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2024/11/21 ソニーがKADOKAWAの買収を検討している。交渉は早ければ数週間で決着する可能性も、という話が2~3日前飛びこんでまいりましたな。これが本当でしたら、KADOKAWAのサイバー攻撃直後から話があったのでございましょう。これが成立すると紙媒体が減りそうですなぁ。清濁併せ呑むKADOKAWAの濁の部分が捨てられそうな気も。niconicoなんて過激な書き込みはアウトになって、映画やアーチストのプロモーションに使われそう。コンピュータゲーム界隈も合併・再編で面白くなくなった気がするけど、そうなるんだんだろ……のかなぁ。まぁ、技術のソニーでございますから、サイバー攻撃に対してはかなり信頼度の高いものとなりそうではございますが。
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「起承転結」について(1)

起承転結について(2)
 


 
(8)落とし話やアイデアストーリーなど。
 
 (6)は四コマやごく短い小話のことを考えてみました。
  それではもう少し長い話の場合はどうでございましょう。

 
  長い小話やショートショートあたりから、
  短・中編あたりまででございますな。
 
 そのような作品であっても、
ワンアイデアを軸とした話ならば、基本は変わらないと存じます。
 
 オチやサゲのある話は、四コマなどと同じ起承転結の論法に従います
 
 違うのは、長いということでございますな。
 
 そのため、より「仕掛ける」ことができるというものでございます。
 
 特にの部分は大事ですな。
 最小単位の漫才を考えたときは、
起と転のつなぎぐらいの扱いでございましたが、
実はもっと重要なのでございます。
 
 ともかく、起から順番に見てまいりましょう。
 アイデア中心の話では、もちろんそのアイデアが重要。
 そのアイデアを中心にすべてが回ってまいります。
 
 
(1) 起
 
 いわゆるセッティングの部分でございますな。
 アイデアが成立する状況、
そのアイデアをもっとも効果的に見せることができる設定、
なおかつ、この段階でネタがバレないようなことを考えて
初期条件を考えてまいります。
 
(2) 承
 
 起から転への受け渡しの場であると同時に、
伏線を張り、転での爆発力を最大にするための
仕掛けをする場でございます。
 色々な要素を足して目くらましをしたり、誤誘導をかけたり。
 腕の見せ所でございますな。
 
(3) 転
 
 そこまで来た道筋に立ちはだかる意外の壁でございますな。
 起と承からの流れに沿いつつ、
 切り札のごとき驚きを見せる見せ場でございます。
 
(4) 結
 
 すべてをまとめる部分でございます。
 オチやサゲなど、
 ショートショートなら一言で終わってもよろしゅうございますし、
 全体をまとめるエピローク的なものが添えられるかもしれません。
 
  
 ここで述べておりますのは、純粋にアイデアのみを軸とした話でございます。
 
 ですから、起承転結は
そのアイデアを最大限に活かすために構成されなくてはなりません。
 
  キャラクター要素も、この場合必要ございません。
 が、アイデアのみで通用するのは、
短編かせいぜいが中編までが限度でございましょう。
 それ以上はキャラクター要素が必要になってくると思いますし、
短編でもそこは重視する方が多いかと存じます。
 
 
 
 
 
 
 
 
 (9)石ノ森章太郎先生の説明。
 
 さて、ここで、石ノ森先生が『マンガ教室』などで書いている、
起承転結の説明について紹介しておきましょう。
 
 わたくしが起承転結という言葉を知ったのも、この書によってでございます。
 
『石森マンガ教室』(昭和44年/黒崎出版)
 
 

 四コマについてはこう。
 
四コマ
 

 
 それをつなげていけばストーリーマンガになるというのは、
 スーパーマーケット方式と同じでございますな。
 
スーパーマーケット方式
 
 さらにストーリーマンガについては、
このような図によって起承転結を説明しております。]
 
ストーリーマンガ
 

 見て分かりますとおり、
ことさらに特殊なことをお描きになっているのではございません。
 
 むしろ、これが起承転結に対する大方の認識であると存じます。
 
 ただ。
 だからこそ、気にしなければならない箇所がございます。
 
 物語の上昇曲線を解説した図で、
石ノ森先生は、はっきりと「」をクライマックスとしているのでございます。
 
 となると、(6)の最後で書いた疑問が浮かび上がってまいります。
 
 クライマックスは確かに要(かなめ)のポイントなので、
ピンポイントであっても、構成の一として入れるべきなのか。

 それとも、重要ではあるがピンポイントであるという理由によって、
承か結の一部、あるいはその中間と考え、三部構成と考えるべきか。
 
 はたまた、ある点からクライマックスまでを転と考え、均等な四部構成を考えるか。
 さて、いかがいたしましょう?
 
