし、
そのあと彼女はすぐに転校していってしまいましたし、
要するに赤道さまのほとんど一方的な思い込みなのでございますが、
思い込みの強い彼女のこと、強引にことをすすめようとするわけですな。
で、啓太さまの犬神であり、恋人(といっていいよね)である
ようこさま(犬神ではなく実は妖狐だったりするのですが)
と対立するわけでございます。
『うる星やつら』で申しますと、
ラムとしのぶが、
諸星あたるをめぐって全面対決という感じですかね。
ようこが火炎使い、
時子が巨大なハンマーをふり回すあたりも、
『うる星やつら』の二人と似た感じが……
(まぁ、他の技もあるのですけどね)。
直接対決ではアパートごと壊れてしまう!
そう確信した啓太は、どちらが自分の嫁としてふさわしいか、
テストして決めるとふたりに申しわたします。
まずは、料理対決。
結果は……。
……。
パターンどおりと申せば、
まあ予想がつきますな。
啓太の作ったものが一番おいしいということに。
それではと、
犬神つかいの本業である、邪霊退治のアシスタントとして
どちらがより役に立つかで判断しようと、
実際に、二人を
現場である洋館に連れて行くのでございますが。
二人が対抗心むき出しに力を振るいあったために、
恐ろしいことにあいなりまする。
邪霊たちは許しを乞うて逃げ惑い、
それを二人が狂気の笑みで追いかけ……。
邪霊は退治できたものの、
二人のありあまるエネルギーは啓太に向かい、
彼女たちはふたたび一触即発に――。
とここで、調停者の登場でございます。
オーバーロード、水戸黄門の印籠、デウス・エキス・マキーナ、
何と呼んでもよろしゅうございますが、
時子さまのお母君が
微笑みながら圧倒的な力でこの場をおさめます。
彼女には逆らえず、
結局、時子とようこは座禅をさせられるはめに――。
というわけで
わかりますでしょうか。
この種の話としては、一つの典型でございますな。
ただし、そのオーソドックスな展開をちゃんと読ませてしまうあたりは、作者の力量だと存じます。
特に、キャラクターの暴走っぷりが良いですな。
前書きで、
(流れが変わってしまったため、本編では出せなくなってしまったけれど)
「時子は自分が創作してきた女の子の中でも一、二を争うくらい気にいってます」
と書いているだけのことはございます。
というわけで、しっかりと楽しい作品でございました。