楽しみながら地理・歴史が学べる
相原冬彦(シミュレーションプログラム研究会) 著
studio/s プロデュース
REIKO イラスト
(アドベンチャーゲームシステム(1) 1985/09,白馬出版)
紹介文を追加しておきました。
あと、ちょこちょこっと変えておきました。
時は、1900年。
日本の方にわかりやすいように申しますと、明治33年ですな。
ジュール・ベルヌの『80日間世界一周』(1872年)
に触発された宮崎賢治少年が、世界一周の旅に挑戦する。
期間は、5月25日から8月13日までの、もちろん80日間。
その日までに、
賢治少年(当時の中学生、つまりいまの高校生ぐらいの年齢ですな)は、
出発点である皇居二条城前に戻ってこれるのか?
と、まあ、そのような話でございます。
80日間世界一周というわけですから、
もちろん時間をチェックしていくわけでございますな。
そういうゲームブックでございますから、
さぞかし緻密な時間管理が必要なのだろうな、と思うでしょ。
ところが、そんなことはございません。
もう、不案内な地での旅、つまりは冒険ですからな。
だいたいこのぐらいの行程でいくだろうとか、
こっちのルートとこっちのルートでは、こちらのほうが早いだろうとか、
この乗り物のほうが……というのはまるきり無意味なのでございますよ。
海賊に遭ったり、牢屋に入れられたり、線路が爆破されたり……。
波乱万丈なのはよろしゅうございますが、
作者がそうやって時間を調整しているのが透けて見えてくるのですな。
まあ、80日ぎりぎりあたりに落としこむためなのでございましょう。
とは申せ、その日数のつじつまのあわせかたが、少々安易な感は否めません。
もうちょっとそこらへんで凝ってくれると面白かったのに、残念でございます。
あるいは、スゴロクのようなボードゲームにすると面白いかも。
あるマスにとまったらイベント(トラブル)が発生するような……。
それだと80日ピタリにするのは、難しくなるでしょうけどね。
それに、そのようなゲームは、すでに何かありそうでございますな。
(そのものズバリのタイトルのボードゲームもございますが、他にも何か……)
さて、このゲームブック、
ゲームブック倉庫番には、102ページと書いておきましたが、ちょっと違うのでございますな。
この本を読むのには、本自体を90度回転させる必要があるのでございます。
つまりNintendo-DSを持つような感じですな(いまの時代だからこそできるたとえ)。
で、その見開きの上部がTV画面のようになっていて、
そこにイラストが入り、その横に時間を記録するチェックシート、
そして見開きの下部には、本文というわけでございます。
まさにNintendo-DSのような画面構成。
この作品こそゲームブックDSにふさわしいと申せましょう。
……。
まっ、それはさておき、
つまりその見開きで一つの単位という感じで、
ページ数だかパラグラフ数を打ってあるわけですな。
それをページ数と解釈して、102ページと書いたわけでございます。
なぜページ数と解釈したかと申せば、
選択肢までの文章が、何ページにもわたっている場合があるからですな。
パラグラフと申すのは一区切りの項目でございますから、ゲームブックの場合、
項目のはじめから選択肢まで(ここでいう選択肢は1択の場合も含めます)が1パラグラフ
というのが常識的でございましょう。
ですから、この場合はページ数と解釈したというわけでございます。
※ ※ ※
「教科書で勉強するなんてもう古い」
と惹句されておりますように、このゲームブック、
歴史や地理の学習書的な意図も込めて作られたようでございますな。
それは、下画面(と言っていいよね?)の地の文にも書かれているのですが、
むしろ上画面のTV枠の中でございますな。
そこに地図や解説の文が書かれて、
それに教養的な側面を持たせているようでございます。
でも、あまり頭に残らなかったよ~な……。
もっと精巧な地図だったり、カラーだったら良かったのにね、というところでございましょうか?
さて、
ここからちょっとネタバレ。
ですので、消しておきますね。
ラストには、原作である『80日間世界一周』と同様なトリックが使われております。ただしこちらは逆周り。
そこらへんが新味ではございますな。
このトリック、原作でも絶大な効果を発揮しておりましたが、それを読んでいても失念しておりました。
と申しますか、ぴったりその日にならないと意味はないのですけどね。
『80日間世界一周』を読んだり見たりしていないし、上の文じゃモヤモヤする~!! と申される方は、ウィキペディアの当該記事でも読んでくださいな。
で、逆回りという意味を考えていただけば、だいたい見当がつくと存じます。
う~ん、ネタバレですな、やはり。