九葉真(85/11,ナツメ社)
紹介文を追加しておきました。
作者の九葉真先生は、『ザース』(1984/08)、
『ライーザ』 (1985/10 ファミコンタイトル「銀河の三人」(1987))
などの
パーソナルコンピューター用の
アドヴェンチャー、ロールプレイングゲームを作った方だそうでございます。
『ザース』は高校生が作ったということございますから、
このゲームブックもそのぐらいの年で作ったということになりますな。
ナツメ社と申せば、コンピュータ関連や生活実用書が主軸で、
ゲームブックはおろか、フィクションを出しているイメージはございません。
ただ、FMやPCのゲームプログラミングの本を出しているので、
その関係で作者とつながりがあったのでしょう。
コンピュータのアドベンチャーゲームの作者らしく、
このゲームブック、だいたいにおいてその方法論で作ってあるのですな。
章立てで13stageまであり、
マップで移動したり、カレンダーで日を管理したりもありますが、
それも最初のほうだけで、あとのステージではあまり関係なかったような。
ルート構成も
ステージごとの選択肢はそれほど多くはないので、
必然的に必要なルートを通るものだったり、
そうでなければゲームオーバーになってしまったり、
とけっこう単純でございます。
特に問題なのは、2点。
主人公が完全には君ではない、ということ。
まあ、選択肢ではだいたいにおいて主人公の行動を選択できるのですが、
パラグラフ中で主人公がかってに行動してしまうのですな。
だから話が進むのでございますが。
さらに問題なのは、パラグラフの並び。
TRPGのパラグラフ分岐型のシナリオでも時おり見られますが、
パラグラフがシャッフルされていないのですな。
[4]C4 →[4]C5
→[4]C6
[4]C5 [GAME OVER]
[4]C6 →[4]C7
→[4]C8
てな感じでございまして、
たしかに、ここからアドベンチャーゲームのプログラミングをするのならこれでいいのでしょうが、
ゲームブックとしてみれば失格ですな。
ストーリーにつきましては、紹介文から類推ください、としか申せません。
いまパラパラとめくってみた感じでは、初見のときよりは、印象がよくなってはおりますが……、
まあ、あの当時のSFという感じでございますなぁ。
ラストもありがちと申せましょう。
そんなわけで、悪いですが、粗製乱造期の一作品、
というのがわたくしの評価でございます。
あっ、そうそう、もう一つ書き忘れておりました。
イラストのことでございます、
この作品、表紙は佐藤道明先生--魔法使いディノンのイラストをお描きになった方ですな--なのですな。
(ただ、作品と関係があまりなさそうなので、何かで使ったイラストの流用なのかも、という気も……)
しかし、本文の挿絵は別の方がお描きになっております。
それが、ちよっと残念な出来なのでございます。
もしそれが良かったら、もう少し評価は上がっていたかもしれません。