2025/12/14 p.432「悪魔の涎」は、翻訳の仕事をしているアマチュアカメラマンが、ある広場で見かけた不自然な年齢差のある少年と女を見かけて、彼らについて詮索しながらなんとなく写真を撮影し、文句を言われ、帰宅してからその写真を引き伸ばすと、そこに自分が介入しなかった場合のあり得たシチュエーションが写し出されるという話だ。自分は小説のあらすじが一方通行であることにちょっと不満を抱いていて、選択式のゲームブックを書いたりしたことがあるのだが、「あり得たけれども実現しなかったこと」について表現するのに、こういう手もあったか! と感心した。このアイデアは、いろんな小説家や映像作家の手で見たいと思わせる。(『やりなおし世界文学』津村記久子:著(新潮文庫/令和7年11月)
『やりなおし世界文学』
津村記久子:著
(新潮文庫/令和7年11月)
津村記久子:著
(新潮文庫/令和7年11月)
ひまがあったときに読むべき本・
ゲームブック作家、津村記久子先生による
ブックガイドにございます。
ブックガイドにございます。
やりなおしという題名なので、
以前読んだ本をもう一度読むのかと思いましたら、
そうでもないご様子。
もちろん再読もございましたが。
「ギャッビーって誰?」「ねじの回転って何?」という体で、
読んでないけれど気になっていたものを読んでみるというのが、
この読書案内のきっかけになっているみたいでございますな。
読んでないけれど気になっていたものを読んでみるというのが、
この読書案内のきっかけになっているみたいでございますな。
索引を見ると
俎上(まないたのうえ)に
上げられている作品は
多岐にわたっております。
クリスティー『パーカーパイン登場』。
それはつまり、
津村先生が小説を書くときにどういうことに留意しているのか
ということ。
小説の書き方のご本でもあるのでございますよね。
俎上(まないたのうえ)に
上げられている作品は
多岐にわたっております。
小説をまったく読んだことがない
文学盲の方以外は、
この中の何かしらの作品を読んだ事が
あるのではございませんでしょうか。
文学盲の方以外は、
この中の何かしらの作品を読んだ事が
あるのではございませんでしょうか。
なくとも少なくともタイルくらいは
目にしたことがあるはずでございます。
目にしたことがあるはずでございます。
わたしもいくつかの作品は読んだことございます。
ですが全然覚えていないんですよねぇ。
ホフマン『黄金の壺』。
確か木の葉の間から蛇さんがこんにちはしたのでございますよねぇ。
確か木の葉の間から蛇さんがこんにちはしたのでございますよねぇ。
ですが覚えているのはそれだけ。
クリスティー『パーカーパイン登場』。
読んだことございます。
ですがそんな話でしたっけ?
こんな調子、体たらくでございます。
昔のことでもう忘れたいうのもございますし、
当時は読みが浅くてちゃんと理解していなかったという場合もございます。
図書館で借りたものなど返却期限が過ぎて最後まで読んでいなかったというのも。
当時は読みが浅くてちゃんと理解していなかったという場合もございます。
図書館で借りたものなど返却期限が過ぎて最後まで読んでいなかったというのも。
ですが、それだけではないのでございますよね。
津村記久子先生の目のつけ所がわたくしなぞとはまったく違うせいで、
あれ、そんな話だっけ? と思ったのもいくつかいくつもあるのでございます。
あれ、そんな話だっけ? と思ったのもいくつかいくつもあるのでございます。
表紙の絵を見ますと難しい……という表情でございますし、あとがきでは、
「本書は、文学の教養がまったくない人間が、
数年にわたって月に一回、
自分がどうも文学らしいと思っている本を読んだ感想の記録
だと考えていただけるとありがたいです。
文学に詳しい方からしたら、
何も知らない人間がバカみたいに好きに書いていて
本当に腹立たしいのではないかと心配しています」
数年にわたって月に一回、
自分がどうも文学らしいと思っている本を読んだ感想の記録
だと考えていただけるとありがたいです。
文学に詳しい方からしたら、
何も知らない人間がバカみたいに好きに書いていて
本当に腹立たしいのではないかと心配しています」
と書かれておりますがが、とんでもございません。
文学に詳しい方のご意見は分かりませんが、
でもそんなことはないだろうと、おずおずながらに思います。
でもそんなことはないだろうと、おずおずながらに思います。
「波」という小雑誌に連載されたそうですが、
92作品を取り上げているということはそれだけ連載が続いた、
つまりそれだけ人気があったということでございましょうし、
単行本化され、文庫本にもなったということは、
それだけ多くの人の支持を集めたというなのだから。
92作品を取り上げているということはそれだけ連載が続いた、
つまりそれだけ人気があったということでございましょうし、
単行本化され、文庫本にもなったということは、
それだけ多くの人の支持を集めたというなのだから。
やはり、
芥川賞をはじめ、さまざまな文学の賞をものにされてきただけのことがあります。
芥川賞をはじめ、さまざまな文学の賞をものにされてきただけのことがあります。
読み込みの精度・深度が違います。
そのため、わたくしが読んだことのある作品でも、そんな話だっけ?
ということをお書きになっておられるのでございます。
ということをお書きになっておられるのでございます。
そういう意味で、このご本は単なる文学作品の紹介に留まってはおりません。
津村記久子先生が小説をどう読むかの本でもございます。
それはつまり、
津村先生が小説を書くときにどういうことに留意しているのか
ということ。
小説の書き方のご本でもあるのでございますよね。
加えて、本文の展開のさせ方、文章表現も注目すべきところにこざいます。
小説家志望の方は、
盗むつもりで、メモを取りつつお読みになるのがよろしゅうございましょう。
盗むつもりで、メモを取りつつお読みになるのがよろしゅうございましょう。
冒頭の「ひまがあったときに読むべき本」というのは、そういう意味でございます。
本当にちゃんと読み込むのならば、
取り上げられている本を読み、本書を読み、
ふたたび元の作品を読む必要があります。
その時、メモは必須でしょう。
取り上げられている本を読み、本書を読み、
ふたたび元の作品を読む必要があります。
その時、メモは必須でしょう。
そんな贅沢な読み方は出来ないというわたくしを含めての人は、
流して一読で終わることでごさいましょうが、
それでも得られることはあると思います。
流して一読で終わることでごさいましょうが、
それでも得られることはあると思います。
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