 
 
 
(9.5)とは申せ。
 
」をクライマックスとするのは納得のいく考えでございます。
 
 クライマックスは
物語の均衡状態に決着がついて結末になだれ込んだり、
意外な展開があったりするものでございますからな。
 
 それに「転」を四コマなどの「転」と同じように考えるより、汎用性がございます。
 
 四コマの転では意外なことが起こらなければなりませんが、
クライマックスとなりますと、
それが必要というわけではございませんからな。
 
 オチのある短編とか、推理小説以外でも
それなら説明ができるというものでございます。
 
 
 ただ、汎用性が高すぎで、それこそあたりまえという感もなきにしもあらず。
 
 クライマックスという言葉はそれこそ誰でも知っておりますし、
それが最後に来る方が面白いということも経験的に分かっております。
 
 でも、あたりまえだから無視していいというものでもございますまい。
 むしろあたりまえだからこそ、
それをもっとも効果的に盛り上げるのにはどうすれば良いのかを
考えることは、やはり重要なのだと存じます。
 
 
 
 
 
(10)映画
 
 石ノ森先生のお描きになった物語の上昇曲線は、
おそらく映画の構造論に由来するものにございます。
 
(2)で書いた『映画技法のリテラシー』にも
古典的なパラダイムとして紹介されております。
 

 映画の上昇曲線  
 
 目標に向かって一直線に進む主人公の行動を追うような映画に使われる手法で、
 
「それは特にアメリカではもっとも人気のあるストーリー構成の型であり、
 実際にいまだに揺るぎない地位を保っている。
 その型が必ずしも芸術的に高度に洗練されているわけではないが、
 実際の制作規範となっており、
 それゆえに「古典的」と呼ばれているのである。
 言い換えれば優れた映画も駄作も、
 この伝統的な語りの定石を使っているのである」(p.61)
 
そうでございます。
 
映画技法のリテラシー』では、
引き続いてこのパラダイムを伝統的な演劇技法に沿って説明した
シド・フィールドの説を紹介しております。
 
(この伝統的演劇技法については、
 ウィキペディアの3幕構成なども参考になさるとよろしいかと。
 ここには書いてないことがいろいろ書かれてございます)
 
 
第1幕:状況設定(4分の1)
第2幕:対決(2分の1)
第3幕:和解(4分の1)
 
下に書いた分数は、全体に占める割合ですな。
内容的には、
 
 
第1幕で主人公の目的は何か、
 目標達成の障害になるものは何かなど、物語の前提が設定され、
 
第2幕で物語が動き、
 
第3幕でクライマックスの対立の結果、何が起こったのかが示される。
 
という感じでございます。
 
 石ノ森先生の描いた物語曲線と比較すればお分かりいただけましょう。
 
 つまり、石ノ森先生は
 
第1幕=起、第2幕=承、第3幕=結と当てはめ、
クライマックスを特別な一点として「転」としたのでございます。
 
 これは、西洋の三幕構成を起承転結に置きかえる方法として、
非常に正しい方法だと存じます。
 
 
 
 
(11)ミッドポイント
 
「転」=クライマックスで決着はついたわけでございますが、
 話はまだ続きます。
 
 シド・フィールドの映画論で最も重要なのは、
ミッドポイントという考えにございます。
 
 彼の論が日本に紹介されたのは、
 1984年の別冊宝島「シナリオ入門においてですから、
 石ノ森先生が起承転結についてお書きになったときには
 無かった考えですな。
 
 
 このミッドポイント
 名前のとおり映画のまん中あたりにあるポイントでございます。
 ここで起こったことにより物語のベクトルが変わり、
 そこから一気にクライマックスへ向かって加速するような
 一点のことでございます。
  
