『地震空間からの脱出』

防災ゲームブック
『地震空間からの脱出』
勝谷大樹：著
（ポプラ社／2023/3）

パラグラフ数：123

　
災害対策研究所で開発された
ＶＲシミュレーターのテスト中に事故が発生！　
君は、仮想空間に閉じ込められてしまった──。

現実世界にもどるため、
防災知識を駆使して大地震を生きのびろ！

　

　災害サバイバルのゲームブックといたしましては、
西東社のさいとうたかを先生の一連のものなどがございますよね。

　

　それに対してこちらはバーチャル空間でのシミュレート。
その方がゲームブックにしやすいかもしれませんが、
何とも安易な気がいたします。

　
　システム的にもむずかしいところはございませんし、
高をくくって。特にメモなども取らずに始めてみました。

　

　導入は、お父さんの働く研究所のシミュレーターを体験する
というオーソドックスな形。

『危険生物から逃げろ！』も似たような感じでしたな。

　

　ＶＲ空間に入りますと、8つのエリアを選択させられます。
パラグラフ数ないのにどうやってこれだけのエリアでの冒険を表現するんだ!?　
と思うところでございますが、案の定、
エリアはいくつかのパラグラフにコンパクトにまとめられて進行いたします。

　
　いくつか必要なアイテムはございますものの、
導入なのでそれほど重点は置かれていないのでござますな。

　

　そこがさいとう先生などのサバイバルものとは違うところ。

　避難所である学校に着いてからが本番で、
そこでの生活やお手伝いが話のメインとあいなります。

　
　阪神淡路、東日本など、
いくつかの震災を経験してきた後の作品という感じがいたしますし、
子供の等身大という点では、この方が正しい気がいたします。

　

　とは申せ、ここまでは平凡。

　このまま終わっていたら、バーチャルにしたのは安易だなぁ、
ぐらいの感想で終わっていたのでございますが──。

　

（と、ここから重要なネタバレを含みます）　

　あるところで、どんな選択肢を選んでもループが発生してしまい、
そこから先に進めなくなるのでございますな。

　
　ゲームブックによくあるバグかと思って
出来の悪い作品に認定してしまいそうなところでございますが、
そうではなくて、これが実は、あらすじにも書いてございます、
ＶＲシミュレーターの事故によるものなのでございますな。

　
　そんなこと書いてございませんので、前述したとおりバグかと思ってしまいます。

　
　

　これがバグではなく、シミュレーターの異変だと知るためには、
ナビゲーションＡＩ・カナ（リア）17の
「コール機能」を使わなければならないのでございますな。
　
「ギリシア神話」シリーズにあるのと同じく、
このカナ17固有の数字をプラスしたパラグラフに
ジャンプして教えてもらうことで、始めて分かることなのでございます。

　
「こんなマスコットキャラのヒントなんて聞かなくてもクリアでる」
ってなことを心の奥深くで思っていたわたくしなどは、
見事にはまってしまいました。

　
　まぁ、ひととおりやってみて、あとはすなおに従ったのでございますが。

　　

　このジャンプのあと、
主人公はシステムの中心に迫るのでございますが、
そこで問題を出されるのでご注意を。

　
　それがですね、災害時に意味あることではございますが、
話をぼーっと読み進めていただけでは
通り過ぎてしまうようなところでございまして、
豆知識的なところはメモしておくとよろしいかと存じます。

　
　　

　わたくしはと申しますれば、常識的にこんなもんだろうと、
あとはパラグラフが123までしかないことから考えました。
と、申しましても、後ろのほうの数字ではないのでございますけれどね。

　　

　ちなみにp.159には、
答といってもいい重要なヒントが３つ書かれておりますので、
どうしても分からなかったら、それを見るのがよろしいかと。

　

　感謝の言葉はザッと見たかぎり６箇所にございますな。
すべてを回収できるかは、調べておりませんが。

　

　というわけで、バーチャルなんて安易な、意味があるのか？　
と高をくくっていたら意外とございまして、
その点でわたくしの評価は１つあがった次第でございます。