第2部
(ここで便宜的にそうつけているだけですよ。本文中には何部とか書かれておりません)は、
ゲームブック部分であり、ベストカップルを見つけ出すことに特化している、
と前回書きましたが、そのわりに、自由度は高くないのですな。
コンピュータゲームでしたら、
誰と誰の組み合わせを試してみるというのが自由にできるのでございますが、
ゲームブックの悲しさか、容量不足ということなのでございましょうな。
選定する順番はストーリーの力でわりと決まっていて、けっこうストレートなのでございます。
そのうえ、形式的にはクイズ型。
間違った選択をすると、どんどんDEADENDになるものですから、
フローチャート的にもけっこう一直線なのが感じられます。
しかも、前回書いたとおり、
カップリング選定に、あまり論理が感じられない
のでございますから、困ったものでございます。
ゲームブック編が終わった後、
何らかの答えが提示されるのでしたら、よしといたしましょう。
でも、全員が脱出後、つまり第3部になっても、
その意味合いはほとんど解説されないのでございます。
あるとしても、納得のいかない強引なものだけで。
脱出後、先に抜けた人たちは、
後に残っている人たちの奮闘をテレビ画面越しに見ているのでございますが、
そこでも、誰が誰と親しいという感じは特になかったように存じます。
ですから、実はくじ引きで決めたような感じで、
主催者としては、ベストカップルなんてどうでもよかったのでは?
という気になってしまいます。
主催としてはゲームが面白くなればよいのでございますから、そのようなことはございましょう。
主催者の言葉ではございませぬが、
ギャンブルらしいことを匂わせる一文が出てきたりいたしますからな。
この一部始終を見て、楽しんでいる人がいれば論理は無用……なのかなぁ?
ギャンブルだったら、納得できる理由がさらに必要だと思うのでございますが……。
いずれにいたしましても、
そのためにこのような大掛かりな仕掛けをつくるのは、
よほどの金持ちかバカかヒマ人……。
いや、その全てをあわせもったような方なのでございましょう。
それに、ロッジに集められた10人は、全員が、
ある意味において殺人者であるが、警察に捕まってはいない、
という共通点を持つというのですが、
そのような10人を良く見つけてきたと、感心するばかりでございます。
だって、警察にもわからなかった事件なのでございますよ。
これらはまあ、流水大説ではよくある事といえばそうなのですが。
さらにわからないことがひとつございますが、
これはネタバレになるので消しておきましょう。
どういうことかと申しますと、
メンバーにひとり、主催者に内通していたものがいるのでございます。
ただ、それがゲームの中で
どういう意味を持つのかがよくわからないのですな。
それを措(お)くといたしましても、
その人物、主催者から身の安全を保証するという言質を得ていたようなのでございますが、これがどういうことかわからない……。
特にカップリングや脱出方法を教えてもらっていたようでもございませんし、とげに刺さっても死なない特殊能力を持っていたわけでもなさそうでございますし――。
う~む、謎でございます。
さらに、わからないことがもうひとつ。
第3部は、最後、全員の過去を並列的に並べて終わり、という形になっているのですな。
ホテルの中のシーンのまま、唐突に終わっているのでございます。
ゲームが終わったから、どこで幕引きしてもいいだろうということなのかもしれませんが、
もう少し何かほしいものでございます。
まっ、それだけのものを用意していなかったということかも知りませんが、
何か唐突でございました。
というわけで、
あらゆる意味において、スゴい。
いや、
あらゆる意味において、ではなく、
ある特定の意味においてスゴい。
まさに、清涼院流水にしか書くことのできない作品でございますな。
……
……
……
いや、ちょっと待て!
178にあとがきがある。これを読むと……。
「もし本書がご好評いただけたら、たまに〈ゲームノベル〉をつくってしまうかもしれませんが、この本だけで終わっても、なんの不満もありません。」
…………
いやぁ、
面白かった。
もう素晴らしい作品!
最高っっっ!!
これからもぜひ、
〈ゲームノベル〉を書いてほしいものでございます。
いや、
書き続けるしかございませんでしょう!
追記:
ところで、この作品、「CAST」という見開きページがあって、
登場人物がカラー写真で紹介されております。
まっコスプレでございますな。
イラストではなく、実際の人間でこれをやっているのが、
この作品の何と申しますか、エセっぽいところと合っていて、
なかなかいい味を出しているように思います。
(絵のほうが良かったとか、ないほうが……とか言う方もおられるでしょうが、
好悪を抜きにして考えるとあっていると思うのでございます)
特に、有名な料理人に似ていることが悩みの種の
市場二三郎に扮した喰始(たべはじめ)先生がいい味出しているのでございます。
(えっと、喰始(たべはじめ)先生はご存知ですよね?
ゲームブック『赤塚不二男劇場』(JICC)の著者として有名ですからな。
「劇団WAHAHA本舗主宰」という肩書きのほうは知らないといたしましても)
もし本書を見つけましたら、それだけでも手にとって見てみてくださいな。