 面白い映画にはそこに重要な転換点がある
 とシド・フィールド先生はおっしゃるのですな。
 

 ミッドポイント
 
 難しい例を先生は挙げておりますが、
 そういったものばかりではございません。
 
 例えば
 
 恋愛ものだったら、
彼女も自分のことを想っていることに気づくですとかね。
 
 ゾンビものなら、ある薬品が見つかって
それまで逃げているばかりだったのが攻撃に転じるですとか。
 
 信じていた人物の裏切りに気づくですとか。
 
 まぁ、色々あるじゃないですか。
 
 RPGでしたら、
シティアドベンチャーでダンジョンの情報が見つかって、
双方向移動から一方向移動になるとか。
 
 ギャグベースだったのが急にシリアス展開に、
 なんて言うのもございますな。
 
 目立つものそれほどでもないものございますが、
とにかくストーリーの方向が変わるポイントでございます。
 
 
(10)でも書きましたとおり、シド・フィールド先生の映画論は、
3幕構成を基本にしておりますが、
このミッドポイントも、かなり重要でございます。
 
 
 そこで、ミッドポイントで分けた四部をそれぞれに当てはめて起承転結とすると
収まりがいいのではないかな、という考えもできると思うのですよね。
 
 ミッドポイントでベクトルが変わって、
そこからクライマックスまで一気に駆け上がるところまで
を転とするのでございますな。
 
 物語のギアが上がり、トーンが変わりますから、
そこをひとかたまりと考えてよろしいのではないでしょうか
(個人的には展という字を当ててもいいかなとも思いますが)。
 
 3幕構成は1:2:1の割合ですから、
ミッドポイントで分ければ
ちょうど4分の1ずつの配分になるのもちようどいい。
 
 転換点からクライマックスまでが
四コマで説明される転と同じかと申しますと難しくはございますが、
転換点からクライマックスでございますから、合っている気もいたします。
 
 ミッドポイントは発明ではなくて発見でございます。
 シド・フィールド先生がたくさんの脚本を読んで、
面白い脚本にはこれがあると発見したことでございます。
 
 つまり、それ以前の方でも上手い人は、理論化していないとはいえ、
経験的にミッドポイントに
重要な転換点を置いていたということでございますな。
 
 あらためて石ノ森先生の図をごらんください。
 承のまん中あたりに、ひときわ盛り上がった部分がございますね。
 上には、ミディアムクライマックスとあり、
「中間のヤマバ。これは小刻みにたくさん入っているほうがよろしい」とあり、
ミッドポイントという意識はございませんものの、
やはり、その中でも重要な山場を
物語のまん中あたりに置いているということは
ミッドポイントという考えを、
無意識のうちに持っていたのだと思います。
 
 最近、先生の『幽霊少女』(昭和31年)と
『幽霊船』(昭和35年)を読んだのでございますが、
どちらもカッチリとまん中あたりに父親の打ち明け話が入っていて、
それで主人公と物語の関係が強くなるんですよね。
 
 ですから、石ノ森先生の作劇術の中にも、
ミッドポイントは無意識のうちに染みこんでいたのだと存じます。
 
 
 というわけで、先人にもこのミッドポイントに気づかれた方がいて、

3幕構成の1幕を起、
2幕のミッドポイントまでを承、
そこから3幕までを転、第3幕を結として、
起承転結としたのだろう

と結論づけようとしたのでございます。
 
 が。
 
 ここまで来て、問題に当たりました。
 
 3幕構成では、クライマックスは最終幕である第3幕、
つまり今配分した起承転結ではの部分に入ってしまうのですよね。
 
 それでいいのか?
 
 四コママンガのことを考えますと、三コマ目が緊張で、
四コマ目でその緊張が解除される感じがございますから、
それで合っている気もいたします。
 
 が、一方でクライマックスは転に入れたいという気もいたします。
 
 結局のところ、どちらかはわかりません。
 どちらでもいい気がいたします。
 そもそも、起承転結という言葉があいまいなのでございます。
 
 ただやはり、大方のイメージといたしましては、
クライマックスは転だと思うのですよね。
 
 と申しますか、結はエピローグ部分というのが一般的で、
だからその前のクライマックスはやはり転だと思うのでございます。
 
 ですから転は、そのクライマックスの一点、
もしくはクライマックスを終点として、
ミッドポイントか第3幕の終わりを起点にするぐらいではないかな、
とそのように思います。
 
 
 伝統的な演劇技法が
ミッドポイントやクライマックスで区切りを置かないのは、
幕によって分けているからと申せます。
 
 物語のまん中の重要なシーンや
クライマックスで決着がついた瞬間なんかで幕は下ろしませんものな
(テレビのCMなら逆にそこにこそ入れそうでございますが)
 
 ですから、幕による区切りとそれとは関係ない区切りで
分け方が違ってくることは仕方がない、と申しますか、当然だと存じます。
 
 というわけで、起承転結を3幕構造に当てはめてみますと、
 
 起は、第1幕
 承は、第2幕
 転は、クライマックス
 (だが、ミッドポイントか第2幕の終わりから
  クライマックスとまでを転と考えてもいいかもしれない)
 結は、第3幕のクライマックス以降。
 
 とちょっとあいまいな結論とあいなりました。
 
 
 あいまいな結論ではございますが、先ほども書きましたとおり、
起承転結自体があいまいなので仕方がございません。
 
 漢詩や四コマならば一行一コマに起承転結を当てはめるだけなので
問題は起きませんが、長いものになってくると無理があるのでございますな。
 
 まぁ、クライマックス=転でいいと思います。
 ですが、ミッドポイント重要性も知っておいて欲しいと存じます。
 
 
 
 とここで、新たなる考えがひらめきました。
 漢詩や四コマの起承転結は、ピンポイント。
 ならば、映画的な起承転結も重点的な一点を指すものと考えてもいいのでは、
という考えにございます。
 
 まぁでも、起と結は同じ。
ミッドポイントとして、クライマックスとするのでございます。
 
 そこら辺を押さえておけば、要点はつかめると思うのでございますよね。
 
 
 
 
(11)まとめ
 
 ここまで、起承転結について、あれこれと考えてまいりました。
 
 四コマや小話など、ごく短い話での起承転結。
 
 落とし話やアイデアストーリーなど、
 ショートショートから中編ぐらいの話の起承転結。
 
 構成に拠らないスーパーマーケット方式。
 
 クライマックスを転とした映画的な手法。
 
 映画の3幕構成をミッドポイントで分ける起承転結と、その変形。
 

 ミッドポイントを承、クライマックスを転と、ポイントで考える方法。
 
 
 構成のないスーパーマーケット方式以外は、起承転結と申せましょう。
 
 
 紹介してきたそれぞれには得意がございまして、
 
  
 アイデアストーリーの起承転結は
 ワンアイデアを核とした作品で、超短編から短・中編ぐらいまで
 
 
 スーパーマーケット方式は
スラップスティックのように勢いだけで行くのでしたら短めのもの、
エッセイマンガのように淡々とエピソードを連ねるものならば、
延々続けることができますが、作品としてのまとまりには欠けます
 
 
 映画的な手法は、主人公を核にしたもので、
 メリハリの利いた長編に向きます。
 
 
 面白い物語を作りあげるためという目的の認識は共通しておりますし、

物語には始めと終わりがあり、
 最後のほうに面白さを持っていく、
クライマックスを華々しくするということでも共通していると存じます。
 
 目的が一緒なので、組み合わせが可能です。
 と申しますか、組み合わせないと成立しない部分もございます。
 
 
 短編の起承転結はワンアイデアが軸になるものでございますし、
 
 スーパーマーケット方式は、スラップスティクにしろ日常系にしろ、
 核になるのはその場その場のエピソード。
 
 映画的手法は、主人公にございます。
 主人公の行動によって物語は進行し、その葛藤が物語の主題となります。
 クライマックスにしても、主人公がどう行動し、
 どう解決したかが問題となります。
  
 
 多くの方は主人公の行動や運命に注目いたしますし、
 それが話題を呼びます。
 加えてメリハリがあり、1つの作品としてまとまっていて、長編
 となると、やはり、映画的な構成をメインに考えるべきでございましょう。
 
 
 
     ☆   ☆   ☆
     
     
 とまぁ、起承転結について長々と書いてまいりました。
 
 (ホントはこんなに長く時間かけるはずじゃなかったのになぁ。
  一日で終わる予定だったのになぁ)
 
 このように起承転結と申しましても、いろいろとあるわけでございます。
 
 加えて申しますれば、起承転結
 これを知っていればいいものが書けるというものではございません
 
 出発点に立った程度のものでございます。
 
 
 サッカーのフォーメーションと同じですな。
 
 一流のチームと同じシステムを採用したとしても、
 チームが強くなるわけではございません。
 
 プレイヤーのフォーメーションに対する理解、
 他の保持ションとの連携、
 そして何よりもプレイヤー個人の技量と身体能力、
 スタミナなどが無ければ、優れたチームとはなれないのでございます。
 
 
 そういう意味で申しますれば、
 
起承転結と申しますか構成は、
お話作りにある程度慣れてから考えるべきことかもしれません。
 
まずは練習と実戦。がむしゃらに挑んでみるのもよろしいかと。
 
そうして、各選手のスタミナや身体能力、テクニックのレベルアップを図りつつ、
全体を整えていくのでございます。
 

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